『パリの国連で夢を食う。』
この年齢、このタイミングで読めてよかった。
『パリの国連で夢を食う。』川内有緒
チャンスを掴んだのは31歳の時。2年前に応募した国連から突然書類審査に合格との知らせが舞い込んだ。2000倍の倍率を勝ち抜き、いざパリへ。世界一のお役所のガチガチな官僚機構とカオスな組織運営にビックリしながら、世界中から集まる野性味あふれる愉快な同僚達と、個性的な生き方をする友人らに囲まれて過ごした5年半の痛快パリ滞在記。(Amazonより)
『パリでメシを食う。』で出会い、その決して大げさではなく、特別に見える人それぞれの普通を普通なままに描写する文章にハマってしまった。
今作は、作者のインタビュアーとしての魅力が開花した始まりの物語。
今作は国連という選ばれた人たちの、大勢から羨まれる世界が舞台だけれども、そこにいる人たちを、ひとりひとりの人間として正対して向き合い、普遍的かつ最短距離で各々の欠点を含む魅力が伝わってきて、しっかりと人間臭さを感じられる。
表れていない努力が凄まじいのは大前提として、飄々と流れと自身の気持ちに素直に、世界を股にかける著者の姿を見ていると、三十路半ばとしては、なんらか行動や生活を変えたくなるし、満足している(つもりかもな)ここからのルートで本当にいいのかなって、いい意味で迷いを抱かせてくれる。
おそらく爺さんになるまでは、ずっと心に引っかかりを残してくれるであろう作品。それからもずっとかもしれないけど。