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もも 【詩】

酷く酷く小さな、赤黒いその体は、

簡素な棺に収められ、

色とりどりの花で満たされてしまった。

余りに軽いその棺を

 大人が取り囲み丁寧に、丁寧に運ぶ。


物言わず、

母の腕にも抱かれず、

父の背中にも乗せられず、

貴方は何のぬくもりを感じたのか、

誰の声を聞いたのか。

ただ、たった5日を生かされ

生きたその命を私も忘れない。


9時を過ぎ、私たちの目の前から、

職員の手で余りにも、軽々しく

業火の中で焼かれてしまう。


僕はずっと、貴方が天に昇る間ずっと

泣いていたのです。

貴方が懸命に、いや、がんばって、がんばって

生きて居たことに。

貴方の心に浮かんだことや、

母親の、父の、声やことばに何を思ったのか

わからなくて。


見知らぬ土地の、曇りがかった晴の空に

煙が昇ります。

貴方の声も聞けず、手をとってやることも出来ず、僕に何が出来たか。


貴方を想います。

ただ一心に、

忘れないことを、

想います。

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