【読書感想】脳が脱皮する美術館
私は昨年度まで、公立小学校の教師として学級担任をしていた。経験を重ね、集団として課題が多い学年を任されることが続いた頃から、図画工作科の学習を中心に学級経営をするようになった。その内容は、子ども達の制作した絵画や工作をお互いに見合う鑑賞を中心に計画したもの。このたった1時間が制作意欲や、子ども達同士の人間関係を繋いでいくのに大きな効果をもたらした。対話を意識的に取り入れ、友達のことを知り、考え方や感じ方の違いに気づいていけるよう仕掛けていた。子ども達とも、感想をシェアしながら、クラスには多種多様な人がいることが面白いと感じられるようになれば、自然と居心地のいい場所になるよね?という思いを積み上げながら、実践に取り組んできた。私にとって、この本との出逢いは、体験と重なり共感できるものであり、実践の裏付けとなる考えとして今後支えにしたい興味深い内容の本だった。
この本は、窮屈な殻を脱ぎ捨て、価値観を変え、一回り大きく成長して欲しいとの思いや願いから『脳が脱皮する美術館』と名付けれているそうだ。読み進めていくうちに、自然とアート鑑賞を楽しめる内容になっている。また、障がい者アートへの理解も深まり、対話型アートを多方面で活かしていく面白い視点を得ることができた。下に、3つの視点で感想をまとめたので、ぜひ参考にしていただきたい。
①対話型アート鑑賞の紙上体験ができる。
この本の斬新なポイントは、紙上で対話型アート鑑賞を追体験できることにある。実際、リアル会場で開催された鑑賞会を忠実に再現した原稿があり、それを読み進める形で体験することになる。個人的には、著者の福島さんの心の呟きが、分かりやすい解説となっていて臨場感を感じさせてくれた。ファシリテーターの質問に取り組みながら、アートを観察する力、自分で気付く力、創造的な思考力、多様性を楽しむ力を獲得することができる。紙上ではあるが、参加者の発言内容を文字に起こしてあるので、自分の意見との違いに思わずクスッと笑えたり、自分にはなかった視点を増やすことにも繋がり、自分も登場している方々の仲間に入ったような錯覚さえ起こしてしまう楽しさがあった。読書という概念を超えた新感覚の読書が体験できる。
②障がい者アートへの理解が深まる。
恥ずかしながら、私は、この本を手に取るまで障がい者アートについて知識を得ていなかった。著者の福島さん達は、障がいのある人々のアート活動を支援している。そこには、障がいのある人もない人も、誰もが自分の可能性や能力を発揮できる社会へと繋げていきたいという願いがあるからだ。人権は皆平等。賃金体系も同等であるべきだし、生活の利便性の向上を図っていくことも、当然の権利として追求されていくべきだという、主張に強く共感した。また、その思いを土台にビジネスを展開し、障がい者アートを用いた対話型アート鑑賞で研修を行ったり、企業に障がい者アートをレンタルして社内環境の改善を図ったりするなど、取組も多岐にわたる。根底にある想いの強さが、多くの方々に影響を与え、いい循環を生み出している取組を知ることができた。
③対話型アート鑑賞が最強のチーム作りに生かせること。
私の学級経営での実践と重なる点が多く、とても勇気づけたられた。理想のチームとは、どのような状態か?と考えた時、冗談が言い合える柔らかなムードを作ることが重要だと著者福島さんは述べる。こうした空気の中からしか、斬新なアイデアが生まれたり、気になることを躊躇なく発言できて、ミスをお互いに補完し合える関係は作れないからだと主張する。そのために、対話型アート鑑賞を体験し、観察力や創造的思考力を高め「自考自決」できる人になり、チーム内の信頼関係を深め「究極のチーム」を目指す。そして、そこから柔らかな空気が生まれ「対話力」を磨き合って風通しを良くすることができていくのだそう。誰に対しても、フラットなコミュニケーションが取れる先には、誰もが住みやすいフラットな社会の実現が見えてくる。
私自身、講師としての学びの中でも、対話型の研修を受けることが多く、初対面の方々ともその日のうちに関係を深める体験をしてきた。
もし仮に、そのコミュニケーションの中に、障がい者アートという、自由で想い溢れる作品を介入させた時、作品にインスパイアされて参加者の心が解放され、ありのままの自分を無理なく曝け出すことが人との繋がりをもっと心地よいものにしてくれるのではないかと思った。
この本からの学びと、私自身が子ども達と積み重ねてきた体験を発展させて融合させた提案ができたら、企業のチームビルディングにも貢献できるのではないかと考えている。講師としての学びも深めながら、体験してきたことを軸にオリジナルの提案を模索していく。
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