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月の光は街灯のように
昨日の夜。
テレビを横目に夕飯を食べていた時のこと。
ふと、照明がないはずの場所から、電球のような明るい光を感じた。
そちらに目をやると…
それは月の光だった。
「あ、月、きれい。」
私は、明るい月の存在に気がつくといつも、
どこにいても、一人の時でも関係なく
必ず小声でこう呟いてしまう。
ちなみに誰かがいたら
「見て!月、きれい。」
と言っていると思う。無意識だけれど、思い返せば、そんな気がする。
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ひとまずカメラに収めなければ!と撮ったけれど、後から見ると私が撮る写真では、どうしてもこの美しさが伝わりにくい。
「もっと撮るのが上手だったら、この美しさ、明るさ、喜びが色々な人と共有できるのに…。」
と、悔しい気持ちでいっぱいだ。
だからせめて、言葉で残しておこうと思う。
部屋の電気を消したら、それはそれは本当に明るかった。
しばらく見つめていると、眩しいと感じるほどに。
月の光だけで、テーブルや椅子、テレビのリモコンやコップなど、シルエットだけでなく、実際に色まで判別できるほどに明るく照らされていた。
白に近い色で、電球とは違う自然光の優しさがあって、
なんだか家の中が、神秘的な光に包まれているかのようだった。
そういえば、月がきれいな夜があったな。
月の光の明るさに感動した日があったな。
…と、いつかこの記録を見て思い出せるように。
そして、明るく美しい月を見るたびに必ず思い出す事がひとつ。
グリム童話の『ヘンゼルとグレーテル』だ。
森に置き去りにされてしまった兄妹が、夜、月の光を頼りに森の中を歩く描写があったと思う。
私はいつも、月の光の明るさをみて
「この程度の明るさなら、森の中を歩けるだろうか」
と考えてしまう。
キャンプなどで夜を山の中で過ごしたことはあるけれど、その時は照明の他にも、焚き火やたくさんのランタンなどがあり、明るい夜だった。
そして暗い森の中に1人で行かないよう注意されていたので、
明るい月が夜空に浮かぶ夜に、森の中を灯りを持たずに歩いた経験がない。
そのため、夜の森にて、
“月の光だけでどこまで世界が見えるものなのか”
昔からずっと興味があったのである。
一度小学生の頃、月が綺麗に光る夜に、家の外に出て見に行ったことがある。
しかし当然のことながら、街灯の光で道が照らされており、夜の道は明るくはっきりと見える。月の光だけで照らされた風景を見ることはできなかった。
普段の生活圏内では当然だが、どこに行っても街灯がある。
夜に街灯のない場所へ行く機会もなかなかない。
だからこそ実際は見たことがないけれど、
きっと月の光だけで十分に森の中を歩けるのだろうな。
まるで夜に光る街灯のようだ。
と思えるほどに眩しい光だった。
夜、街灯のない場所で。
月と星の光だけで見える世界。
もしかしたら想像以上に真っ暗かもしれないし
想像以上に明るいのかもしれない。
…どちらなのだろう。
いつか見たい景色の一つである。
2023.10.26