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新谷雅老
2024年6月18日 17:20
大きく開いた空の下を夏、きみと二人で歩いていく静かな風は汗をぬぐって蝉の輝きは時を止める遠くで子供達が野球をやっているカビの生えた思い出が日にさらされ今にも飛び出しそうなぼくの幼さをきみは笑って見つめているそうだこの夏、海へ行こう忘れてきたふるさとの海へきみと二人で子供になって忘れてきたふるさとの海へ お祭りの夜、二人で浴衣着て いっしょに金魚すくいやろうよ幼い
2024年6月2日 13:00
梅雨六月の思い出のひとつに夜下駄の音がある。雨が上がった夜更けの街を二つばかりの音影がカラコロカラコロ過ぎて行く。何をしゃべっているのだろう、夜下駄の響く合間から、忍び笑いが漏れてくる。ぼくはたばこを吹かしながら、窓から聞こえる夜下駄の音を煙とともに追っていた。
2024年6月6日 14:30
きっとあいつは走ってくる。砂煙を上げ滑り込んでくる。ベンチはヒッティングからスクイズサインに切替えた。ベース上で土を払っているあいつの目に覚悟が見えた。一点ビハインドの九回の裏あいつを生還させなければこの一戦が引退試合になる。優勝なんて望んでないけど出来ることなら一試合でも多く野球をしたい。これがチームみんなの思いなのだ。だからあいつは走ってくる。砂煙を上げ滑り込
2024年6月10日 20:28
小さな小さな雨が降る日晴れますようにと祈りながら富士の遊覧船に乗り込んでひとり水面を見つめているひとり見つめる水面の上に小さな雨が落ちるたび船は心を持ったごとく想い出ひとつに揺れていく想い出ひとつに揺れている遊覧船のデッキの上でぼくは雨に濡れながら想い出ひとつに酔っていく想い出ひとつに酔っているぼくを乗せた遊覧船は小さな雨に揺れながら大きな水面を進んでいく