「私」という男の生涯
石原慎太郎の生涯を自分と妻が亡くなった後に出版してくれと書いておいた自伝の文庫本で、気になったので買ってみました〜
「カサブランカ」の主題歌「アズ・タイム・ゴーズ・バイ」にもあったように、
Woman needs man
And man must have his mate
That no one can deny.
とすれば、私の放蕩も人生の公理に添ったものと言い逃れできるに違いない
詩人ゲオルグの『たとえ明日地球が滅びるとも今日君はリンゴの木を植える』という文句に、いたく感銘させられたのを覚えている
人の、特に男にとっての最高の美徳は「自己犠牲」に他ならないと私は思う。その最たるものは世界の歴史の中で日本人が初めて行った特攻隊による攻撃だろうが、歴史に多い仇討ちの挿話の中で忠臣蔵ほどさまざまな余話を伴ったドラマはありはしない
吉本隆明氏が「原発反対を唱えて人間はまた猿に戻ろうというのか」と正当皮肉な論を述べていたのが印象的だった
信長の愛吟と言えば、幸若舞の『敦盛』の「人間五十年、下天の内を比ぶれば」だが、初めて知った小唄は「死のうは一定、忍び草には何をしよぞ。一定、語りおこすよの」なるものだった
「語りおこすよの」なる文句の意味が分からずに古文に詳しい物知りに質したら、死者に対して後の者どもはおこがましいことを言い募るものだという意味だそうな
ヘーゲルが「歴史は他の何にもましての現実だ」と言ったように、現代という歴史を生み出した角さんという天才がこの国の実質支配者だったアメリカによって葬られ、政治家として否定されるのは歴史への改竄に他なるまい
社会的現実と個人的現実のクラッシュ。それこそが彼の想像力の源泉だった。共同体の制度、つまりルールや法律、道徳、倫理、慣習、常識にクラッシュする個体の苛立ちと嫌悪と恍惚。想像力を駆使して描く、それこそが石原慎太郎の文学だった
石原慎太郎の生い立ちや、都知事の時の様子、裕次郎との出来事など、とても鮮明に書かれている自伝で、死後に出してくれと言うだけある本だと思い、おすすめの1冊です
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