あ アブラナ(菜の花)
アブラナ(菜の花)
[気味]辛、温
[帰経]肝・肺・脾
[主治]炎症・おでき・吹き出物・産後の回復。茎、葉は悪性の腫物を治す。種子は停滞した血を動かす(行瘀散結、消腫解毒、温経散寒)。
原種は、西アジアから北ヨーロッパの大麦畑に生えていた雑草で、農耕文化と共に移動したと考えられている。漢代の中国に渡ると栽培作物となり多様な野菜を生むなど、東アジアで古くから栽培されている。日本では弥生時代以降から利用されたとみられる。
本来は菜、つまり葉物野菜として利用され、古事記では吉備の菘菜(あおな)、万葉集では佐野の茎立(くくたち)として登場し、花芽についても、延喜式に記されている。
江戸時代になって、植物油の採油目的として栽培され、その油は菜種油と呼ばれた。菜種油は、主に灯油原料として利用され、生活に密着したものとなった。そのため、菜種という言葉は、一般的な植物(作物)名として定着したのであった。また、一般にアブラナ属植物の種子からは油が採取でき、カラシナやカブも利用されている。
丈夫で育てやすく、広く栽培されたなじみ深い作物だった。また、菜種畑は明るい黄色が畑を覆う「菜の花畑」として春の風物詩とされ、歌や文学作品の題材となるが、明治時代以降はセイヨウアブラナに置き換わっている。
茎、葉は悪性の腫物を主治し、種子は停滞した血を動かし、産後の心臓・腹部の疾患を治療し、難産を治します。(中国の宋時代の婦人科の書『婦人良法』に難産を治療する歌があり、「黄金花(油菜の花のこと)は粟米のような実を結ぶ。この実を細かく砕いて、酒で十五粒を服用すれば、霊薬の効果は神のごとく效き、難産のとき、急を救うことができる」)。
β-カロチン、ビタミンB1、B2、C、E、鉄、カルシウム、カリウム、食物繊維を含み、免疫力を高め、
風邪を予防(βカロチン、ビタミンC)、肩こり、イライラ、骨粗しょう症を予防(カルシウム) によいです。
アブラナを食べる
料理する時のポイントは、ビタミンCは水溶性なので、茹で過ぎや水にさらし過ぎると流れ出すので注意してください。 加熱により、βカロチンもやや減少しますが、油脂と一緒にと摂取するとβカロチンの吸収率が高まります。
・アブラナ(菜の花)の白和え
材料
アブラナ1/2束、木綿豆腐1/2丁、白ゴマ大さじ1、しょうゆ小さじ1/2、みりん小さじ1、塩 少々
作り方
①木綿豆腐は水気を切っておく。②菜の花をゆがいて、葉の部分は2cm、茎の部分
は1cmほどに切る。
③②をしょうゆ(分量外)洗いする。④フライパンで白ごまを香ばしく炒って、すり鉢に移してする。
⑤④に①をほぐしながら入れ、Aを加えて和え衣を作る。⑥③を⑤に加えて和える。
各食材・調味料・薬味の四気・五味・効能
・アブラナは、辛味があり身体を温める性質がある。効能は、 炎症、おでき・吹き出物、産後の回復、茎、葉は悪性の腫物を治す。種子は停滞した血を動かす。
・豆腐は、甘味と鹹味があり冷やす性質がある。効能は、熱を引かせ、血を散じ、赤眼・腫痛を治す。脹満を消し、大腸の濁気を下し、久痢を止め、酒毒を解する。
・ゴマは甘味があり平性の性質がある。効能は、早期白髪、頭のふらつき、目がかすむ、耳鳴り、肢体のシビレ、腸燥便秘(黒は腎、白は肺に作用する)。
・しょうゆは、鹹味と甘味があり少し冷やす性質がある。効能は、一切の飲食および百薬の毒をも消す。
・塩は、甘味と鹹味があり冷やす性質がある。効能は、脾胃を調和し、食べ物を消化し、食中毒を解す。
・ミリンは、甘味と辛味があり温める性質がある。効能は、食欲増進、腹中の冷えを除く。薬味の調和を保つ。
考察 食材は、温性のアブラナ(菜の花)と寒性の豆腐で、薬味・調味料を合わせると平性となります。五味は、甘味・辛味・鹹味と日本食の常識となっており美味しくなっています。臓腑経脈は全てに帰入しています。冬の間に溜まった体内の毒素を排泄するのにとてもよいおかずです。
・アブラナ(菜の花)の和え物
材料 アブラナ、かつお節、しょうゆ
各食材・調味料・薬味の四気・五味・効能
・アブラナは、辛味があり身体を温める性質がある。効能は、 炎症、おでき・吹き出物、産後の回復、茎、葉は悪性の腫物を治す。種子は停滞した血を動かす。
・かつお節は、甘味があり温める性質があります。効能は、気血を補い、腸胃を調え、筋力を壮にし、歯牙を固くし、肌理を密にし、髪髭を美しくする。
・しょうゆは、鹹味と甘味があり少し冷やす性質があります。効能は、一切の飲食および百薬の毒をも消す。
考察 食材のアブラナは温性ですが、調味料のしょうゆによって少し平性になります。五味は、辛味のアブラナと相性の良いかつお節(甘味)としょうゆ(鹹味)によって調和し、臓腑経脈は、心以外に帰入しており、添え物としてもよいものです。春のおかずに最適です。