祝❕文化勲章 橋田壽賀子先生:脇役だった歴史上の女性を主役に持ってきた「おんな太閤記」③
「おんな太閤記」は、大河ドラマ初の女性主役、放映当時の視聴率は、長谷川一夫の「赤穂浪士」につぐ歴代2位であった。(ちなみに「赤穂浪士」といえば超人気演目で、長谷川一夫については、私から見たらもうすでに歴史上の人物でだけれども。)
「太閤記」は人気演目だが、秀吉の正妻ねねは、あくまで脇役にすぎなかった。だいたい寧々なのか「おね」なのかも定かでないくらい、出身身分も足軽の娘、天下人秀吉との間に子もいない、という女性なのである。
中国の楊貴妃しかり、韓国のチャンヒビンしかり、歴史上の女性を主役に据えるドラマといったら、皇帝や王から寵愛を受け、栄華を誇るが悲しい最期を迎えるといったストーリーなのである。まあ、事実がそうだからしかたがないのだけれども。
だから、女性活躍を打ち出すためのは、フュージョン時代劇やラブ史劇、あるいは「チャングム」のように新しいヒロインを作り出すしかなかった。
しかし、そこが、橋田ドラマの凄いところなのだが、「おんな太閤記」は誰もが知っている人気演目の脇役だった女性を主役に据えることで、女性目線で歴史を語らせ、それを新たな人気歴史演目としたことなのである。
現在では、「太閤記」より、「おんな太閤記」の方が、はるかに人気の演目であることに間違いないだろう。これからもトップ女優への登竜門としてドラマ化や舞台化されることが予想される。
なぜなら、「おんな太閤記」には、現在でも女性が最も好きなテーゼのひとつである「苦労はしてもけして負け犬にはならない」というのが根底に流れているからだ。
橋田氏はかねがね「不倫と殺人は書かない」と言っている。
私から見ると、もうひとつ加えて「けして負け犬は書かない」があげられると思う。脇役だった女性を主役においても、けして悲劇のヒロインにはしないのだ。
「おんな太閤記」の主演を務めるのは佐久間良子。当時42歳でこの美しさである。わたしは見ていて、「あれ、今、ソン・イェジンのような表情をした」とか「ソン・ヘギョよりピンクが似合うかも」とか呟いてしまった。はるか40年も前なのに、かの韓流女優より年上なのに、そこも凄いドラマである。この方、どっから見ても主演女優だよなあ。