『おやすみプンプン』を読んだ。自分の好きの断片の大本のようだった
7月7日に無料公開された『おやすみプンプン』を一気読みしました。
作品自体はずっと前から知っていたけど、浅野いにおの作品に対して「自分は他とはちょっと違うと思っているサブカル好きの意識高い系の気持ち悪い美大生が読む漫画」という強い強い偏見を持っていたので、なかなか手を出せずにいました。
面白いらしいというオススメを聞くこともあれば、あれを面白いと言ってる人間はやばいという意見も聞いていたので、ずっと読みたいという気持ちがあったけれど、なんとなく読む機会がなかった。
結果的に今回「完全に前情報を忘れた状態」で読めたのが逆にすごく良かったです。
結論:もう自分は『おやすみプンプン』を好きな人間としか話したくない
くっっっっっっそほど良かった。
ありえん吐き気を催すほどに良かった。
こんなにも良い漫画をずっと避けていた事実に頭が痛くなるほど良かった。
っていうかなんでこの漫画を誰も強く推してくれなかったのか憤慨するほどに良かった。
今まで「こういう作品が好きなんだよな」とか「こういう物語が好みなんだよな」とか。そういうものの集合体のような作品が『おやすみプンプン』だった。
むしろ自分の好みの発祥がなぜ『おやすみプンプン』ではないのか。自分でも不思議になるくらいに、自分にハマりすぎた。今まで色々な作品を見てきて、それらの好きが断片なのだとしたら、『おやすみプンプン』がその大本だと言っても過言ではないくらいに。
鬱作品大好き
まず大前提としてバッドエンドが大好きで、胸糞悪くなる終わり方がすごく好きなんですよ。「終わり方は救いがなければないほど良い」と思ってるぐらいに。作品としては『沙耶の唄』が史上最も素晴らしいエンディングだと思ってるし、自分でも鬱ゲーマイスターを名乗れるぐらいには好きです。
ご都合主義で無理やりハッピーエンドにしたり、そもそも大団円で物語が終わってしまうと、その作品はスッと綺麗に飲み込めてしまいます。そうなると、後味が一切残らない。個人的な好みとして、その物語を飲み込んだときに激しい痛みを与えて欲しい。そうすればその物語が自分の中に深く刻まれるから。
自分の心に深く刻まれて欲しい。心に深い深い引っかき傷を付けて欲しい。
だからこそバッドエンドが好きなんですけど、『おやすみプンプン』は一番ちょうど良い傷を負わせてくれた。読んでいるときに自分が想像しうる一番最高の終わり方で物語が決着してくれて、感動すら覚えた。驚くことに。
どうしようもない陰鬱とした青春物語が好き
映画で言うところの『リリイ・シュシュのすべて』が一番好きです。
学生時代に持っていた漠然とした不安感を顕著に表されている作品が好きで、初期の『少年のアビス』に期待していたものもこれでした。
この時期特有のモヤモヤとした漠然に抱えている鬱陶しい謎の感情に閉じ込められる閉塞感。こういうもので満たした欲しい。『おやすみプンプン』の前半で描かれている学生時代編のどれもがそういうどうしようもない気持ちで満たされていて、本当に面白かった。1日で夢中で読めたのはこの部分が自分に突き刺さったからかもしれない。今考えると『少年のアビス』がやりたかったことって全部『おやすみプンプン』だったのか?とすら思えるほどに。
救いのない逃避行が一番好き
これはもう本当に「物語」における自分のフェチズムに値する部分と言っても差し支えないほどに逃避行モノが好きなんです。逃避行っぽい展開になると期待で小躍りするほどに。
多分自分の原点にある部分は『偶然にも最悪な少年』という映画。そしてそれが好きだと自覚したのは『ナルキッソス』というゲーム。
ただの逃避行ではなく
ただなんとなくこの場にいることに耐えられなくなってしまったから
どこか遠いところに逃げようとするけれど
その逃げた先に明確な救いがあるわけでもなく
ただ苦しみを引き伸ばしているだけなのに
それから目を背けるためだけに逃げ続ける『逃避行』が大好きなんですよ。
これがあるだけで十分です。そういう意味では『天気の子』にはそれがあってすごく心躍りました。
ただ、その逃避行の果て、逃げた先では救いのない悲劇的なゴールを迎えて欲しい。それが自分の物語におけるフェチズム。
そういう意味では、『おやすみプンプン』は本当に、本当に、最高だった。
「あー!逃避行モノで一番自分が求めていたものってこれだったんだ!」と思えるぐらいには『おやすみプンプン』における逃避行の位置づけが好みでした。「こういった理由で逃げて欲しい」「こういった逃避行をしてほしい」「こういった結末を辿って欲しい」と自分の心の奥底から自覚もせず眠っていた願望に突然刃を突きつけられたような感覚になった。「お前が好きなものって本当はこれなんだろう」っていきなり心の奥底をえぐられた。
だからこそ、この結末に深い感動を持ってしまったのかもしれない。
自分は他とはちょっと違うと思っているサブカル好きの意識高い系の気持ち悪い美大生になった
これを読んで最初に思ってしまった感想は「タコピーの原罪とかいうおままごとが足元にも及んでない」とか「少年のアビスってこういうことをやりたかったんだな」とかだった。そこでハッとしたのがこれこそ自分が最初に『おやすみプンプン』を好んでいる人たちに持っていた偏見である「自分は他とはちょっと違うと思っているサブカル好きの意識高い系の気持ち悪い美大生」でした。
結局のところ、自分こそがそっち側だったのかもしれない。だからこそ最初に書いた結論が「もう自分は『おやすみプンプン』を好きな人間としか話したくない」だったんです。この作品を否定してる側の人とはもう話が合わなそうと思ってしまった。
この作品を推してくれなかったことに憤ってます
そしてここまで自分の好きで埋め尽くされてる漫画を誰も自分に勧めてくれなかったことには本当に怒ってます。鬱作品が好きだとか逃避行が好きとかちょくちょく言ってるはずなのに、なんで誰も「『おやすみプンプン』とか好きそう」ってオススメしてくれなかったんですか?本当に怒ってます。
あー。この先もこういう「自分は他とはちょっと違うと思っているサブカル好きの意識高い系の気持ち悪い美大生」が好きそうな作品とか読んでいたい。
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