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思い出の扉

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2024年9月の記事一覧

【詩】幼い日

【詩】幼い日

月の作る影の中に虫が鳴く
虫の鳴く声はススキを揺らし
ススキが揺れると声は止む

声なき夜のしじまの中に
小さな妖怪が潜んでは
時間とともに成長する

長い長い時間の中で
巨大に育った妖怪たちが
じっとこちらを窺っている

今にも襲ってきそうな気配の中
幼いぼくの直感は
必死に涙を呼んでいる

寂しい線路脇の小径だった
遠くかすかに浮かぶ街の灯りだけが
あの夜のぼくの正義の味方だった

【詩】ローカルルール

【詩】ローカルルール

広場の隅からその家までは
公式では本塁から三塁位の
距離しかなかっただだろう。
だけどぼくたちのボールは
なかなかその家に届かない。
だから学校から帰ると毎日
右利きのヤツは力まかせに
左利きのヤツは窮屈そうに
重たいバットを振りまわし
左方向のその家に放り込む
努力をしていたものだった。
なぜならそこがぼくたちの
ホームランだったからです。