バーチャル短歌結社・四号線 第2巻第6号(通算16号)2022年6月
・短歌連作「水の昏さ」
夕虹を見上げないとは… 悲しみは誰のか知らぬものなのですよ
ラブコメを甘酸っぱいって思うとは私は老いたみんなも老いた
人生に見出しを振ると仮定するこんな悩みは値(あたい)もしない
教育は幻想であるつくづくと思わされれば子離れ間近
身の周り調べてみたら(恥ずかしい)ただの正しさ以外なかった
芸術が些細な声であることを忘れて朽ちる街の彫像
夕映えへ昇龍のよう首都高の鈍色(にぶいろ)の背を天気雨打つ
起きがけの鏡の中のわたくしも水の昏さに愕然とした
悲しみを観るのは止めよ炎天にカートに引かれ歩む老女に
「営業」の誤変換にて「うえーいゴー」夏はそこまでくるって間近
短歌する理由を訊かれ真剣にめんどくさがり以上の解なし
水無月の帰る電車は明るくて実家に電話してもよさそう
サンクス・ゴッド・オン・フライデー・イブニング(どうにかみんな頑張った!好き!)
先達よ問い続けてはいないのか「短歌が何と競うべきか」と
不様さは生き尽くすこと両親にこれからもっと教わってゆく
炭坑を再開しよう二年後は誰も言わない「えすでぃーじーず」
たいせつと思い込んでたビー玉に似て自我はもうとっくに壊れてる
短くてできないと思ってる短歌/短さをただ知らない短歌
かなしさは名詞以外に動かせない? だからサイズじゃないんだってば
抽斗で朽ちた聖書へ這わせるはプールサイドの椰子の木の影
・雑感
短歌についてあれこれと考えるのですが、今月はそれを多めに詠ってみた、という印象ですね、並べてみると。でも、なんだろ、こう言葉で書いてみるとネガティブ感が強く出るなあ。本人が思っている限りはそうでもないんだけどなあ。「正しい表現を心がけよ」とか聞くけど、うーん、なんすかね、それ。おいしくなさそ。ところで、人に何かを「教える」のはムリ!が結論めいてきているんですが、自分が人に「教わる」のは可能だ、と思います。やはり物事は詳しく考える必要があるんじゃないかなあ、じぶんは。
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