『エンド・オブ・ライフ』
これも一生本棚入り。
『エンド・オブ・ライフ』佐々涼子
「死ぬ前に家族と潮干狩りに行きたい…」患者の最期の望みを献身的に叶えていく医師と看護師たち。最期を迎える人と、そこに寄り添う人たちの姿を通して、終末期のあり方を考えるノンフィクション。(Amazonより)
ちょうど読んだ日が、大袈裟に言うと「死の近さ」みたいなものに人生で一番怖くなっていたときだから、なおさら響いたものがある。
南杏子を始め、終末期医療や在宅医療関連の作品は好きだったけど、この本はノンフィクションてこともあり、影の部分のインパクトが強烈だった。人生の最期に向かう輝きだけではなく、綺麗事ではない、現実の虚しさややるせなさ、悔しさ、周囲の人との不和や折り合いのつかなさなど、清濁しっかり際立たせたエピソードが、より死というものを身近にしてくれた気がする。身体が動かなくなり、痛みに耐えられなくなり、配偶者とも離婚し、自殺を選択する人なんて、それがフィクションではなくしっかり存在していたことを考えると苦しさがこみ上げてくる。
医療が進歩し、選択肢が増え、諦めの限界値までの距離が長くなったことにより、どこまで頑張るか、あがくか、どんな最期を希望するか、在宅でどう過ごすかなど、逆に本人や家族を悩ませることが増えてきている。
そんな中でも、「たいていは生きてきたように死ぬ」という考えも含め、作中ではひとつの答えを見出している。
自分の好きなように過ごし、自分の好きな人と、身体の調子をを見ながら、『よし、行くぞ』と言って、好きなものを食べて、好きな場所に出かける。
情報量が多く、現実として考えなきゃいけない部分もたくさんあり、読み終わってもうまく咀嚼できていない。これから年取ったり、誰かと一緒になったり、家族が増えたり、家族が減ったりする度に受け取り方が違ってくると思うから、傍に置いておきたい一冊。