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孤独な夜の飼い慣らし方

序盤になかなか盛り上がりの欠けるタイプの映画が結構な確率で存在する。それが映画館であろうと、自宅のリビングルームであろうと場所を選ばず、凶悪な睡魔との戦いがはじまり、自分の勝率は五分五分よりも少し劣勢がいいところ。映画館でそれをしてしまった場合の背徳感さえ多少はあれど、自宅の場合はさして気に留めるほどのことでもない。
そう、何事も掴みが肝心という話ではなくて。
ここで逆転の発想である。
つまりはどうしても眠りたくても眠れない時に、そんな序盤の盛り上がらない映画を見ることによって、逆に自分を寝かしつけることが出来るのではないか、と考えた。

以降僕はどうしても早く眠りたい時、それでいて寝付けない時に、適当に映画を流すことにしている。音量は少し控え目。初めから目を閉じている時もあるし、なんとなく目で画面を追いかけている時もある。意外にホラーやサスペンス的なものの方が、コメディタッチなものよりも、心地よく僕を落としてくれる。言語は、日本語、英語以外のものだと調子が良い。
それらはまるで自分を寝かしつける呪文のように聞こえてくるからあら不思議。
高校の漢文の授業の時、教室の後ろの座席から見えた景色を思い出す。圧倒的に理解のできないものを目の前に差し出されると、人は眠くなる。
そして、最近のテレビのいいところは、朝目が覚めた時に、気づいたら電源まで何事もなかったかのように消えているというところ。
後始末まで完璧なのである。
というわけで、それでは私のお勧め、心地よく眠れる映画TOP10をここに発表します!なんて映画を真剣に作ってる方々に失礼極まりない話がしたいのではなく(むしろ好きです応援してます)、


孤独な夜の飼い慣らし方

について。

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卑怯に続いて、孤独、そして睡眠不足は多くの人が最も耐え難いと思っている。
つまりは、孤独×睡眠不足、この2つが掛け合わされた最恐タッグこと「孤独な夜」は人類の天敵なのである。



音楽を聴こう

音楽のいいところは、いつ何時でも隣に寄り添ってくれるところにあると思う。背中を押して欲しい時も、何かを忘れたい時も、ぐっすり寝付きたい時も、音楽は一番の友人のようにあなたの隣にいる。
ちなみにこれは自分のSpotifyのおすすめ睡眠プレイリスト(冬に作ったからWinter Breakっていうタイトルついてますけど、基本的にはスヤスヤ推奨)。

勿論TOO FASTなPUNKだって全然ありよりのあり。大事なのはストレスを溜めないこと。好きなものを好きなだけ聴いたらいい。上にもこっそり忍ばせているけれども、自分の曲も誰かの眠れぬ夜の子守唄のように(そんなに優しいものばかりではないけれど)寄り添っていてくれたら嬉しいし、それは冥利に尽きる。そしてこれからもそんな曲を書きたいと思う。



読書をしよう

暗がりのいいところは、見え過ぎないというところ。
何事もはっきりと、明らかになった方が良い、なんて考えは、世界をパキッっとした色合いに仕上げて、目と一緒に心も疲れてしまう。淡いもの、揺らぐもの、儚いもの、そんなものが夜には似合う。

すべて真夜中の恋人たち/川上未映子

恋はする、とか、したいのではなく、落ちるという表現(fall in love)がされるのは、この本を読んだ後だと何だかしっくりきたところがある。人は運命に抗えなくとも、どんな自分にベットするのか、選択は自由だ。自分の最高責任者は自分に他ならないのである。
もちろん漫画だって構わないし、写真集だっていいかもしれない。心の孤独が少しでも解消されたら万事OKなのである。


ラジオを聴こう

日本中どこにいても好きな局ラジオがスマホで聴けるようになった今。
北海道の番組に出て東京からメッセージがくることもあるし、大阪の番組に出て、沖縄からメッセージが届くことなんてこともある。

ライブでクタクタになったあとも、次の目的地に向けてバンドワゴンは移動する。車内ではだいたいラジオが流れていた。時折知らない曲が流れてきて、そのフレーズが頭の中でリフレインして鳴り止まなかった。曲の最後に向かうにつれて、タイトルを紹介するDJの声を聞き逃さないように注意を払っていた。そんなこと御構い無しにチャンネルを変えるドライバー。僕はぼんやりと外を眺めながら、結果流れてきた深夜の馬鹿力に笑いを堪えきれなかった。

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耳から入る情報だけで完結しているということは、ベッドに入って、後は目を瞑るだけ、という状況と非常に相性がいい。楽しい会話で眠りにつくのは、何だか楽しい夢でも見れそうな気もする。
ただ、深夜帯の芸人さんたちのラジオは本気で笑かしにかかってくるので、目が覚めるっちゃ覚めるけれど、まあまあそれも良きかな。


買い物をしよう

しばらくの間自宅に引きこもっていたので、久しぶりに街に出ると、外の世界が眩しく見えて、まるで自分がモグラのように感じた。誰に見られるでもなかったので春服を買う必要もなかったし、出かけるわけでもないので靴を買うこともなかった。それでも自分を何か奮い立たせる意味で、買い物に行くということだけは決めて玄関の重たい扉を開けた。
モグラは店先で目に留まった、サングラスを手にとってかけてみた。近くにいた店員にお似合いですねと言われて、調子に乗って買ってみた。店の外まで見送りに出てきてくれた店員に軽く頭を下げながら、軽い足取り、何だか少し背中に羽根が生えたような気分だった。
結果としてそのサングラスをかけて出かけたことはまだ一度もないし、家の鏡で見たらちょっと気取ったような感じがし過ぎて照れくさかったので、この先もないかもしれない。

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次の日、インターホンが鳴り、モニターから運送会社の制服が見えたので鍵を開けて、段ボールを受け取った。全く心当たりがないが、確かに自分の名前が書いてある。そういえば昨日の夜眠れなくて、夜の市場をサーフィンしたような、しないような。
深夜の買い物は危険だ。ただ、だからこそのドキドキもあるような、ないような。


お酒を飲もう

仕事がうまく行かないこともあるだろうし、家族や友人とソリが合わないこともあるだろう。恋人がなぜ機嫌が悪いのかわからない。ねえ、それって全部わたしのせい?
人に傷つけられた一言は読んで字のごとく、跡が残って、思い出すたびに沁みる、軋む。楽しいことの記憶の貯金はいつでも自分のタイミングで引き出すことができるのに、それ以外の記憶は目の荒いザルを使ってのどんぶり勘定、不意に、我慢できずに溢れてしまう。

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賢い方が良いに決まっている。けれど、それ以上に幸せな方が良いに決まっている。
忘れるという事は、不幸せへの梯子を外していくことにもなり得る。
そして、お酒はその忘れるという行為に、贅沢としての現実逃避に、そっと寄り添いながら誘ってくれる。
頼り過ぎには気をつけた方が良いけれど、寄りかかるくらいはしても良い。よね。


特に何もしない

無駄な抵抗をやめてみる。
返事などしてくれないかもしれないけれど。孤独な夜に寄り添ってみる。
両手を上げて、白旗を振って、夜の方に歩み寄る。
1日の終わりくらい、もう何かと、自分と、誰かと戦わなくていい。

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さあ孤独な夜を飼い慣らそう。
BIGMAMA 金井政人











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MasatoKanai
褒められても、貶されても、どのみち良く伸びるタイプです。

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