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金沢で出会った恐竜と30㌔の氷の真夏日

金沢で恐竜と出会った。意外なところに隠れていた。

近江町市場の夏といえば、長さ60センチ、重さ約30キロの氷の柱だ。この氷のおかげで、遠くから冷えた空気を感じられるだけではなく、季節を超えて冬の恋しさまで現れる。このデカい氷は「冷たい」と分かっていても試しに触りたくなる。不思議な魔法をかけられたように離れられなくなる。

氷の柱

ある夜、近江町を歩いていると、突如現れたのは、氷の柱だと思いきや、

え?えぇーー?なんだこれ?
もしかしたら、夢の中? え?

なんと、現れたのは、恐竜

しかも、その恐竜は、どこか悲しげな表情で、大きな氷の中に閉じ込められていた。真夏の炎天下、気温は30度を超えアスファルトが照り返す中、この光景はあまりにも不自然で、そしてどこか切なさを感じさせた。

一体、この恐竜は何者なのか?なぜ氷の中に閉じ込められているのか?
そんな疑問が頭をよぎり、恐竜に近づいてみた。恐竜の瞳は、僕の心の奥底を見透かしているようだ。助けを求めているかと思ったけど、どうやらそうではない。過去の記憶を僕に伝えているようなのだ。子供の頃に恐竜のことを調べたりおもちゃで遊んだりしていたことを、ふと思い出した。

恐竜の体には、かすかな光があった。その光を頼りに、僕は恐竜の記憶を辿り始めた。それは、太古の地球。緑豊かな大自然の中で、恐竜たちは自由に走り回っていた。しかし、ある日突如として現れた巨大な隕石が、恐竜たちの楽園を破壊し、多くの仲間たちが命を落としてしまったところまで体験できたようだ。

生き残った恐竜たちは、必死に新しい住処を探し求めた。

そして
たどり着いたのが
現在の金沢の場所だった。

しかし、人間たちが現れ、街はどんどん発展していって、恐竜たちの居場所はますます狭まってしまった。絶望の中で、恐竜たちは自ら氷の中に閉じこもり、永遠の眠りについたのだった。

恐竜の記憶を全て知った僕は、何かしてあげたいという気持ちに駆られた夜。そして、ついに氷を砕く日が来たのだ。砕かれた氷の中から現れた恐竜は、僕に向かって大きく口を開けて、喜びの鳴き声をあげた。

恐竜は、再び自由の身となり、金沢の街を飛び立った。だけど、恐竜はすぐにどこかへ消えてしまい、二度と姿を見せることはなかった。それでも、僕は恐竜との出会いを決して忘れることはない。

命の大切さ、自然との共存、過去の記憶を大切にすることを改めて感じた。そして、この夜の出会いで鳥肌になった。心まで冷えた。

恐竜と僕の物語。

おしまい

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マッシ|エッセイスト・ライター
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