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2024年に読んだ本

2024年に読んだ本を振り返りたいと思います。


まずは印象に残った本を7作品。

砂の女/安部公房

2024年の最後に読んだ本。砂で沈みゆく村に監禁される臨場感ある物語に引き込まれ、一気に読み切りました。主人公は、不気味で過酷、そして理不尽な状況に不安、絶望を感じ、そして脱出のために知恵を絞り続けていたのに、最後はそこに留まることを”自ら”選択してしまいます。この一連の心理に、他の物語では味わえない移入感を覚え、そして自分自身の世界すら揺らぎました。
異世界で囚われることは、本当に不自由なのか。日常を自由に過ごしているようで、それは今までの人生で形成された日常に囚われているのではないか。「視点や環境を変える」なんていう簡単な切り口ではないからこそ、ねっとりと思考に絡みつき、主人公に憧れのような感情さえ覚えてしまいます。
個人的には、こういう不気味で得体の知れない設定も大好き。阿部公房さんの作品には初めて触れたので、あと何冊か読みたいです。

暇と退屈の倫理学/國分功一郎

蓄えができ、何もしなくても良い時間が増え、「退屈」に悩まされることが増えた、平和な世界に住む現代人。その「退屈」を、ハイデガーの3形式で考察します。①何かを待っているときの退屈(引き留め)、②その退屈に対する気晴らし、③何かに引き留められているわけではないのに、”なんとなく退屈”。最終的に、②の気晴らしを”消費”するのではなく”浪費”することによって、豊かな人生がもたらされるとしました。
前後関係や利益は関係なく、とにかく自分の興味にのめり込むこと。谷川嘉浩さん(スマホ時代の哲学)がよく例に挙げる「世界が終わろうとしている瞬間にスイカを育てている」や、先に紹介した砂の女の主人公などは、まさにこれにあたるのだろうと思います。
日々”何か”に急かされて、あらゆるコト・モノを効率的に消費してしまうことには、心当たりがあります。ここ数年、この手の本に触れる機会が多く、少しずつではありますが、自分の時間を浪費できるようになってきた気がします。この読書録も、そのひとつ。

日本文化の核心/松岡正剛

日本の起源や文化を学ぶことができるだけでも、十分に読みごたえがあっておもしろい本です。
「こっちが正しい!」と決めつけるのではなく、まったく異なる2つの軸を立てて進むデュアルスタンダード。「二項対立」ではなく「二項同体」。日本の歴史文化の中に様々な方法があったのではなく、「方法が日本をつくった」という考え方など。近現代において世界を覆いつくしつつある、西洋的な考え方では説明しにくい日本文化を、説明しにくいまま捉えていきます。
僕自身、数字ですべてが表現されることや、論理的に”だけ”正しいこと、何でもすぐに検索したり、AIによって最適解が瞬時に見つかってしまう、などのすべてが嫌いです(笑)。人間には、もっと感情的で、変化的で、アナログで、簡単には言い表せないことがベースにあって、それこそが大切でおもしろいことなんだと思っています。
脱資本主義やAIが頻繁に聞かれるようになった世界において、旧来からの日本文化的なスタイルが、人類にとって重要になって欲しいと願っています。

ぼくらの七日間戦争/宗田理

小学生のときに読んで以来、二十数年ぶりに読み返しました。しかも夏に(笑)。当時は、秘密基地に立てこもって悪いことをし、大人たちに立ち向かっていく子どもたちが痛快で、強いあこがれを抱いていたような気がします。
年齢的には大人になり、社会人となって働き始めてから、「大人になって自由に生きるよりも、制約のなかで試行錯誤し”抗う”からこそ、自由があった」と思うことが多々あります。僕は、一般的な(?)大人に比べれば、子どものころの夢や想いを貫いている方だと思うし、いまだに「大人には屈したくない」とか思ったりもしています(笑)。それでも小説内の「この瞬間、子どもたちはすべてから解放されていた」というシーンをみると、こういう瞬間は大人には訪れないんだろうなぁと思ってしまいます。
子供の頃読んだ痛快さとは違い、その日々との決別が、1冊を通して重くのしかかってきました。子どもの頃に読んで好きだった人は、もう一度読むことをお勧めします!笑

図書館戦争シリーズ/有川浩

図書館戦争、内乱、危機、革命と、シリーズ4冊を秋口に一気読みしました。
「図書館で戦争?」というトンデモ設定かと思いきや、「誰もが本を自由に読める」正義を守りたいけど、”予算”が足りない、"公”としての仕事と”私情"との切り分けなど、超現実的な問題が突き付けられます。まるで、社会人初期の何も知らなかった自分を見ているよう。様々な事件や、政治的な戦いが動く中、主人公がボロボロになりながらも、"折り合いをつけて"成長していくのが印象的です。
今年別途読んだ「アンビシャス~北海道にボールパークを創った男たち~/鈴木忠平」でも感じましたが、何か大きな物事を推進・革新させるには、個性的で熱い人物やドラマチックな物語の一方で、途方もない年月や苦い想いをした多数の人々という裏があります。そこまで”懸ける”ことができて、その上で運が重ならないと実現できない。この手の本を読むと、自分の甘さを突き付けられているようで、やる気が出る一方でちょっとヘコみます(笑)。
ただ、この作品は、戦闘シーンがエンタメ的におもしろいことはもちろん、辛さを支える甘い恋愛が入り混じっているところが良いです。ここまでの5冊を通して人生観とか哲学とかが多くなりましたが、最後は愛です!愛!笑

株式会社マジルミエ/岩田雪花

ここからはマンガを。前々から気にはなっていたけど読めていなかった本作品を、1~14巻(最新刊)まで一気読みしてしまいました。
かわいい魔法少女のバトルモノかと思いきや、タイトルに「株式会社」とある通り、魔法少女があくまで現代社会のひとつの職業として描かれており、魔法も単なる魔法ではなく、社内で開発者やエンジニアがいて、それを売り込む営業もいます。
それら裏方も含め「ベンチャーにはベンチャーの、大手には大手の役割がある」「民間企業の存在意義とは…?」など、仕事観的なものも考えさせられたり、ハッとさせられることも多くあります。業界内の闘争も起こるなど、図書館戦争などに似た構図もありますが、少年マンガなので爽快感が勝るのが良いところです。
個性的な各キャラの性格、それに伴うデザイン、表情、動きに惹き込まれ、バトルシーンも痛快で、現実的な物語の視点を熱い想いで押し切っていく、王道少年マンガです!

僕のヒーローアカデミア40巻/堀越耕平

12月に最終42巻が出て、堂々たる完結をした本作。僕が大学生の頃に連載が開始され、リアルタイムで読み続けてきた、思い入れのある大好きなマンガです。完結の仕方も良かったけど、あえて今年発売された40巻をピックアップさせてください。
まずは僕の最推しの爆豪くん。一見ひねくれているけど、根っこには熱い想いを持ったこのキャラクターが大好きで、この巻での(性格をそのまま表すかのような)大暴れ、大活躍には痺れるものがありました。この土壇場で大活躍させてくれて本当にありがとうございます(笑)。
そしてもう1つ注目して欲しいのは、403話のラスト6ページです。タイトルとコマ割りで魅せる。ヒロアカにはこういうシーンがよく出てきて、古くは体育祭の轟くんのシーンなんですが、これこそ、僕がヒロアカを大好きな理由です。初見では鳥肌が立つし、何度も繰り返しじっくり見たくなります。この初見を”紙の”マンガで読まないのはめちゃくちゃ損してます。これだからアナログは止められない。

2024年に読んだ本一覧

最後に、2024年に読んだ本を大体の時系列で列挙します。ちなみに、全部紙の本を購入しています。時代遅れだと思いつつ、電子書籍苦手なんですよね。

・アンビシャス~北海道にボールパークを創った男たち~/鈴木忠平
・異端のチェアマン~村井満、Jリーグ再建の真実~/宇都宮徹壱
・DIE WITH ZERO/ビル・パーキンス
・「繊細さん」の本/武田友紀
・きみのお金は誰のため/田内学
・訂正する力/東浩紀
・私とは何か/平野啓一郎
・ゆるく考えよう/ちきりん
・僕のヒーローアカデミア40~42巻/堀越耕平
・アオのハコ14~18巻/三浦糀
・日本文化の核心/松岡正剛
・ワンピース108~110巻/尾田栄一郎
・GIANT KILLING 63~64巻/ツジトモ
・暇と退屈の倫理学/國分功一郎
・「ない仕事」の作り方/みうらじゅん
・冒険の書/孫泰蔵
・ここは今から倫理です。9巻/雨瀬シオリ
・CAPTAIN/ジョーダン・ヘンダーソン
・さみしい夜にはペンを持て/古賀史健
・なぜ働いていると本が読めなくなるのか/三宅香帆
・松かげに憩ふ1~4巻/雨瀬シオリ
・ヴィンランド・サガ28巻/幸村誠
・キケン/有川浩
・ぼくらの七日間戦争/宗田理
・たんぽぽ球場の決戦/越谷オサム
・ちょっと今から仕事やめてくる/北川恵海
・図書館戦争(~内乱、危機、革命)/有川浩
・ぼおるぺん古事記1~3巻/こうの史代
・ルックバック/藤本タツキ
・おとなの進路教室。/山田ズーニー
・真田三代(上)(下)/火坂雅志
・天地人(上)(下)/火坂雅志
・株式会社マジルミエ1~14巻/岩田雪花
・九龍ジェネリックロマンス10巻/眉月じゅん
・ようこそ!FACTへ1巻/魚豊
・幸村を射て/今村翔吾
・砂の女/安部公房

完読したのは、活字本30冊、マンガ37冊でした。マンガは読み返しているものも含めると、もっと多く読んでるかな。息子との絵本とかはもう記録しきれないですね。笑

こうやって見ると、前半はノンフィクション~実用書が多くて、途中から文化や哲学系に入り、夏場から小説が増えてきました。ここ最近、小説から離れてしまっていたので、夏場から小説を多く読んだのは意図してのことでしたが、そこからハマっていきましたね。後半に歴史小説が増えたのは、9月に上田一人旅に出かけたから。

ちなみに、2024年は読んだ本を都度Twitterの1投稿の字数内で振り返るということを繰り返してきました。とてもめんどくさかったのですが、1年経った今ではだいぶ習慣化されてきたし、読書に対する深さみたいなものも出てきた気がします。

読みかけ、積ん読も多くありますし、読みたい本もたくさんあります。2025年もいっぱい本を楽しみたいです。


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