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【美術展2025#14】Artists in FAS 2024 入選アーティストによる成果発表展@藤沢市アートスペース

会期:2025年1月11日(土)〜3月16日(日)

「Artists in FAS」は、藤沢市アートスペース(以下、FAS)が多様な創作活動に携わるアーティストたちに、制作の場と発表の機会を提供するアーティスト・イン・レジデンス・プログラムです。9回目となる今回は、全国から56件の応募があり、外部審査員(三沢厚彦氏[彫刻家]、三本松倫代氏[神奈川県立近代美術館主任学芸員])によって、映像、立体、インスタレーションなどを手がける4名が選出されました。入選アーティストたちは、展覧会に先立ち10月からの約3ヶ月間、FASのレジデンスルームで滞在制作を行いました。その成果を本展にて発表します。藤沢の自然と歴史のリサーチや、市民、そしてアーティスト同士の交流によって生まれた作品をご覧ください。

藤沢市アートスペース


神奈川県藤沢市が行っているアーティスト・イン・レジデンス。
過去の開催履歴を見ると2名程度の一年毎の外部審査員によって毎年4名が選出されているようだ。

今年は審査員が三沢厚彦氏ということだったので足を運んでみた。

我が家の置物たち
三沢厚彦


・審査員:三沢厚彦氏

・審査員:三本松倫代氏

三本松氏は昨年の石田尚志展も担当したようだ。


入選者は期間中(2024年10/5〜12/27)に、各々藤沢市内各地をリサーチして作品に落とし込みながら、30日以上(1日6時間程度)FASに滞在し制作をすることが条件付けられているとのこと。

しかしこのマップ、A4の紙にプリントアウトしたやつをくっつけて貼っただけだし、ヨレヨレだし、テープも見えてるし、なんかもう少し見栄え良く作れなかったのだろうか、と思ってしまった。
市が金を出している催しで市内をアピールするせっかくの機会だと思うのだが、手作り感が強すぎて安っぽいのがなんとも勿体ない。



・伴 佳七子

《閃光を引きよせる2》

藤沢辻堂海岸で採取した石や植物、砂鉄などで構築される作品群。

ふ〜〜〜!!っと息を吹きかけたくなるのを堪えた。

砂鉄

室内には謎の作品が点在する。

《閃光を引きよせる3》



・斎藤 英理

《わずかな見せかけ》

映像が流れるスクリーンの左側に偏頭痛の前兆であるという「閃輝暗点」がたま〜〜に写る。
14分の作品中3回くらい?

偏頭痛に関する各種資料や芥川龍之介を藤沢(鵠沼)に絡めて映像に落とし込んでいるそうだが…。



・齊藤 美帆

《non objective object#12》

なんだかよくわからない物体が置かれているが、ハンドアウトによるとそもそも作者ですら「なんの機能も果たさない機能性をもったような物体として継続し制作を行なっている作品群」とのこと。
お、おう、そうなんだ。

《どこかの風景》
《どこかの風景》
《ドローイング》
《ドローイング》



・小山 裕紀子

窓やエレベーターホール、吹き抜けなどに作品が。

《zwischen drinnen und draußen》

タイトルはなぜかドイツ語。
google先生によると、
zwischen drinnen und draußen = 内側と外側の間

《fliegende Papierbahnen》

fliegende Papierbahnen = 空飛ぶ紙の網
だそうだ。

既視感のある装飾のようでいまいちアート感は感じなかった。
ここは子供向けカルチャースクールがたくさん入っているビルなので、訪れる子供たちにはこういう方が身近でいいのかもしれないが。


う〜ん。
ここ藤沢市アートスペースは過去に毛利悠子や大山エンリコイサムなど近年注目の作家の展覧会を行ったりもしているのだが、今回の作品群は私の琴線に触れず。
私小説感が強かったり、勝手に自己完結していたり、投げっぱなしだったり、というような印象。
感動したり発見したり共感したり共振したりということは特に無かった。
まあ、新卒新入社員くらいの年齢(と言ったら失礼かもしれないが)の彼女たちが美術業界の荒波の中をこれからどう生き残っていくのか(いかないのか)を遠巻きに眺めていこう。(謎に上から目線)


ところで気になったのが今回の入選者の出身大学は4名中3名が武蔵野美術大学
そのうちの2名が武蔵野美術大学彫刻科出身(2024年にそれぞれ院修、学部卒)。
今回の審査員の三沢厚彦氏は現在武蔵野美術大学彫刻科教授

…ま、その、なんだ、偶然偶然



さて、この建物の上階には藤沢市藤澤浮世絵館があるので行ってみる。

こちらでは「藤沢と江戸の出版事情 蔦屋重三郎と絵師たち」と題した企画展が行われていた。
今年は、NHK大河ドラマに乗っかってか、
トーハク:4月〜「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」
千葉市美術館:5月〜「江戸の名プロデューサー蔦屋重三郎と浮世絵のキセキ」
と、各地で一大蔦屋重三郎ブームになっている。
私はドラマやバラエティ番組は全く見ないし蔦屋重三郎についても浅はかな知識しかなかったが、とりあえずいっちょかみしてみることにした。

湘南T-SITEの蔦屋書店で買ってみた

吉原絡みで財を成していった人だったということなのだが、吉原といえば昨年の東京藝大大学美術館で行われた「大吉原展」が記憶に新しい。

そしてあのTSUTAYA(蔦屋書店)とは直接の関係はないということを知った。(せっかく蔦屋書店で本買ったのに…)
バーミヤン(中華料理)の由来がバーミヤン(アフガニスタン)みたいなものかね。

で、藤沢に話を戻す。

東海道五十三次
東海道五十三次のひとつである藤沢宿
ケース内が原本
壁面は複製
たくさんの絵が残されている

さらに藤沢市は江の島を擁しているのが強い。

富士山を別格とすれば、浮世絵に描かれた風景の中で、その数では江の島は、かなりの上位に入ると言えましょう。それほどに、江戸時代の江の島詣では一大ブームでした。

会場パネルより

元々の優良コンテンツをしっかりと活用している。

《福神江の嶋もうで》


蔦屋重三郎 年表
よ、読めねえ…
よ、読める…(かろうじて)



藤沢市は電車一本で1時間もあれば新宿や上野まで出られる交通の便の良さに加え、湘南ブランディングが功を奏してイメージを高めているのも一因だろう、人口増加率も高い。
アート関連にしても文化的な素地やハコも整っていてポテンシャルは高い。
近隣の鎌倉市や茅ヶ崎市も加えて湘南地域一帯はやはり都内とは一味違った空気が流れていてとても魅力的なエリアだ。



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