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フォームローラーで疲労を回復

フォームローラーは上のイラストで女性が乗っている丸い筒です。デコボコがついていて乗ってコロコロと動かすとマッサージ効果が得られます(注1)。疲労回復やウォームアップに効果があり、ここ10年くらいでトップアスリートから一般の人まで広く使われるようになってきました。


疲労に効くのか?

Pearcyたちは、フォームローラーが運動後の筋肉痛とパフォーマンス回復に与える効果を調べました。参加者は普段からジムでそれなりに体を鍛えている大学生です。スクワットの自己最大荷重(1 RM)が平均で141 kgとなかなかです。

実験ではスクワットでの疲労がフォームローラーで軽減されるか調べました。参加者は自己最大荷重の60%の重さで、スクワットを10回10セット行いました。これはキツい。平均だと85 kgのバーベルを背負って100回のスクワットです。立ち上がれないくらいフラフラになります。参加者はこのスクワット10回10セットを4週間空けて2回やり、どちらか一方でスクワットの後フォームローラーで体をほぐし、もう一方では特に何もしませんでした。

フォームローラーを使った時は下半身を丁寧にほぐしました。ふくらはぎ、ハムストリングス、外腿、内腿、臀部を左右それぞれ30秒くらいかけてゆっくりほぐしました。

筋肉痛が減り、パフォーマンスが上がる

筋肉痛やパフォーマンスへの効果を調べるため、実験前と24時間、48時間、72時間が経過した後の効果を測りました。筋肉痛への効果は、どのくらい押すと痛いかを調べました。筋肉痛って触られると痛いですよね。下の図の通り、フォームローラーでリカバリーを行った方が圧力が大きくても、つまり、強く押しても痛みを感じにくくなっています。統計的な分析の結果、48時間後のフォームローラーの効果量はd = 0.8とかなり大きなものでした。

Pearcey (2015)におけるフォームローラーが筋肉痛に与える効果
圧力の値が大きいほど痛みに耐えられるので筋肉痛が弱い、つまり、疲労回復効果があることになる。ちなみにこのグラフで使われる圧力の単位kPaはタイヤの空気圧などの測定で使われるもので、1kPaで1 m^2に1Nの力が加わる。

30 mダッシュ、垂直跳び、荷重スクワットなどもフォームローラーのリカバリーで、何もしない時より疲労効果があり、事後のパフォーマンスが向上しました。これらの結果は、フォームローラーが疲労回復に有効であることを示しています。

フォームローラーってどう使うの?

Pearcyの研究で用いられたフォームローラーのリカバリーは、下の動画で紹介されたものと同じです(脇と背中はやってません)。参考にしてみてください。

なお、フォームローラーが良いとは言え、やりすぎは良くないそうです。1部位を30–60秒かけてほぐし10–30秒休むのが良いようです。それらを3-5セット行うのが最も効果的であると多くの論文をまとめた結果から推奨されています(Hendricks et al. 2020)。

フォームローラーは筋膜リリース、つまり、筋膜の癒着やねじれを解きほぐし、筋肉や関節の動きをスムーズにすると言われてます。また、外的な刺激により血流もよくなるそうです。これらが疲労回復やパフォーマンスの向上に効くのでしょう。ただし、この詳細については実はいまいちわかっていません。

疲れると怪我もしやすいです。趣味でやっているスポーツなら、疲れが溜まると仕事や日常生活に悪影響が出るかもしれません。フォームローラーは安いものなら1000円くらいからあるので良かったら試してください。僕は毎日寝る前にやってますが、かなり効果を感じています。ちなみにウオームアップにも効果的です。

引用文献

・Hendricks, S., Hill, H., Hollander, S. D., Lombard, W., & Parker, R. (2020). Effects of foam rolling on performance and recovery: A systematic review of the literature to guide practitioners on the use of foam rolling. Journal of bodywork and movement therapies, 24(2), 151–174.
・Pearcey, G. E., Bradbury-Squires, D. J., Kawamoto, J. E., Drinkwater, E. J., Behm, D. G., & Button, D. C. (2015). Foam rolling for delayed-onset muscle soreness and recovery of dynamic performance measures. Journal of athletic training, 50(1), 5–13. https://doi.org/10.4085/1062-6050-50.1.01

注1:デコボコがついていないものはストレッチポールと呼ばれ使用目的も効果も異なります。


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