ベンヤミンのアレゴリー的世界の見方
2024年が始まってまだ2週間も経っていないのに、こうも悲惨な事件や事故、自然災害が同時多発的に起こるのでしょうか。 令和6年辰年は良くない年なのか?そんなことをついつい考えてしまう人は多いだろうと思います。
飛行機関連事故
1月3日の羽田でのJALと海保航空機の衝突事故は、1日の能登半島地震があったすぐ後だっただけに衝撃的でした。しかしそれは飛行機事故の始まりに過ぎず、世界各地で相次いでおこっています。
◇エアーカナダ(ボーイング777)
カナダ・トロント発 ドバイ行
乗客の一人が非常ドアをあけて転落 出発遅延6時間
319人乗せて駐機中エア・カナダ機、非常扉から乗客転落…6時間遅延 /トロント
◇チャーター便(サッカー選手チーム)
アフリカ国内
客室の空調とエアコンがうまく作動せず、離陸後9分で空港へ引き返し緊急着陸
アフリカ選手権に出場するガンビア代表の航空機が酸素不足で緊急着陸 一酸化炭素中毒で多数が意識を失う
◇アラスカ航空(ボーイング737)
ポートランド発
離陸した直後に、機体の一部(非常用ドア)が吹き飛び、機体の側面に穴が開き、機内の気圧が低下。空港へ引き返して緊急着陸
離陸直後に機体の一部が落下……乗客が体験語る 米ボーイング機
陸地の車の事故に比べたら、空の飛行機事故は圧倒的に少なくて安全と言われています。当然ですが、以下のような原因の可能性は調査されていると思います。
事故原因の可能性
〇飛行制御ソフトウェアの欠陥
〇安全より利益優先
〇太陽フレアの影響
〇ハッキング等による通信制御不能の可能性
〇システムや伝達体系の「古いオーソドックスさ」と「最新のもの」の混在によるパイロット側の認識のし間違え
しかし、そういったデータ的な安心安全を現実的な問題だけでみるのではなく、見えない何か別様の力が働いていると考えてみる視座も大切です。
別様の影響の可能性
〇惑星直列のような天文規模で考える不都合な偶然による共時的意味
〇古代からの神話や予言から「素的」で「象徴・寓喩」的なものを見つけ出し、そのことが奇妙な事故の一致に関連しないかを検証
〇世界中で同時に生じている自然現象や災害、戦争や事件など、集合的な重なりのアレゴリーが見えるかどうかを検証
東関東大震災の津波が残した傷跡や、能登半島地震の被災地の現場、あるいは戦争による攻撃で消滅してしまった惨い場面などをみたとき、瓦礫と化してしまったもののなかにアレゴリーを見つける視座が、私たちには問われていると思うからです。
「アレゴリー」の視座
ユダヤ人の思想家ヴァルター・ベンヤミンは、「アレゴリー」について
「砕け散った瓦礫の中に一瞬の星座を見る」
という言い方をします。
ベンヤミンのいう「アレゴリー」は、世界の受難としてみます。
戦争のあと、荒廃し廃墟となったさまを目の当たりにして、破局に破局を積み重ねている歴史と、自然の衰滅過程と呼応させ「瓦礫のなかに毀れて散らばっているものは、きわめて意味深い断片、破片である」ととらえます。
救済への憧れが強いからゆえに永遠を求め、現世を
「終わりなき衰亡の相」
として見通します。 そのとき、人も事物も「永遠の衰滅」を刻印された相貌、「歴史の死相」という姿で現れる、というものです。
そのことは、社会学者宮台真司によると
「<世界>は確かにそうなっている」
と一瞬思われたが、言葉にしようとした途端――表象化を試みた瞬間――スルリと逃げ去って違うものになる」という意味を含み、カオスの向こう側に一瞬世界が見えて、見えたあと人は奇蹟を生きることができるといいます。
だからこそ「現象」として生じている偶然に度重なる飛行機事故や災害、戦争から、厚みと運命を背負った悲劇や絶望の断片から、アレゴリーが独特の表現として姿を現す瞬間を見るという姿勢は、
救済の錬金術
ともいえるものだろうと思います。
沈黙の中から響いてくる言葉や文字から
「意味されるもの」の伝達
を、ゲーテの「親和力」に倣って受けとっていくことが大切です。
参考までに:「正義を振りかざす悪」
100年前にフェイクニュースと闘った「ひとりメディア」、カール・クラウス
クラウスは当時のメディアの王者だった「新聞」を「黒魔術」であると断罪し、それが吐き出す嘘をとことんまで撃ち続けることを旨としていました。
そもそもメディアが言説を支配している空間においては、「事実」は多数派が信じていることがらでしかない。事実をもって事実に対抗するのは泥仕合でしかない。という思考。
「正義を振りかざす悪」を、クラウスは徹底的に糾弾しました。