派遣社員は幸せになれるのか?
厚生労働省は派遣社員に勤務年数や能力に応じた賃金を支払うよう人材派遣会社に義務づける。同じ業務で3年の経験を積んで業務内容が変われば初年度より賃金を3割上げるなど、具体的な水準を示す指針をまとめた。2020年4月に「同一労働同一賃金」の制度が始まるのに合わせ、正社員との賃金差の縮小を促す。
えっ?海外に住んでいると、日本の労働環境に関しては驚くことが多すぎます。これ、今現在は業務3年経験者と初心者が同賃金で働いている、ということですよね?
ありえないっつーの!(マンガ「花より男子」の主人公の口癖です。知らないお父さんはぜひ娘さん息子さんにご確認を。親子関係が良ければきっと声のトーンを真似してくれるでしょう。そうじゃなければ無視されて終わるでしょう)。
想像にすぎませんが、もし自分が3年目でありながら、手取り足取り業務を教えなければいけない1年目と同賃金、しかもやっていることは同じ正社員に比べその額は2割も少ないとしたら、バカらしくてとてもやってられません(とは言うものの、現実生きていくために派遣社員がベストな選択であるならば甘んじて働き続けるしかないとも思いますが)。
厚労省は社員の経験や能力が働き続ける年数に応じて向上するとみなし、勤続年数に応じた適正な賃金水準について指針をまとめた。1年勤めて担当業務も経験に応じて上がれば、当初に比べて16.0%増を目安とする。3年目は31.9%増、5年目に38.8%増を基準とする。
因みに上のサイトによると、平均昇給率は以下のようになっています。
中小企業 大企業
2017年 1.99% 2.3%
2018年 1.99% 2.54%
2019年 1.9% 2.2%
仮に、この平均昇給率と記事に示されている基準数字を使って大手勤めの正社員とそれより2割少ない派遣社員の賃金を比べてみるとこんな感じになります。
正社員 派遣社員
初年度 200,000 160,000
2年目 204,600(2.3%増) 185,600(16%増)
3年目 209,797 211,040
(前年度比2.54%増) (初年度比31.9%増)
どう思われますか?これだけではこの後(4年目以降)の伸び率もわからないし、これらの数字はあくまでも「平均」であり「目安」であるというあやふや感満載のものではありますが、それにしても微妙な数字です。
私がもし派遣をやっていたら手放しでは喜べません。なぜなら、この賃金差縮小化への動きとカップリングされている「同一労働同一賃金」制度が、これまたよくわからないものだからです。
「同一労働同一賃金」 制度は「同じ企業で同じ業務に就いている人は、正規や非正規といった雇用形態に関係なく、同じ水準の賃金を支払うという原則」をうたいながら、ガイドラインは「基本給」の相違を認めています。
基本給の場合、勤続年数や能力、成果が同じであれば、原則として同額を支給する必要があるが、能力や成果などに差があれば、支給額に差が出ても問題がない。
「原則」とか「基準」とか、「目安」とか、「違反しても罰則なし」とか、やる気があるんだか無いんだか、どこまで本気なのかわからない印象です。
(上記事より抜粋)
このぶんでは「記載なし」の家族手当、住宅手当といった福利厚生は期待できないでしょう。正社員と派遣社員の賃金が仮に同水準になったとしても、福利厚生などで大きな差をつけられているうちは、派遣社員の不満はなくならないのではと思います。
厚生労働省が「不合理な待遇差」改善に着手したのは喜ばしいことです。しかしながら、この中途半端な内容には「人<会社」 「実力<地位」という日本の古い感覚が滲み出ているように見えます。「人ありきの会社」 「実力ありきの地位」は、日本においては理想が過ぎるのでしょうか。