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私がnoteを書く理由
文章を書き始めたのは、新卒1年目のことだった。
新卒採用コンサルティングの部署に配属され、私の目の前に現れたのは、いかつい上司と先輩だった。
西東京出身の色黒のヤンキーな上司、そして広島弁みたいな山口弁をぶちかます、白いパンツに尖がった靴が良く似合う、ギャル男のような2個上の先輩。毎日、両サイドから詰められ、私は何も言い返せずに口を閉ざすようになっていた。
するとある日、西東京のヤンキー上司から唐突に課題を課された。「お前さ、しゃべんねーから何考えてるかわかんねーんだわ。ブログ書け。何でもいいからアウトプットしろ。」何食べたとか、週末どこに出掛けたとか何でもいいから書けとの指令だった。
最初は戸惑いながらも、週に1回、通勤電車の中や日曜の夜にアメブロを更新するようになった。ブログには、新卒1年目の葛藤や成果が出ない焦り、営業での失敗談、次はこうしようといった改善策、お客さんに喜んでもらえた話、そして、道端でずっと寝ていられるホームレスがうらやましいと思った瞬間まで、本音を綴った。4時間睡眠が続く毎日、ただただ「寝たい」という思いで生きていた頃の話だ。
そのブログのリンクは、ヤンキーの上司だけに共有していたはずだった。特に感想をもらうこともなかったので、「読んでいないだろう」と思い好き勝手綴っていた。
ところが、ある日ふとした拍子に、部署内だけでなく、他部署の先輩、社長、果ては社外取締役までが私のブログを読んでいることを知ってしまった。それが、新卒1年目の冬だった。
恥ずかしさと恐怖が入り混じり、それ以来ブログの更新をやめてしまった。
それでも、文章を書くこと自体は苦ではなかった。むしろ、自分の考えをまとめ、記録を残す行為が心地よかった。忘れたくない瞬間を、文章として残しておきたかったのだと思う。そして失敗から学び「次はこうしよう」と記録し、たまに読み返し、前を向くパワーにもなっていた。
私のポンコツ新人時代を知っているブログを読んでいただろう歴代の上司や先輩たちは、私が会社の総会で表彰されると、親戚のように喜んでくれた。そんなに交流のなかった先輩まで、心の底からおめでとうを伝えてくれ、嬉しくて胸が温かくなった。
私は、あまり自分のことを話すのが得意ではない。動物占いでいう、警戒心の強い「こじか」そのものだ。けれど、文章であれば、自分のペースで自分の言葉で、思いを整理して表現できるような気がする。
文書を書いて発信するというのは、本当はみんなと仲良くなりたいのに、不器用で、仲良くなるのに時間がかかってしまう私にとって、大切な自己表現ツールなのだと思う。
ということに気付かせてくれた、西東京のヤンキー上司に感謝している。