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映画「ザ・ネゴシエーション」を久しぶりに見返した感想

昨年、「愛の不時着」ブームで、主演の2人の初共演映画とあって、映画館で再上映されたので、東京ミッドナイトタウン日比谷に観に行った。コロナシフトであったが、映画館はけっこう人でいっぱいで、不時着人気のほどがうかがえた。
今年のゴールデンウイークも緊急事態宣言中なので、再度視聴したら、新たな発見もあった。それも含めて、見どころを紹介したい。


1 スピード感のあるサスペンス・アクション映画

とにかく、「愛の不時着」のカップルと同じ俳優が出演しているとはとても思えない、全く別人が演じているような、ソン・イェジンヒョンビンポテンシャルの高さに驚くこと間違いなしだが、ストーリー展開も、謎解きもあり、最後まで緊張感も続いていて、文句なく楽しめる映画だ。

<ストーリー>ソウル市警危機交渉班の敏腕交渉人ハ・チェユン警部補(ソン・イェジン)。ある事件で犯人と人質両方を死なせてしまった彼女は、自責の念から辞表を提出した。だが10日後、彼女は緊急事態で呼び戻される。タイでミン・テグ(ヒョンビン)なる男が韓国人を拉致、交渉人に彼女を指名したのだ。事件の概要を聞く間もなくビデオ通話の画面越しに犯人と相対するハ警部補。なんとか交渉の糸口をつかもうとする彼女だが、人質の中には彼女の上司チョン班長の姿があった。

2 いつもながらのソン・イェジンの演技の「本気度」

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女優の演技力をはかるうえでの、最高難易度は、狂気をいかに演じられるか、あるいは、この世のものではない幽霊をいかに演じられるかだというのを何かで読んだことがある気がする。これは、いかに、本気度の高い芝居ができるかということなのではないだろうか。
ソン・イェジンは、「ラストプリンセス」で狂っていく皇女を、「Be with  You」で、彷徨う霊を演じてみせた。その実力をいかんなく発揮して、この映画では、警官という職業人の顔と、これ以上、人の死を見たくはないという感情を持つ人間としての顔を持ったハ警部補を、魅力的に演じている。
そこには、どんな役でも自分のものにしてしまうといわれるソン・イェジンがいた。

3「映画俳優」としてのヒョンビンの顔

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女優が狂気なら、俳優の最高難易度は、「悪」だそうである。それも、ありきたりの悪役でない「巨悪」だそうだ。この映画で、ヒョンビンは初の悪役に挑んでいるが、これがまた、カッコよくきまっている。
以前、岩波ホールの高野悦子支配人が言っていたことを思い出した。彼女は、ヨン様の大ファンだったが、テレビ画面で見て2枚目だと思うのと、大スクリーンにアップが映し出されてもカッコいいというのは、次元が違うのだそうだ。だから、「四月の雪」をスクリーンで見たとき、合格だと思って安心したそうだが・・・。
その意味では、ヒョンビンは、すでに映画俳優の顔になっていて、それも作品を重ねるごとに、大物感が出てきたなと思った。

4 でも、美男美女主演で観たい映画はこれじゃない?

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しかし、この映画、公開当時は、韓国では観客動員数がそれほど伸びず、どの映画祭でも、作品賞も演技賞もノミネートもされなかった。
ヒョンビンも、ソン・イェジンも、前作のそれぞれの主演映画よりさらに、演技力が増していて、サスペンス・アクション映画なのだが、何か、2人の醸し出す一種のエロスというかエモーショナルな感じが良かったのに。

どうしてだろう? それがわたしには、ずっと謎だった。
そして、今回久しぶりに見返してみて、なんとなくそれが腑に落ちた。

やっぱり、美男美女の二人が主演ならば、大スクリーンで観客が見たいのは、この題材じゃないんだろう。
なんだかんだ言っても、これはいわゆるB級映画で、それはそれで楽しめるのだが、犯人との交渉劇を期待して見ると、内容がちょっと違う気がする。

そのあたりが不完全燃焼だったから、二人とも、映画の公開時のプロモーションで、また、別の作品で再会したいと言ったのではないだろうか。
まあ、それ以外の理由もあっただろうけど。

ヒットに届かなかったのは、主演の2人が美男美女すぎるから。

逆に言えば、それ以外は欠点が見つからない映画なのだが・・・。

実際問題として、この映画の製作費をかけて本物のように撮られたタイでの銃撃戦よりも、現実にすっぱ抜かれたスキャンダルの「ロス疑惑(=ロサンゼルスでヒョンビンとソン・イェジンは密会していたのか?それとも偶然に会っただけのか?)」の方が、観客、つまり見る側の一般大衆は、想像だけで、断然盛りあがったわけだし。

しかし、それらの伏線が回収されて、「愛の不時着」に繋がったわけなので、なんだかんだ言って、「ザ・ネゴシエーション」は、多くの人の記憶に残る韓国映画になるんじゃないだろうか。



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松幸 けい
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