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同時代【エッセイ】六〇〇字 (ふろく)六〇〇字

TOP画像は、昨日の文学部中庭(同時刻14時頃の)風景(むろん当時は11月なので、大勢の学生がたむろしていた)。彼は、右端の木がある方面(自治会室)に革マル派に囲まれ連れ去られた。

 早大エクステンション「エッセイ教室」冬講座がスタート。最初のお題は、「同時代」。同時代と言えば、やはり『同時代ゲーム』の大江健三郎。あの小林秀雄に、「この作品を読み始めて2ページで投げ出した」と言わしめたほどに、難解。ご多分に漏れず、あっしなんざあ、半世紀たったいまでも積読のまま…。
 ちなみに、『同時代ゲーム』という表題について、大江健三郎は以下の様に述べている。
 「誤解をおそれずに言えば、共同の無意識の中の原点にあって、外側からみると歪んでいるけれども、中にいる者にとってみれば、過去も未来も含めて、全体が一挙に見渡し得るような、時間×空間のユニットを組み立てたかったわけです。僕は、小説を書くことは、同時代についてのそのようなゲームを組み立てることじゃないかと思う」(Wikipedia)
 と、宣うのだが、さらに、理解不能になった。汗
 「同時代」・・・いろいろ浮かんだ。(そのときが来たならば、私的には)国葬にふさわしい人No.1の長嶋茂雄との、同時代(引退して今年でちょうど50年)。いや、宇宙時間と比すれば短い地球の歴史の中で超短い「人類の歴史」。その中にあっては、ヒトすべてが「同時代」にいるのではないか。しかし、それなのに、ああ、それなのにだ。同時代のもの同士が愚かな戦争をやっている。なんて滑稽なことか。
 とも、思ったのだが、しかしやはり私にとっては、あのK嬢と生きた時代と、あの悲しい事件の話ではないか、と思うのである。
              ※
 朝日新聞の広告で見かけ、「この本なら、あの年の秋のことがわかる」と、手にする。
 早大文学部近くのみずほ銀行の場所に、今いうハンバーガーのイートインショップ、SEASONという店があった。銀座にマック一号店が出た翌年。四年バイトした。従業員は、社員三名と五十人余りの学生。コンパも年に何回か催してくれ、部活のような集まり。「金儲けクラブ」と呼んでいた。
 高校で病欠留年。現役受験、失敗。札幌で浪人中、同期卒で北大革マル派の友人と、大江の出版停止作『政治少年死す』の海賊版を出版。結局、三年遅れてなんとか早稲田に。
 が、入学早々、授業料値上反対闘争でロックアウト。浪人中で懲りたので、ノンポリを決め、逃げるように「部活」に励んでいた。
 そのころ店で知り合ったのが、教育のK。北の田舎者と東京のお嬢様。リードされたままで辿り着いた「現場」が、穴八幡宮。日は、早稲田祭最終日前夜の十一月五日。満月だった。
 そんな日の三日後。文学部で二年の川口大三郎君が虐殺された。バイト仲間が、中庭から自治会室に連れ去られる彼を目撃していた。
 五日後、大隈銅像の前に、私も含め約二千人が、自然発生的に集まった。徹夜を交え連日行われ、革マル派委員長等が逮捕された。
 伝える本は、『彼は早稲田で死んだ』。著者は、彼と同学年の樋田毅君。学生のリーダーとして、大けがを負いながらも闘っていた。

樋田毅『彼は早稲田で死んだ』(文藝春秋)

(ふろく)
 上掲の原稿は、過日書いた以下の内容を六〇〇字にリライトしたものになります。

 この二〇〇〇字の最終部に、こう書いている。
 この原稿の時系列は、樋田毅著『彼は早稲田で死んだ』(文芸春秋刊)で確認した。本著の所感は別の機会に譲るが、最終部が興味深い。元革マル派自治会副委員長、大岩圭之介氏へのインタビューである。彼は、事件の後、無期停学処分となった。が、その後アメリカ、カナダで再学し、現在は、別名で明治学院大学の名誉教授となっている。カナダ時代には、鶴見俊輔のゼミでも学んでいる。戸山高校の出身で、在学中も活動家。同じ戸山出身の私の級友であった渡辺明子と、年齢的に重なる。その彼女の自宅で仲間が集まり議論していたとき、言われた言葉を記憶している。「菊地、“まさ”までは読みは同じだけど、菊地昌典*とえらい違いね」と。菊地昌典の著作など読んだことはなかったので、「誰?それ」と言うと冷ややかに笑われた。そんないきがった女子も多い時代だった。(彼女は、早稲田の運動には関わらなかったが、その後中退する)。

*菊地昌典(きくち まさのり、1930年2月17日 - 1997年5月22日)は、日本のソ連研究者。東京大学名誉教授。一貫した社会主義者で、当初はスターリニストだったが、のちトロツキストになる。(Wikipedia)当時、『ロシア革命』(中央公論社〈中公新書〉 1967年)『人間変革の論理と実験』(筑摩書房 1971年)が読まれていた。
『彼は早稲田で死んだ』は大宅壮一賞を受賞。昨年、映画されている(現在上映中の劇場はない)。

予告編

公式サイト

(おまけ)
 また、怖いお姉さまのコラムを。
 当然なくなったんだろうと思っていたことが、また文春砲で暴かれた。これこそが「マスゴミ」ではないのか?

東京新聞朝刊(2024年1月22日)



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