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映画『ナポレオン』の感想 ホアキン・フェニックスの神演技に圧巻された

 12月1日に公開された映画『ナポレオン』を見てきました。試写会後の評価は高く、「今年発表された映画で、一番の名作になるのではないか?」と期待して見に行きました。


映画『ナポレオン』あらすじ

 1789年にフランス革命が勃発。マリー・アントワネットの処刑から物語が始まる。ナポレオンは軍人として数々の戦争を勝利に導き、フランス皇帝の地位につき絶頂期を迎える。ただ、それもつかの間。敗戦が続くようになり、国民の信頼を失っていく。

主演・ホアキン・フェニックスの神演技

 主人公・ナポレオンを演じたのはホアキン・フェニックス。『ジョーカー(2019年)』で狂気にあふれた怪演が評価され「アカデミー賞主演男優賞」を獲得しています。

ホアキン・フェニックスが演じたジョーカー

 今回も演技力が凄まじい…ナポレオンが憑依しているのではないかと思わされました。剣の持ち方、号令のかけ方、ナポレオンの妻・ジョゼフィーヌへの愛情表現…「神は細部に宿る」という言葉があるように、所作の全てにこだわりが感じられました。

 この作品の見どころは何といっても妻との愛憎劇。ナポレオンはジョゼフィーヌのことを世界中の何よりも愛しています。それが見ていてこちらにも伝わってくるのです。


ナポレオンの妻 ジョゼフィーヌ

 作中でエジプト遠征中に、愛妻が浮気をしていることを知ります。すると敵との戦闘はお構いなしに自国へ単身帰還してしまいます。このときの怒り狂った表情が素晴らしい。愛している嫁から裏切られた絶望と、不倫相手への怒りが同時に顔に現れています。そこで夫婦喧嘩を始めるのですが、冷静になり、イチャコラを始めます。そこの喜怒哀楽の表現が自然すぎて、演技 を演技と感じさせません。

 ジョゼフィーヌと子供ができず、やむを得ず離婚という道を二人は選択します。言葉は全く出さずともナポレオンの所作から「絶対に別れたくない、愛している妻となぜ別れなければいけないのか」という発散しようのない気持ちがあふれてきています。

 『セブン(1995年米)』のブラッド・ピット以来に「この人の演技は極まっている」と感じました。今年のアカデミー賞の主演男優賞に彼の名前がノミネートされるのはもはや必然でしょう。

圧巻の戦争シーン

 作中で描かれた戦いがこちら

  • トゥーロンの戦い

  • アウステルリッツの戦い★

  • ロシア遠征

  • ワーテルローの戦い

 僕が特にすごかったと思ったのが★を付けたアウステルリッツの戦い。フランスがオーストリアとロシアの連合軍との戦争です。史実とどれくらい一致しているか不明ですが、戦闘シーンの臨場感は戦場そのもの。

 作戦は相手国に地の利を生かしていると思わせ、自軍まで誘導する。攻めてきたタイミングで、フランス軍はナポレオンが得意とする大砲を打ちまくるのです。それが敵にあたるかどうかは関係ありません。場所は氷が張った湖の上。砲撃が落ちれば、氷が割れ、兵士が沈んでいくのです。気が付いた瞬間はもう遅い、逃げ場を失った敵兵はそのまま極寒の湖に落ちていくのです。

 戦略がむごすぎる…砲弾を当てずに確実に命を奪っていく。これは英雄なのか、悪魔なのか…ただフランスの発展のためには勝つしかない。勝利のためには鬼になったナポレオンは人ならざるものに感じました。

ストーリーの流れがわかりにくい箇所も…

 ストーリーの組み立ては史実通りで、ナポレオンとジョゼフィーヌの愛を中心に進んでいきます。
 ただ、歴史がダイジェストみたいにポイント、ポイントで物語が進んでいくことも多いです。そのため、「この場面は〇〇だから、きっと××のシーンだろう」と推測しなくてはいけません。むしろ、歴史を知らないと「なんで今こうなっているんだ?」と疑問が浮かんでくると思います。
 これを「構成がわかりにくい作品だ」とバッサリ切り捨てるのは簡単です。しかし、海外映画は見るのが非常に難しいということを念頭に入れる必要があると思います。
 製作をしているのは外国人。日本で映画を見るほとんどは日本人だと思います。そこで生じるのは海外と国内ではそもそもの背景が違うということです。生まれも育ちも違えば、常識だって違います。
 海外の人たちにとってはナポレオンの歴史は知ってて当たり前なのかもしれません。街を歩いている日本人に「ナポレオンってどういう人?」と聞いて簡潔に答えられる人はどのくらいいるでしょうか?逆に海外の人に「織田信長ってなにした人?」と聞いて何人が回答できるのか。
 洋画を楽しむには、海外の教養を少しでも知っておく必要があると思います。だからしっかり勉強をしないと、理解できず難しいと感じてしまうと思います。

狂愛と真っ向勝負した作品

 ナポレオンがジョゼフィーヌに対しての愛情は傍から見たら狂っていると感じました。その愛を真正面からぶつかり、キレイなところも、汚いところも、ありのままに描いているのが今作の特徴です。
 中にはキレイな恋愛に偏りすぎた作品も多くあります。果たして、それはリアリティのある作品なんだろうかと僕は思います。
 ヒトを描いた作品なら、陰と陽、すべてをさらけ出して勝負して、リアルが生まれるのではないかと思います。

作品情報

監督・リドリー・スコット
主演・ホアキン・フェニックス
脚本・デヴィッド・スカルパ、リドリー・スコット
配給・Apple TV+/ソニー・ピクチャーズ

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