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「生理の貧困」は問題になっても「生理休暇」が注目されないのはなぜだろうか

厚生労働省が行った調査によれば、女性のうち12人にひとりが、生理用品の入手が困難であったと回答しているという。
「生理の貧困」が社会問題のひとつとして取り上げられ、生理用ナプキンを無償で配布するという支援に乗り出す自治体や企業が出てきている。

それはそれでとてもいいことだが、わたしには、ひとつ気になることがある。それは、では、そういった支援に乗り出す企業や自治体で働く女性たちは、生理休暇をちゃんと取得しているのだろうか?ということだ。

以前、わたしは、サラリーマンをしていたが、そのとき、出退勤を管理する部下が20人余りいた。そのうち、半数は女性だった。
有給休暇の申請を、本人がして、わたしはそれを、承認する立場だった。

本人が、急に体調が悪くなったり、用事が出来たりしたときは、当日、電話での申請もOKだった。
その職場で、わたしが普及しようとしたが、わたしの退職後には消えてしまったことが2つある。

ひとつは、生理休暇の取得、もう一つは、男性の育児時間の取得である。
若い社員が多かったので、どちらも喜ばれたはずだ・・と思う。が、残念なことにどちらも定着しなかった。

生理休暇は、生理中に体調が悪くなるのは、誰にでもあることだから、1日じゃなくても半日でも申請するようにと、みんなに促した。
就業規則では、2日間有給で取れることになっているが、それまでは誰も申請しなかったが、私の部署では、みな半日(長くて1日)は生理休暇を取るようになった。
しかし、生理休暇というのは、言い出しにくい、特に男性に対しては。そこで、当日、電話しても、わたしが出るとは限らないので、そんな時は、他の女性社員に言づけて、お互いに助け合いましょうよということになった。

また、就業規則の中に、こどもが3歳になるまで、出勤時間を15分間遅らせても、休暇扱いにならず、勤務評定にもボーナス査定にも影響はなく、その期間も残業はOKという、本格的に育児休業や時短が定められれる前に作ったと思われる育児時間制度があった。
女性社員は、本格的な育休取得に続けて、時短に入る人が多かったので、この制度があることも、忘れられていた。元は女性向けに想定して作られた制度なので、配偶者が働いているかどうかは問わない(働いていて当然、無職の配偶者は想定していなかったのだろう)制度だった。そこで、ちょうど子供が生まれたばかりの男性社員2人に勧めてたところ、2人とも取得した。
2人とも、妻は育休中と専業主婦だが、ワンオペ育児で大変だったし、子どもが生まれて、出費も増え、残業代も稼ぎたかったので、とても助かると喜んでいた。そんな彼らに「パパ、頑張ってね」と激励したものだった。

どちらの休暇も、たいした時間でもなく企業の生産性にも影響がない、働く方も有給なのでありがたいのに、普及しなかったのは、なぜなのだろうか。どちらも短時間だから、ムリをすれば、取らなくとも頑張れてしまうだろう。どうしてもだめな時は年次有給休暇を使えばいいわけだが、でも、同じ職場で働く者同士で、そんな配慮が嬉しいものじゃないのかな。

なのに、なぜ、わたしの退職後には、若い社員たちは取得するのをやめてしまったのだろうか。こんな休暇なんて取らなくてもいいと思ってたとは、とても考え難い。その後、その部署では、毎年のように、メンタルを病んで長期病気休暇を取得する若い社員がいるという話を聞くたび、胸が痛くなる。

世間的にはブラック企業とは呼ばれない職場だったけど、闇は深かったと思うこの頃である。

「生理の貧困」の支援に乗り出す、意識高いと思われる企業や自治体のトップにその辺のところを、突っ込んで聞いてくれるジャーナリストはいないのだろうか?厚生労働省は、そこを調査をしようとは思わないのだろうか?
「女」を「婦人」と言い換え、「婦人」を「女性」と言い換えても、差別がなくならないのと同じように、「男女平等」を「ジェンダー平等」と置き換えたところで、そう簡単にこの闇はなくならないということなのだろうか。


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松幸 けい
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