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「学習する組織」から考える これからの幼児教育 ークラス運営編
クラス運営においても、ピーター・センゲの「学習する組織」の概念は有効に活用できます。幼児教育の現場では、クラスを単なる管理の対象としてではなく、子どもたちと保育者が共に成長する「学習共同体」として捉えることが重要です。以下では、センゲの「学習する組織」の5つのディシプリンに基づき、クラス運営における実践について考察します。
1. システム思考:クラスを全体として捉える
クラスは、子ども一人ひとりの個性や成長段階が異なる集合体です。それぞれの子どもがどのような影響を受け、どのように他者と関わっているのかを把握し、クラス全体のダイナミクスを理解することが求められます。
• 実践例:クラス内での友達関係や遊びのパターンを観察し、特定の子どもが孤立していないか、特定の遊びや活動に偏りがないかを確認する。必要に応じて、子ども同士の関係性を調整する環境づくりを行う。
2. 自己マスタリー:保育者の学び続ける姿勢
保育者自身が、より良いクラス運営のために学び続ける姿勢を持つことが、クラス全体の学びにも影響を与えます。自己マスタリーを実践する保育者は、自分自身の教育観や関わり方を客観的に振り返り、改善する意識を持ちます。
• 実践例:日々のクラス運営を振り返るジャーナルをつける、他の保育者と学び合う機会をつくる、教育セミナーや研修に積極的に参加する。
3. メンタルモデルの克服:固定観念を見直す
「幼児はこうあるべき」「この年齢ではこういう活動が必要」といった固定観念を持ちすぎると、子どもの主体的な学びを阻害してしまうことがあります。現場の状況に応じて、柔軟な視点を持つことが大切です。
• 実践例:
• 活動の計画を立てる際、子どもたちの意見や興味を反映させる。
• 伝統的な指導方法だけにこだわらず、レッジョ・エミリア・アプローチやプロジェクト型学習など、新しい教育方法も取り入れてみる。
• 「この子はこういう性格だから」と決めつけず、行動の背景にある要因を考える。
4. 共有ビジョンの構築:クラスの目標を子どもと共に考える
保育者だけでなく、子どもたち自身も「どんなクラスにしたいか」というビジョンを共有することが重要です。クラスのルールを一方的に押し付けるのではなく、子どもたちと一緒に話し合いながら決めることで、主体的に学び、成長する環境をつくることができます。
• 実践例:
• クラスの年間目標やルールを子どもたちと一緒に考え、絵や言葉で表現し、教室に掲示する。
• クラス会議を定期的に開き、子どもたちが自分たちの学びや生活について話し合える場を設ける。
• 保護者にもクラスのビジョンを共有し、家庭との連携を深める。
5. チーム学習:クラス全体で学び合う文化をつくる
子どもたちが「自分一人で学ぶ」のではなく、仲間と協力しながら学びを深めることができる環境を整えることが大切です。
• 実践例:
• 異年齢保育やペア活動を取り入れ、年上の子が年下の子をサポートする機会をつくる。
• 「教える保育」ではなく、「共に対話し深く探求する保育」を意識し、子どもたちと一緒に考えたり調べたりする活動を増やす。
• 保育者同士もクラス運営について定期的に話し合い、成功事例や課題を共有する。
クラスを「学習する組織」として運営する
クラス運営を「学習する組織」として捉えることで、単なる管理の場ではなく、子どもたちが主体的に学び、成長する環境を整えることができます。そのためには、システム思考を持ち、保育者自身が学び続け、固定観念を見直し、子どもとビジョンを共有し、チームとして学び合う文化をつくることが重要です。
これからの幼児教育では、保育者が単なる指導者ではなく、子どもと共に学び成長する存在であることが求められます。クラスを「学習する組織」として機能させることで、子どもたちにとっても、保育者にとっても、より豊かな学びの場となるでしましょう。