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【読書感想】2025年1冊目「ヒトの壁」養老孟司/新潮社


1 人生は不要不急か

根本問題は大都会に代表されるヒトの秩序志向、あるいは秩序嗜好にある。「ああすれば、こうなる」がはっきりしている社会だ。その根源はヒトの意識という秩序活動にある。じゃあどうするか。秩序を高めようとしなければいい。それが真の省エネである。・・・

もっと無意識に、自然体で生きていいということだと、思う。

行動は限定される。(1)ランダムに動くか、(2)合目的に動くか、のどちらかです。意識に支配された現代人は(2)である。・・・

やっぱり直感って、大切だと思う。直感は、意識の外の世界にある。

石油を消費して、世界を統御する。世界には秩序が成立するが、同時に無秩序が排出される。それが地球温暖化を招く。まことに理屈に合っているというしかない。・・・

著者は随所でエントロピーの法則を持ち出して、このような解説をしている。理にかなった説明だと思う。

さてどうすればいいのか。いい加減に秩序的に世界を動かすことを諦めたらいかがだろう。それは無政府とか、無秩序を勧めるというわけではない。ヒトの一生とは「起きて半畳、寝て一畳」の世界であろう。・・・

出たー。「起きて半畳、寝て一畳」。僕の好きな言葉の一つだ。

子どもたちの理想の職業がユーチューバーだというのは、対人偏向を示していないか。なにか他人が気に入るものを提供しようとする、対人の最たるものであろう。・・・

人の目線ばかり気にしていて、疲れないのだろうか。僕は不思議だ。

2 新しい宗教が生まれる

オフィスには意味のないものを置いてみるといいですよ、と言ったこともあった。意味のあるものだけに囲まれているのはむしろ不自然なのだ。・・・

ライブファクトリーには、広い芝生がある。そして、社内には柔道場が。これは健康という意味はあるけど、仕事とは関係ない。

3 ヒトはAIに似てきている

大学生の頃、自治会委員の学生がメガフォンを片手に何事かを怒鳴っているのを、登校時に連日聞いていたような記憶がある。それで発言は運動だという印象がしっかり染みついたのかもしれない。思えばあの運動も、学生「運動」の大きな部分だったわけである。・・・

そうか、運動って、発言することでもあったんだ。

私は軽度の肺気腫で糖尿病だけれども、病院に行かないから健康である。病院に足を踏み入れなければ、そこで「意味がある」存在にはならないのだ。病は気から、と言うのか、認識しなければ存在しない。・・・

逆に病気でもないのに、病院に行くと、本当に病気になってしまう。病気でもないのに、マスクをしていても、同じこと。

4 人生とはそんなもの

母は開業医で、生涯それだけを続けた。一切の公職につこうとせず、医師会の役員ですら拒み続けた。母が九十五歳で大往生を遂げた後、朝鮮日報だったかの記者という人が来て、戦中に母が在日の人たちを差別なく親切に医療を行ってくれたという趣旨で、母の思いを尋ねてきた。・・・

僕が最近になって公職を断っているのも、考えてみれば、同じような理由によるものなのかも知れない。社会を受け入れていないのかも。

5 自殺する人とどう接するか

死んだ二人の学生に必要だったのは、話ができるような「場」だったのだろうと思う。社会が合理的、効率的、経済的になると、そういう場が日常からいつの間にか消えてしまう。・・・

ここで著者が言いたかったのは、物理的な「場」のことではなくて、悩んでいる本人の心の中にあるべき安心できる「場」のことだ。

6 なせばなる日本、7 コロナ下の日常

路肩の花の名前を訊くと、スマホで使えるアプリを教えてくれたので、それを使って野草の花を撮影する。そうすると草の名前がわかる。・・・

植物に関するこのアプリが面白くなったので、ウッドデッキで昼寝をしている猫のまるのあたりを撮影してみたら、「植物がありません」という答えが返ってきた。木材の識別まではしないことがわかる。・・・

すごい。この人、スマホ使いこなしてる。それにしても興味を持つことって大切。

その年は少し変わっていて、庭のキンモクセイにしろテンハナムグリが多数来ていた。そのあとは見ていない。虫にはそういうところがあって、ある年に大量に見たからといって、いつもそうだとは限らない。・・・

今年の秋口だったか、大量のハナアブがうちのシマトネリコの花に集まってきたのを思い出した。

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松坂 晃太郎  / MATSUSAKA Kotaro
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