「ザ・グローリー~輝かしき復讐~」、「いじめ」がおきる構図と再生としての「復讐」を描く
1.脚本・演出・役者の三拍子そろった傑作韓国ドラマ
NETFLIXに年末にアップされた前編もイッキ見、そして、3月にアップされた後編もイッキ見してしまった。
面白かった。見終わってまた、最初から見たくなるようなドラマだった。
脚本・演出・役者の演技力と、どれもみな良かったが、成功の一番の要因を挙げるとすれば、やはり、脚本ではないだろうか。
さすがに、韓国屈指の人気脚本家キム・ウンスク。
韓国ドラマのお家芸と言っていい復讐ものジャンルにおいて、今までの復讐ドラマとは、ひと味違ったアプローチをして、得意分野は、恋愛ドラマだけではないということを強烈に印象付けた。
では、どこが、今までの復讐ものとは違うのだろうか。
2.このドラマのテーマは、「いじめ」と「復讐」
加害者と被害者、どちらの連帯が強いのか。
ドラマの予告編でも何度もでてくるこのセリフ。
この被害者の連帯感が今までの「復讐韓国ドラマ」との大きな違いになっている。
主人公は、高校時代に壮絶ないじめを受け、高校も退学に追込まれた主人公ドンウン。その後、18年もの時をへて完璧な復讐計画をたて実行していくが、手始めに、いじめの首謀者だったヨンジンの娘の小学校の担任に赴任するのだった。ドンウンの協力者たちもそれぞれ被害者としての苦しみを背負っていた。
ドラマの前半は、弱者だった被害者が、復讐に命を懸けるにしたがって、自信に満ち溢れるようになっていき、加害者を追い詰めていく様子が描かれていく。ドラマ後半は、加害者たちが自らの業によって破滅にむかっていく様が畳みかけるように展開する。
全編とおして、カタルシスが満足しながらもスタイリッシュな悪役たちから目が離せないサスペンスドラマのようだった。
最後まで反省しない加害者に復讐することで、ようやく失われた自我の原点にたてる被害者。人生を始めることのできる被害者。
このドラマに描かれているのは、単なる勧善懲悪ではなくて、自分の意思で人生を取り戻そうとする、たとえどんな代償を払っても、復讐をやり遂げる。そうしなければ、存在が危うくなってしまう人間の姿であった。
3.今の時代の気分は復讐のカタルシスなのか?
復讐の後に残るものは、栄光ではない。
ただ、何も残らなくても、そうするしかない。
過去のいじめを乗り越えるためにすすんだ復讐の道は、どんなにむなしくてもそうするしかない。そこには、天も神も道徳も何もないけれども、「復讐する」という自分の意思決定だけがある。
その自己決定を、他人がとやかく言うことはできない。
しかし、他人でも、その被害者がおかれた状況には共感できる。
それが、今の時代の気分を表しているのではないだろうか。