【感想】映画『ルックバック』作者が見せたかった風景
『ルックバック』を見たので雑多な感想。ネタバレあります。
藤野の部屋の違和感と景色
小学生の学習机って上に棚が付いているタイプが多いですよね。典型的な小学生部屋を作るならそのタイプの机を使えばいいのに~と思っていたところ、移ろう四季の景色を見せるための窓と低い机なのか、と納得。この作品、窓が大きなキーになってますよね。
藤野と京本
藤野は京本の絵を見て悔しくて、うまくなりたくてひたすら絵を書きます。そしてある日ふと、京本という壁の大きさを切に感じて漫画を描くのをやめてしまう。そして小学校卒業の日、初めて会った京本に自分の漫画を褒められてうれしくなってまた漫画を描き始めます。最後に自分自身でも気づきますが、藤野のモチベーションはいつも、京本によって作られていました。この関係性が尊い…!
京本のモチベーションとあの事件
京本は引きこもっていて「暇だったから」という理由で絵を書き始めましたが、そこから藤野を通して外の世界に出て、そしてさらに絵がうまくなりたいというモチベーションを見つけていきます。その向上心が京本を美大へ連れて行き、あの事件が起きます。
誰もが京都アニメーションのあの事件を想起する、恐ろしい描写。犯人の男が校内に入ってきてから京本と会話をするまでの流れが妙にリアルで血の気が引きます。京本側の世界では空手をやっている藤野がヒーローのごとく助けに来てくれますが、実際はあのまま亡くなっていたんだと思うと、やりきれなくなります。
作者の見せたかった風景
藤野は、京本のために、京本が喜んでくれるから漫画を描いていたという事実に気がついてオフィスに戻ります。白紙の四コマ漫画を窓に貼り、静かに机に向かっていきます。
エンドロールの、大きな窓と小さな四コマ漫画の用紙、移ろう外の景色、ひたすら漫画と向き合う藤野。私はこの風景が作者の描きたかったものだと感じました。この先藤野は漫画を描き続けざるを得ない、藤野の大ファンだった京本の思いを背負って面白い漫画を描き続けるんだという、どっしりと重いような、氷のように軽くて冷たいような何かが藤野の背中に乗っているように見えました。