八ヶ岳最高峰登頂!雨からの絶景が最高すぎた〜赤岳縦走〜
秋も深まる10月中ごろ。
そろそろアルプスや八ヶ岳の山にのぼれる時期も終わりが近づいている。
雪山にはまだちょっと自信がないので、雪がふる前に挑戦したかった八ヶ岳最高峰の「赤岳」にのぼってきた。
赤岳だけでもよかったけれど、せっかくなら稜線が素晴らしいと聞く横岳〜硫黄岳までの縦走を計画。
標高差も距離もレベルも私にとってはチャレンジの山行だ。
八ヶ岳は複雑な噴火活動によりできた連峰で、北と南にわけられている。
夏沢峠以北を北八ヶ岳、以南を南八ヶ岳というが今回のぼった赤岳〜硫黄岳は南八ヶ岳に属する。
北と南では北の方が原生林と湖の広がる神秘的な地帯、南ほど険しい岩綾地帯といわれている。
赤岳は八ヶ岳連峰の最高峰で標高は2899m。
長野県と山梨県の境に位置している。北に延びた縦走路を進むと多くの峰塔で形成された横岳につづき、さらに北へ向かうと硫黄岳につながる。
硫黄岳は南八ヶ岳の最北端に位置し、北側には巨大な火口壁(山体崩壊という説もあるらしい)がみられる。
北八ヶ岳には何度かのぼったが、南八ヶ岳ははじめての挑戦。
岩綾がどれほどのものか!
計画のときからワクワクとドキドキのはじまりだった。
ー 赤岳アクセス
どこを起点にのぼるかでアクセスは異なるが、私は赤岳の中でも一般的でのぼりやすいとされる美濃戸登山口を選んだ。
美濃戸、というのがちょっとややこしく、登山口は美濃戸登山口だが、駐車場は美濃戸登山口近辺と美濃戸口とあり、車の場合それぞれ山荘の駐車場をお借りする。
【美濃戸登山口駐車場】
・赤岳山荘駐車場 70台 1日1000円 登山口まで300m
・やまのこ村駐車場 70台 1日1000円 予約可能 登山口まで400m
・美濃戸山荘宿泊者専用駐車場 (宿泊者のみ)登山口まで100m
【美濃戸口駐車場】
登山口まで徒歩約50分
・八ヶ岳山荘 30台 有料(値段が変わっており、700円か800円でした)
・蓼科観光駐車場 120台 有料(現在の値段は未確認)
<公共機関の場合>
高速バス:
・毎日アルペン交通(深夜バス)で竹橋出発、翌朝美濃戸口バス停まで
・アルピコ交通(朝発)で新宿発、上諏訪駅バス停でJ Rに乗り換え茅野駅まで。茅野駅から路線バスで美濃戸口バス停まで(*)。
電車:茅野駅で路線バスで美濃戸口バス停まで(*)。
*路線バスは2023年10月29日までは⼟⽇祝⽇及び7⽉29⽇〜8⽉27⽇運⾏。
私は車で美濃戸口にある八ヶ岳山荘の駐車場に駐めた。
ー 赤岳縦走ルート
先述のとおり、今回選んだルートは美濃戸登山口から出発するルート。
赤岳は南沢をとおるルートになるが、二日目の帰りは硫黄岳からなので北沢をとおる周回ルートだ。
途中、行者小屋からは地蔵の頭に向かうルートと文三郎尾根と選べたが、できるだけいろいろな道を歩きたかったので、行きは文三郎尾根を選択した。
初日は赤岳頂上山荘に宿泊した。
途中山荘がいくつもあるので、お手洗いや休憩には困らなかった。
ー 赤岳をめざして出発!
初日の天気予報は晴れと曇りのいったりきたり。
登山指数もCとBがコロコロ変わり、迷いつつも日中は晴れ予報だったのでチャレンジすることに決めた。
信州 山のグレーディングによると今回のルートの技術的難易度はC、体力度は4でこれまでのぼった中ではもっともハードな山行になる。
よってソロは避け、友人と二人で挑むことにした。
朝6時ごろ都内で待ち合わせ車で休憩を含み約3時間かけ八ヶ岳へ。
中央道の小淵沢ICをおり美濃戸口にある八ヶ岳山荘に車をとめ、準備をし9時半ごろ美濃戸登山口に向け出発した。
美濃戸口から美濃戸登山口までは徒歩だと約50分かかるが、車で行くにはかなりの悪路で事前にYouTubeやサイト記事をいろいろ調べたところ、私の車は車高が高くない普通の車なので「絶対に擦る」としか思えず、友人に登山口まで歩いてくれとお願いをした。
歩いてみるとやはり車では厳しそうだと、徒歩を選択してよかったと思った。車では悪路でも歩くには問題のない平坦な道をのんびり歩いていく。
美濃戸登山口を過ぎ、YouTubeでよくみる分岐に到着。
行きは行者小屋を経由する南沢へ向かった。
南沢は苔深く、特に前日の雨をうけみずみずしく潤っていた。
苔の美しさに魅了されなかなか前に進まない。
岩の道もあるけれどそこまで大きな岩ではない
いくどか沢をわたる橋があり、比較的歩きやすい登山道だと思った。
途中晴れ間ものぞき、「徐々に晴れてくるね」と期待をつのらせた。
やはりふたりは愉しい。何よりも安心感がある。
のぼりながらもゆるい箇所もあり、そこまでしんどいのぼりではなくのぼり続けること2時間半。ひらけた場所にでた。
ひらけたところを少し行くと行者小屋についた。
写真を撮り撮り歩き、時間はかかったものの大きな休憩はせずにのぼり続けたので、行者小屋で30分ほどゆっくりとブレイクタイムをとった。
みあげるとてっぺんほど真っ白で何もみえない。
「なんか、晴れないよね」
「もしかしたら雨がふるかも?まあふっても霧雨だよね」
と天気予報をかたくなに信じ、少し肌寒くなったのでシェルを1枚羽織り、ザックカバーとヘルメットを装着しててっぺんをめざした。
行者小屋からてっぺんまでは1時間ちょっと。さあ、最後ののぼりだ〜!と気合を入れる。
そうして15分くらいのぼっただろうか。
ポツっ
「うそ、雨だ、雨ふってきた」
しかし、それでも「すぐやむだろう」とシェルで間に合うかなとレインウエアは着なかった。
やまなかった。
しかもまあまあな本ぶり。
さらにすでに森林限界で隠れるところはない。
気温はどんどん下がる。
寒い。
とにかく足を滑らさないようにゆっくりゆっくりのぼった。
文三郎尾根はほとんど階段。でもそのおかげで雨でものぼりやすかった。
そうして30分ほどふり続いた雨もようやくやみ、長かった階段をのぼり終えると最後の分岐に到達。
阿弥陀岳からのぼってくるルートとの合流地点だ。
分岐はひらけていて、ついてみたら今度は強風。
確かに予報でも風速5mくらいの予報だった。
でも体感はもっとだった。
「この強風で岩をのぼれるのか?」
そういいながらさらに進むと、大きな岩陰に遮られ風はやんだ。
最後の岩場は雨も風もなくなった。
これだけが救いであり奇跡だった。
しかし雨で滑りやすくなっているから細心の注意を払い、ゆっくりゆっくり一歩ずつのぼる。
寒いしつらい状況下だったけれど、岩を前に私は笑っていた。
どれだけ岩好きなのか。
岩は足場もしっかりしていてすごい岩場ではあったけれど、決して困難な岩とは思わなかった。
救いだったのは霧もそう。
思ったほどの濃霧ではなく前はみえたので天狗岳のときのような不安はなかった。
また、遠くもみえなかったので、高度感の恐怖もなかった。
むしろ晴れていたら怖かったのかもしれない。
そうしてなかなかの岩をのぼること30分、ようやくみえた!
赤岳てっぺん!!
美濃戸口を出発してから休憩を含み6時間、よくがんばった!
てっぺんの感動はひとしおだったが、視界はゼロだしとにかく寒かったので標識だけ撮影しそそくさと赤岳頂上山荘に向かった。
赤岳のてっぺんは赤岳頂上山荘のある北峰と、一等三角点がある南峰とにわかれているが目と鼻の先だ。
到着するや宿のストーブを独占。
抱きしめたいくらい寒かった。
チェックインで書類に書くとき、寒さで手の震えがとまらずうまく書けない。
まずは着替えちょっとあたたかくなったが、しばらくストーブ前から動けなかった。
最初のポツリでレインウエアを着なかった自分を悔やんだ。
シェルのおかげでからだは濡れてはいなかったが、手袋はびしょびしょで手が凍るように冷たい。からだも芯から冷えていた。
山を甘くみてはならない。
たまたま運よくてっぺんにたどり着いたけれど、次はないと思って支度をしなければ誰かに迷惑をかけてしまう。
そんなことを考えながらゆっくりからだが解凍されていくのを感じた。
片付けを済ませ、上の階にある自炊室へ。
自炊室にはストーブがあり、濡れた衣類を干しておける。
その日は3組の宿泊客がいて、すでに2組は到着し自炊室で談話されていた。
私たちもお仲間に入れていただき今日の雨を語り合った。
ほどなく夕食のお知らせをいただき、食堂へ。
おいしかった。山小屋の料理はなぜこんなにもおいしいのだろう。
ペロリと完食したら眠くなってきた。
景色も拝めそうにないので、19時布団に入った。
ー 二日目、赤岳から横岳〜硫黄岳を縦走
4:40ごろ、部屋の灯りがついた。
山ではあまり熟睡できなくて、電気がつく前にもう目は覚めていた。
日の出は5:36、朝食は5:15。
「さっと食べててっぺんに行くぞ!」
昨日は真っ白だった食堂の窓から明るくなりはじめた空がみえる。
ごはんをかっくらって、今度は防寒しまくりカメラ片手にてっぺんへ向かった。
まだ雲は多く風も強かったが、昨日の雨風で空気はいつも以上に澄んでいるように感じた。
宿泊客3組揃って感動的な日の出を堪能した。
そしてはじめてみる赤岳てっぺんからの景色に言葉を失った。
「こんなすごいところに立っているのか」
「あんなすごいところをのぼってきたのか」
はじめて知る道のりを眺めては互いを褒め称える。
すっかり一緒に泊まったメンバーと仲良くなり、赤岳の愉しさがもうひとつ増した。
もう十分というくらい日の出を愉しんだので宿に戻った。
日の出のころまでは風がまだ強く稜線歩きが心配だったので、出発時間を1時間遅らせた。その間に宿散策!
さあ、二日目はもうひとつのお愉しみ、横岳〜硫黄岳へ縦走だ!!
ヘルメットをかぶり風除けにと、夏の日除けと虫除けに購入したフェイスカバーをつけいざ出発!!
仲良くなった女性二人と二日目は同じコース。
私たちよりずっと経験のあるお二人と一緒だったので、ものすごい安心感を得てこれまたはじめての横岳へと向かった。
歩きはじめると、なんと風がやんでいる。
これまた奇跡だ!!
まずは地蔵ノ頭をめざしておりていく。
最初はがっつり岩場をくだっていくが、とにかく景観が素晴らしくて前をみれば優美な稜線がつづき、ふり返れば雄大な赤岳が存在している。くだりのしんどさをこんなにも感じなかったのは、はじめてかもしれない。
赤岳展望荘までおりてみあげると、赤岳頂上山荘がどれだけすごい場所に建っているのかを感じた。
さらにおり、よくみかける「赤岳と赤岳展望荘のツーショット」が撮れる場所から撮影する。
なんてかっこいい山なんだ。
横岳のはじまりがどこなのかよくわからないが、とにかく激しい岩がずっとつづく。高低差はそれほどないが、よじのぼりくだりを繰り返す。
YouTubeでみたときは、狭くて怖そうという印象だったが、実際のぼってみるとそれほど高度感も道の狭さも感じなかった。
それ以上に愉しくてたまらない。
前をいくお二人が注意すべき箇所を教えてくれる。
なんだかガイドさんときているみたいだ。
贅沢。
稜線からの景色は前と後ろだけではなく横も素晴らしい。
雲が空にアートを描きめぐる。
横岳は鎖、ハシゴの連続。鎖がなくよじのぼるところもある。
初心者向けとは思わないし、簡単ともいわない。
でものぼりやすい岩だなと私は感じた。
それにしても横岳は横に長い。
結構な数の岩を乗りこえ、いくどとなく立ち止まっては写真を撮り、下山はじめて2時間後ようやく横岳に到着。
予定を大幅に遅れていた。
先に進もうかと思ったけれど、先輩(年齢ではなく、もはや我々にとってはこの存在)二人が休憩されるとのことだったので一緒に休むことにした。
友人がお湯を沸かしてコーヒーを入れてくれた。
いまだカップを持ってこず、友人の鍋で飲ませてもらう。
先輩がりんごと柿のドライフルーツをくれた。
もう幸せしかない。
昨日の雨からの大逆転勝利!とはまさにこのこと!!
山で絶景をのぞみながらコーヒーを飲む。
東京でどんなに素敵なカフェに行っても、この感動を味わうことはできない。
横岳をすぎるともう険しい岩はない。
ゆるやかで広大な山の風景が広がっている。
広い稜線にポツンと建っているのが硫黄岳山荘。
ここもいつか泊まってみたい。
硫黄岳に向けて最後ののぼり。
ゆるやかだけどのぼるので、地味に息があがる。
赤岳を出発して3時間半、ようやく硫黄岳のてっぺんへ!
硫黄岳のてっぺんはとても広く、のんびりできる。
これまで歩いてきた稜線が全部みえ感慨深い。
ここを過ぎたらもうこの山並みはみれない。
名残惜しさを感じつつも、時間がかなりおしていたので休憩はそこそこで下山を開始した。
ー 下山へ
帰りは赤岳鉱泉を経由し北沢を通るルート。
まずは赤岳鉱泉まで一気にくだる。
晴れているせいか、こちらのルートの方が広く明るく感じた。
硫黄岳から赤岳鉱泉までは1時間半。
12時過ぎていたのでおなかはペコペコ。
ここでお昼を取ることにした。
カレーの種類が豊富で私はタヒチカレーを選択。
おいしい〜。2杯くらいいけそう。
赤岳鉱泉はひらけていて、赤岳から硫黄岳まで全部みえる。
「あ〜、あそこを歩いたのかあ〜」
こうしてみあげるとすごいなあと思ってしまう。
下からみる山は本当に高い。
赤岳鉱泉からの道はゆるやかな道が多く、沢沿いを歩くので気持ちがいい。
1時間半歩いてようやく美濃戸登山口に到着。
ほっと一息、もう一踏ん張りと赤岳山荘でお手洗いを借りて戻ってきたら、赤岳鉱泉で別れを告げた先輩二人がいるではないか!
友人が何か叫んでいる。
なんと!お二人は赤岳山荘の駐車場に車を駐めていたそうで、私たちを美濃戸口(私たちの車を駐めている八ヶ岳山荘の駐車場)まで乗せていってくれるという。
神降臨!
靴も汚いし、申し訳ないといっても
「全然気にしないで」
と、これぞ神。
実のところ結構足の裏が痛くなりかけていて、まだあと40分くらい歩くのかあ〜、と先の長さを感じていた。
それだけにありがたいのひと言だった。
車に乗ってみて、いかに美濃戸口までの道が悪路かわかった。
この道は私道なので通らせていただけていることに感謝すべきであり文句をいうのはお門違いである。
なので文句では決してない。
ただ、車で向かう道のはなかなかの困難を伴う。
それでも先輩のドラテクは素晴らしく、よくぞ乗り越えたとしかいいようがない。
つくづく私にはこの道の運転は無理だと思った。
ただただ感謝するしかなかったけれど、きっといつかまた山で逢えると信じてお別れをした。
ー 赤岳山行を終えて
いろいろなことがあり過ぎて、二日間のできごととは思えないほど盛りだくさんの山行になった。
赤岳は堂々たる姿が勇ましく、麓は苔に包まれ温かく、いろんな姿をみせてくれる魅力的な山だと思った。
こんなにも岩岩しいのに、登山道はとても整備されていて、とはいえ自然のままでもあり、こんな悪天候でものぼれたのは守っていらっしゃる山の方々のおかげだなあとつくづく思った。
それだけに、安易なスタイルや気持ちで向かってはいけないと改めて思った。
人との出逢い、人のぬくもり、山の偉大さ、自然の恐怖と豊かさ、そしてえもいわれぬ絶景の連続。
ますます山が好きになったし、山のぼりをはじめてよかったと思う。
赤岳がのぼれたことでちょっと自信もついた。
もちろん、過信はいけないけれど自分の力量を知るにはやはり挑戦は必要だ。
もう季節的に雪山をまだのぼらない私にはアルプスは難しいであろうから、徐々に低山へスイッチしていこうと思う。
次の山旅ではどんな出逢いがあるかな〜
<二日間>
距離:21.4km
累積標高(のぼり/くだり):1768m/1767m
タイム:初日6時間40分(休憩1時間28分含む)
二日目8時間2分(休憩1時間31分含む)
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