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うちの猫、本を出す。

この頃、うちの猫の調子がよくありません。あんなに喜んで求めていたごはんを食べては吐き、食べては吐きを繰り返し、ついには贅沢ごはんにすら見向きもしなくなってしまいました。耳も熱く、いつもしっとり濡れているはずの鼻も乾いています。

今朝は私たちを起こしに寝室に上がってくることもなく、こたつでじっと朝を迎えていました。ところが「ぼっちゃんおはよう」と頭を撫でてやると、それはそれは嬉しそうに喉を鳴らします。いつも私たちと一緒に寝ているので、一人きりの夜が寂しかったのでしょう。

昨日から吐きどおしなので、彼は丸一日何も食べていないことになります。さすがにおぼつかなくなってきた足取りでよたよたと後をついてくるものの、やはり朝ごはんは求めてきません。ごはん? と話しかけても、いまいち気が乗らない様子。いよいよ元気がなくなってきたので、夫が病院に連れて行ってくれることになりました。

おかげで彼の日記も、ここ数日は落ち込んでいます。そう、日記です。うちの猫は、毎日欠かさず日記を書いているのです。それがなんと、今日で100日目を迎えました。(今日までずっと内緒にしてました)

ペンネームはぺろきち。夫と一日交代で管理をしつつ、100日間彼の日々を見守ってきました。まさか記念すべき日にこんな事態になろうとは、数日前までは考えてもいなかったのですが。

猫の様子を綴った飼い主の日記はnoteにごまんと溢れていますが、猫自身が書いた日記はちっとも見当たりません。飼い主の影を一切感じさせないものは尚更。ただし彼は、ぼくがぜんぶじぶんでかくんだ、と決めていました。彼はえらい猫なんです。


この記事を書いている途中で、動物病院にいる夫から連絡が来ました。ぼくはもうだめぽ、という声が聞こえてきたような気がしました。彼に長くしんどい思いはさせるのは本意じゃない。ならば別れは想像以上に早いのかもしれない、と私たち夫婦は覚悟を決めつつあります。

2年前、彼はもっと緊急の疾患で病院通いになり、最終的には大きな手術をしました。弱り果てて部屋の隅で蹲っていた背中、あのとき感じた彼の命のかたちを、思い起こしています。あれからよくぞ奮い立ってくれたなと思います。

彼の日記を本にしよう。これは前々から夫婦で計画してきたことではあったのですが、今回のことがあってより一層、そうすべきだと思いました。(本当はこの記事だって、日記100日目記念にめでたく発表するつもりだったんです)

目標は来年2月の文学フリマ広島で、彼の日記本を出すこと。それまでに生きていてくれるでしょうか。あわよくば、復活を遂げて元気になっていてくれるでしょうか。ですがどんな未来を迎えようとも、本だけは作るつもりです。

彼の日記に彼の写真を添えて、彼の生きた証を残したい。飼い主のエゴだとわかってはいても。


これまで抱っこが嫌いだった彼に、私は抱っこの心地よさを覚えてもらいました。抱き上げるだけで嫌がって暴れていたのに、今では抱っこするだけで私の胸に手を当てて、ごろごろと喉を鳴らすまでに。夜は私や夫の胸の上で眠り、夏場も寄り添って寝てくれました。人が大好きな彼。この家が大好きな彼。

彼が筆を止めるまで、私たちは見守り続けようと思います。そして私たちと一緒に願い、応援していただけたら嬉しいです。


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皐月まう
ご自身のためにお金を使っていただきたいところですが、私なんかにコーヒー1杯分の心をいただけるのなら。あ、クリームソーダも可です。