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令和5年度さいたま市民意識調査中間報告書(令和5年8月)によると、さいたま市は通勤・通学・買い物等への利便性が優れているから選ばれるのだという。

■さいたま市にどのようなイメージを持っていますか。
■1位 買い物など生活に便利なまち 56.3%
■2位 居住・生活環境のよいまち  51.6%
■3位 交通の利便性が高いまち   48.9%

しかしながら、ここの1位と3位にある“便利”だとか“利便性”って、なんだかちょっと違和感がある言葉。
各市民の好き嫌いがどうであれ、“用途”のために効率が良いからここに住めと言われているような感じがする。
あまりに合理的な選択すぎる。
そんな町、好きになれる分けがないと思う。
それは、自分で選択しているとはいえ、本当に個々の市民が心から望んで選択しているものなのだろうか。
もっと、“ああこの町がしみじみ好きだなあ”って言いたくなるような要因が町には無いと、心に“無味乾燥さ”や“わだかまり感”が残ってしまうだろう。
その“わだかまり”があるが故に、タモリが埼玉県を貶した最悪の言葉“ダ埼玉”を何気に受け入れてしまうのだろう。
高度経済成長の時期には、国家の経済成長を目指して皆が東京で仕事や学業をするために居を構えていたのがさいたま市だろう。
さいたま市はいわゆる東京の郊外の町の一つにすぎなかった。
だけれども、もう国も市民も成長し、例えばマズローの5段階の欲求であれば、1段目の生理的な欲求、つまり食や睡眠への欲求、そして2段目の安全の欲求、それは心身の健康や経済的な自立等、これらはもうある程度満たしてしまったんじゃないだろうか。
すると、3段目の社会への帰属への欲求や、4段目の自己承認欲求、そして5段目の自己実現への欲求において、その町がどれほど自分の要求を実現してくれるのかが重要な町の選択要因となる。
町づくりというか、町の歴史がそのような段階に差し掛かると、必要なのは市民と自治体が感性においてマッチすることが必要だろう。
それは、ようは毎日市民がときめいていられるのか。
その町が市民の個々にときめきを与えることができるのかということだ。
もう、言わば福祉的なニーズ(マイナスをどう世間並みにもっていくか)ということではなく、個々の市民の各々の満足度を向上させる付加価値を与えることができるのかということだ。
当たり前だが、満足度というものは町全体で総合的に測るものではなく、個々において測られるべき指標だ。
矢野経済研究所のレポートによると、町を選択する理由には、①合理的な選択理由、②情緒的な選択理由、③経験的な選択理由の三つがあるという。①の合理的な選択理由としては、生活に便利であるとか、交通の利便性、都心に近い等々がある。③の経験的な選択理由としては、住み慣れた、生まれ育ったといったもの。
この選択理由①と③については、さいたま市に当てはまると思う。
では②の情緒的な選択理由とは何か。
矢野経済研究所によると“住んでみたい”理由としては、この②情緒的な理由が、回答の三分の二を占めていると言う。
その情緒的な理由の傾向をキーワードでまとめれば、“飽きない”“複数の体験ができる”“奥の深さ”“新しい発見がある”といった単語が挙げられるそうだ。
それらの有無が今後重要な情緒的な選択理由となる。
次に、情緒的な選択理由たる“町のブランド化”がなされている銀座、京都、鎌倉等を見てみよう。
これらブランドが確立した町に有り、さいたま市には足りない“キーワード”は、“オンリーワン(希少性)”“おしゃれ感”“高級感”“歴史・老舗”といった、やはり情緒に訴求するものになる。今後、さいたま市が居住に係る情緒的な価値をさらに備えていかなければならないとするならば、このようなワードに十分留意しながら町づくりを進めていく必要がある。
たしかに今まではよかったかもしれない。
経済成長にのって黙っていても人口が増え続けていたからだ。
しかしながら東京圏の多くの市区町村が既に人口を減らしている。
東京圏の郊外に位置する町は、もう東京圏の郊外に位置するといった旨味(合理的な選択理由)だけでは生き残れない。
矢野経済研究所のレポートはこう述べる。
「若い年代層の方がまちに対する”意識“が高い。若年層は高年層よりまちに対して”思い“を持っており、まちの変化や良さに敏感である。」
どうすればこのような若い方々に町が選んでもらえるのか。
もう一度考え直す必要がある。
人々への訴求するためのブランドというものは、表面上にただあるだけではなく、本質を揶揄(象徴)するモノであって、だからこそ、地域の本質をこれからどうするのかという議論が必要だ。

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