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ダブルハーベスト

友達の市川さんが読んでて、気になったので読んでみました!AIをどう活用していくのか、戦略デザインについて分かりやすく書かれた書籍です。

AIがコモディティ化し、ゲームの視点が「技術」ではなくなったいま、求められているのはAI活用の「戦略デザイン」
・AIを取り入れることで、御社の持続的な競争優位性を高められるか?
・AI実装によって何重にも利益を生み出すループを描けているか?
・御社のAI活用は勝ち続ける仕組みをデザインできているか?

「収穫」は、英語で「ハーベスト (Harvest)」という。1買収穫して終わりではなく、AIを組み込んだ戦略を正しくデザインし、自走する仕組み(ループ構造)をつくることで、二重、三重に実りを収穫し続けられること。勝ち続ける仕組みを実現する。

オンラインとオフラインの境界がなくなり、すべてがオンラインに飲み込まれる「アフターデジタル」的な世界へ移行はもともと時間の問題だったが、コロナ禍によって一気に実現し、オンラインファーストの価値観への大逆転が起きた。

戦略の本質は、「戦を略す」こと、戦わずして勝つのが究極の目的。1回勝ったら終わりでなく、ずっと勝ち続けるのが正しい戦略のあり方。

あらゆるビジネスは、少なくとも実務ベースと金融ベースの二重ループが回せるはずで、このダブルハーベストループを両方回し切れば、ライバルは追いつけなくなる。

3割自動化しただけでも、コストダウンにつながる。認識率が3割だったとしても、人件費が3割カットできるなら、ビジネスとしては十分選択肢に入る。人間がアウトプットを補正するから品質レベルは落ちない。

ミスが致命的であっても、AIの精度が人間を凌駕している場合、いつかはAIが単独でその仕事をこなすようになる。

ヒューマン・イン・ザ・ループの3つの型
1.AIが間違っていないか人間がチェックする「人力検査型」手書きOCRなど。
2.裏側に人間がいて、AIがうまく対応できないときだけ人間が出てきて対処する「人間バックアップ型」チャットボットなど
3.ある現象をモニタリングしているAIが判断に迷ったときに人間に知らせる「監査型」クレジットカードの不正利用監視など

「精度が低いAIなんて意味がある?」と聞かれたとき、明確にあると答えられるようになるには、ヒューマン・イン・ザ・ループの概念を押さえておく必要がある。100%間違えないAIなど存在しない。

ユーザーに参加してもらってAIの精度を上げていく「ユーザー・イン・ザ・ループ」というアプローチもある。Google翻訳の下についてるコピーボタンで、結果が利用されたか分かる。

ボタン1発でコピーできた方が便利だというUXの改善に過ぎない。しかし、その延長線上で、AIのトレーニングデータが自然と溜まっていく仕掛けになっているところがすごい。データを育てて収穫する「ハーベストループ」の考え方。

スタート時は何よりもスピードが大事、ありもののAPIやライブラリを組み合わせていち早くAIモデルを実現する。いったんモデルができ、ループが回ってデータが収穫できるようになったら、できるだけ速やかに自前のシステムに移行して、E2E学習でAIを賢く育てていく。

AIが実現する5つの最終価値
1.売上増大
Amazonなどのレコメンドなど
2.コスト削減
1000人の作業を3割自動化して300人分削減
3.リスク/損失予測
事前察知して被害を防ぐ。モーター音の監視など
4.UX(ユーザー体験)向上
サービスからユーザー離脱防止、チャットボットで申請をフォローなど
5.R&D(研究開発)加速
論文をOCRでデーター化して検索できるようになど

ゴング(Gong.io)は、セールストークの効率を上げるサービスを展開。セールストークの内容を聞いて、この部分に問題があるから話し方を変える必要があるなどフィードバックすることができる。

チャットボット・オンボーディング
チャットボットを使ってユーザーの使い勝手を向上させたり、口座開設に必須のKYCの手続きを自動化したりして、顧客の定着を図る。顧客が離脱しないようにするプロセスを「オンボーディング」という。

コーチ(coach)は、リアル店舗を訪れた顧客がある商品を購入するか迷っていた情報をスタッフが記録しておけば、同じ人が同社のオンラインストアを訪れたときに、その商品をレコメンドされるようになっている。

AIはさまざまな組合せを試したいときに有効。精度を上げるために従来なら職人芸的なファインチューニングが必要だった領域で、AIが自ら学ぶ深層強化学習が台頭してきたことで、AIの力だけでそこそこいい線までいけるようになった。

最終価値 = 機能 x データ
最終価値: AIで何を実現したい?
機能: AIのどの機能を利用する?
データ: どんなデータが必要?

オラクルが提供する人事マネジメントシステムは、もうすぐ辞めそうな社員を抽出して、代わりの人材を社内人事で昇格させたり、外部から連れてきたりするようダッシュボード画面上に通知する。

システムの外側で人間が作業している部分、運用上ボトルネックになっている部分に着目して、AIを活用すれば、効果はずっと大きくなる。

BERTは、機械翻訳の精度が一気に向上したことで世間の注目を集めた。BERTを使うと、専門用語を、抜き出すために、以前なら1000単位で必要だった文書データ数が、いまは2〜3個でなんとかなるレベルになってきた。

顧客に対してどのような価値を提供するかという視点抜きで戦略は語れない。他社には唯一無二の価値を提供するという意味で、「ユニークバリュープロポジション (UVP Unique Value Proposition)」と呼ぶ。


AI時代に使い勝手がいいのはどんどん流れてくるフロー型のデータ。フロー型のデータを扱うには、データがリアルタイムで入ってくる体制をいかに築くかが勝負を決める。

AIに向いているのは、「構造化データ」ではなく、「非構造化データ

データをためるときのポイントは、「人間に関わることはすべてデータになる」人間に関わることは3つに分けられる。「ユーザーとの接点」「仕事内容」「マーケット動向

個人データは「誰のデータか」というアイデンティティ(ID)と紐付いているので、データをためればためるほど、ユーザーのカバレッジ(カバーしている範囲)が広がり、ネットワーク効果が生まれやすい。

成長するAIを駆動力とするハーベストループは、あえて人間が止めない限り、最適化への道をひた走る。最初のループが原動力となって、もう1つの別のループが回り出す。これが「ダブルハーベストループ」の正体。

マレーシアやシンガポールで人気のペイメントアプリ「フェイブ(Fave)」ループをすべて自前で用意するのではなく、他業種とアライアンスを結ぶことによって、ダブルハーベストループを回している。

Kaggle」など、インターネット上には、すでに学習用にメタデータが付与された各種のトレーニングデータが公開されていることが多い。

AIビジネスをする人には必須のレファレンスとなっている「AIプロダクト品質保証ガイドライン」を参考にすると良い。どうやってAIの品質を定義すればいいか、ケースごとに細かく規定されている。

AIは一般のソフトウェアとの違いは、不確実性にある。プロジェクトの最初にあまりかっちり仕様を決めすぎると、そこで上限が固定されてしまう恐れがある。

エクスペクテーション・サンドイッチ
期待値(エクスペクテーション)をサンドイッチのように挟み撃ちしてマネジメントする。
発注段階では、仕様を確定するのではなく、期待値の幅をフェーズごとに狭めていくアプローチをプランニングしておくと、たいていうまくいく。

5Gの浸透は、企業のAI活用に根本から変更を迫る可能性が高い。5Gによってローレイテンシー(低遅延)通信が可能になるから。

戦略の観点だけではビジネスは成り立たない。事業で最も大事なのは、「どうなるのか ( How = 戦略 )」ではなく、「なぜなるのか ( Why = 目的 )

ダブルハーベストの具体的なAI戦略デザインが、分かりやすく事例として説明されているので、とても参考になります。ダブルハーベストをどう作ってAI活用をするのかが、とても重要だと分かります。概念もすぐに理解できるので、AIビジネスをするには、おすすめの1冊です。



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