企業間の取引効率化に必須のEDIと2024年問題について解説します
皆さんこんにちは。高速検索エンジンの会社フォルシアのMasstery部でエンジニアをしている光山です。
今回は「EDIと2024年問題」についての記事をお届けします。
EDIは受発注データなどを企業間で電子取引する仕組みのことですが、EDI、ましてやその2024年問題については初耳という方も多いと思います。
実は先日、Massteryを導入頂いているとあるお客様から「仕入先からのデータをEDIフォーマット変換ができないか」というご相談を頂きました。よくよくお話をお伺いさせて頂くと、商品データを特定のフォーマットに変換するという話で、Massteryを使って頂くのにうってつけのテーマでした。
こちらのお話を頂くまでMassteryでは「EDIのデータ変換」を扱っては来ませんでした。しかしながら、お客様から具体的なご要望を頂いたことで、商品データクレンジングを得意とするMassteryと実は親和性が高い分野なのでは?と思い至りました。
そしてこのEDI、調べれば調べるほど興味深く、また、直近で2024年問題という大きな問題のある、非常にチャレンジングな分野であることが分かりました。
この記事では、EDIにはどのような種類があるのか、今後の課題は何か、特に2024年問題とは何か、についてまとめています。
・これからEDIを導入しようとしている、あるいは現在EDIを使用しているが困っているメーカーや商社等のシステム担当の方
・業務システム分野を扱うSIerやベンダーの方
といった方々のご参考になれば幸いです。
EDIとは
EDIとは「Electronic Data Interchange」の略で、企業間の取引に関して、コンピュータ同士を通信回線につないでデータのやり取りを行うことを意味します。
このように書くと、「コンピュータでデータのやり取りをするなんて当たり前じゃないか」と思われるかもしれません。(最初にEDIを知ったとき、私はそのように思ってしまいました。)しかしながらEDIは、コンピュータでデータ交換をするのが当たり前でない1980年代前半から、電話回線を用いて使用されてきました。当然インターネット普及前の話です。
古くから小売店(発注側)と卸売業者(受注側)の間で、受発注データや物流の出荷データなどをやり取りする目的で、電話やFAXに代わる方法として利用され、発展してきました。
EDIの種類
EDIはかなり多くの種類が存在し、分類も複数の観点から行うことができます。今回は
・通信手順(プロトコル)別
・個別か標準か
という2つの観点で分類しています。
EDIの分類1. プロトコル別
プロトコルとは、コンピュータで通信を行う際の技術的な取り決めのことです。同じインターネットEDIでも、プル型(受注側が明示的にデータを取得しにいく方式。受注側はサーバを用意する必要が無いので、安価で済む)で中小企業向けのJX手順や、プッシュ型(双方がデータの発生都度互いにメッセージを送る方式)で、アジア圏を中心に利用されている国際標準であるebXML MSなど、複数のプロトコルが存在します。
■レガシーEDI
・通信手段に固定電話回線を用いるデータ交換の仕組み
・プロトコルはJCA手順、全銀手順、FAXなど
■インターネットEDI(Web-EDI)
・通信手段はインターネット
・プロトコルはJX手順、EDIINT AS2、OFTP2、ebXML MS、SFTP、全銀協標準通信プロトコル
表にすると以下の通りです。
EDIの分類2. 個別か標準か
また、企業対企業で個別に実装するか、業界標準を使用するか、という観点でも分類することができます。
■個別EDI
・取引する企業間で個別に開発するEDIのこと
・取引先が少なく、きめ細かなルールを設定したいというニーズのある企業向き
■標準EDI
・フォーマットなどのルールを標準化し、複数の取引先でも共通して利用できる種類のEDI
・業界単位での標準EDIや、中小企業向けの標準EDIなど
■業界VAN(Value Added Network)
・標準EDIの一形態で、特定業界の仕様に合わせて標準化したEDIシステム
・取引先コードや商品コードなど、業界共通で使える仕様を取り入れて標準化している
ここに記載した業界VANは具体的には以下のものが挙げられます。
・酒類・加工食品業界では食品流通VANサービス(FINET)
・家庭用品業界・食品軽包装業界のハウネット
・お菓子業界ではeお菓子ネット
・医薬品業界ではJD-NET
・医療機器業界ではMD-NET
業界VANは、最初から業界内の複数企業と接続することを前提としているため、標準化された通信手順やデータ構造でデータ交換ができることが大きな特徴です。一方、業界 VAN は業界ごとに構築されたため、利用者が限定されること、共同利用によるコストメリットが十分に出ず利用者負担は専用 EDI と差がないこと、などの課題があります。
EDIの課題1. 2024年問題
冒頭で触れた通り、EDIは「2024年問題」という問題を抱えています。この問題は「電話回線を使用しているレガシーEDIが2024年以降使用できなくなる」という非常に大きな問題です。
詳細を以下に記載します。
電話やFAX、そしてレガシーEDIの回線として利用しているアナログ回線やデジタル回線(INSネット/ISDN)の心臓部となる公衆交換電話網(PSTN)を、2024年1月より1年をかけて順次IP網へ移行する計画があります。
ただ、IP網への移行を機に、利用者が低減した「INSネット ディジタル通信モード」についても2024年1月でサービスを終了することが発表されています。
ここで問題となっているのが移行後のIP網の通信速度です。移行後のIP網では、データ遅延の問題によりこれまでのようなEDI取引が実現できないことがわかっています。
これにより、長年INSネットをインフラとしてEDI取引を行ってきた国内の産業界および金融業界では、EDIシステムの刷新が余儀なくされています。これがEDIの「2024年問題」です。
EDIの課題2. Web-EDIサービスごとにフォーマットがバラバラ
「2024年問題」に対応するために、Web-EDIへ移行するのがもっともメジャーな選択肢といえるでしょう。
ではWeb-EDIに移行すれば万事解決か、というと、必ずしもそうではありません。一つの課題として、Web-EDIシステムごとに入力・出力フォーマットがバラバラという問題があります。複数の業界と取引のある小売店などは、業界ごとの業界VANに接続する必要がありますし、そもそも業界VANに未加入の卸売業者もあるでしょう。取引先が異なるWeb-EDIを導入した場合、それぞれに合わせたファイルを生成・取込しなければなりません。業界横断で仕様統一に向けた動きもあるようですが、現在は過渡期にあるようです。冒頭で述べさせて頂いたとある企業様からのご要望も、このWeb-EDI用のデータ変換についてでした。
さいごに
データクレンジングツール『Masstery』は、世の中にあるデータをきれいにすることで、業務効率を改善し、人間が本当に注力すべき仕事に専念できるようにしたい、という思いから生まれたサービスです。
複数のWeb-EDIシステムを使用しており、フォーマットの変換が大変など、EDIについての疑問点やお困りごとがありましたら、ぜひお気軽にMassteryのお問い合わせフォームにご連絡ください!
私達がご提供している製品「Masstery(マスタリー)」は、
多くの人手が必要だったデータ整備を自動化する画期的なデータクレンジングツールです。フォーマットの統一、カテゴリーの自動分類、独自の変換、差分情報の取得等、データ整備に必要なあらゆる機能をご提供しています。
Masstery 公式サイト:https://mstr.forcia.com/(データクレンジング)
フォルシア株式会社 企業サイト:https://www.forcia.com/ (高速検索)