見出し画像

メロンソーダでできている

メロンソーダが好きな大人って、子供っぽいだろうか。でも、やめられない。許してほしい。

人体の約7割は水分だと言うけれど、私の場合そのうち5割くらいはメロンソーダだと言っても過言ではない。メロンソーダが身体の中を巡りすぎて、私からはメロンソーダの香りがするなんて都市伝説まであるくらいだ(ない)。

この夏も、私の身体はメロンソーダになる。


休日、出かける前にコンビニに寄るのが私たち夫婦の習慣。その日の水分調達をするためだ。ドリンクコーナーの前でああでもないこうでもないと迷う、恒例行事。普段は家で作ったお茶や水を飲んで慎ましく過ごしているので、売り物のドリンクを選ぶ時間こそが休日の醍醐味だと私は思う。

かんかん照りの太陽が、世界をじりじり焦がしてゆく。こんな日には甘くて冷たくて、できれば炭酸のしゅわっとしたやつが飲みたくなる。夏になるときまってあの爽快感を味わいたくなるのは、なぜだろう。そして迷いに迷ったあげく、結局手に取るのはいつだってメロンソーダなのだ。
メーカーには特にこだわらず、そのときの品揃えによって三ツ矢サイダーのメロンソーダであったり、ファンタメロンであったりする。とにかくメロンソーダであればなんでもいい。


子供の頃、炭酸といえば大人の飲み物だった。それまで身近にあった炭酸は毎晩のように両親が飲むビールや発泡酒で、自分のような子供が飲むものだとは思わなかったのだ。

小学生の頃のある日、友達の家で炭酸ジュースを出してもらったことがあった。それが私の炭酸デビュー。口の中でじゅわわっと泡立ち喉の奥にきゅうっと染み込む感覚になかなか慣れなくて、でも一度口にしたら妙に癖になる。あれから無性に炭酸飲料が飲みたくなるようになった自分に、なんだか大人みたいだ、と感じた。

以来ファンタグレープや三ツ矢サイダーなど、私の中にブームを巻き起こした炭酸ジュースは数あれど、紆余曲折を経て大人になった今はすっかり、メロンソーダの虜だ。


しかしメロンソーダの持つ幼さというか、無邪気な感じは大人の女(?)には似合わないかもしれない。炭酸飲料が飲めるようになった頃は大人に近づけたと思ったのに、24歳の今、むしろ逆行しているような気すらする。
そりゃそうだ。大人が口にする炭酸はジュースじゃなくて、お酒なのだから。だけど私はお酒が飲めないし、アルコールの美味しさも、ビールの喉越しの良さもわからない。気がつけば今日も、甘ったるいメロンソーダを口にしている。

大抵のメロンソーダは、メロンの味がしない。どちらかといえばかき氷シロップの味(で、かき氷シロップはなんの味なの?)。
だけどこのまとわりつくような甘みこそが、メロンソーダのメロン味だと思う。私はこの味が好きだ。きんと冷えた缶やペットボトルから、炭酸の泡とともにぐいっと飲み干す感覚が好きだ。

かつて憧れたような、ビールの喉越しを楽しめる大人にはなれなかった。だけど初めて炭酸を飲んだ瞬間の大人になれたような感覚、あれだけは本物だったと思いたいのだ。そんじょそこらの大人よりはメロンソーダを愛している、それだけでもいいのかもしれない、大人って。



いいなと思ったら応援しよう!

皐月まう
ご自身のためにお金を使っていただきたいところですが、私なんかにコーヒー1杯分の心をいただけるのなら。あ、クリームソーダも可です。