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心の原風景(ゼロプレイス)

【私が対人支援者を目指す理由】
とあるコンビニエンスのレジの前で泣いている小学生の男の子がいました。

当時はビックリマンシールというお菓子の付録についていたシールが大流行していて、友達にコレクションを自慢することが一つのステータスになっていました。でも、買うためにお金が必要ですが、小学生なのでお小遣いがないと集めることは難しかったのです。男の子は、父親のタバコを買ったお釣りをお駄賃としてビックリマンシールを買って集め、レアシールが出ると大喜びして家で兄弟に見せびらかせたり、学校で友達に自慢していました。

その日も男の子はいつものように父親からタバコ代としてお金を受け取り、一目散にコンビニエンスストアでビックリマンシールを握りしめてレジに向かいました。コンビニエンスストアの店員に「セッター下さい」と言って、ビックリマンシールも一緒に会計しました。すると、店員からお金が足りないと言われたのです。いつもなら買えていたのですが、その日は以前よりも値段が高騰していたのです。

男の子はショックを受けながらビックリマンシールを指さして「コレ、あきらめます。」と小声で言うと、店員から「買わないなら、自分で元にあったところに戻して」とぶっきらぼうに言われて、二重のショックを受けて泣きながら商品を戻そうと振り返った時、目の前にサングラスをかけた大きな男の人が立っていました。あまりの恐怖に声を押し殺して涙だけ流していると、そのサングラスをかけた男性が何も言わずに不足分のお金を店員に渡し、「辛かったね。」とだけ言い残してコンビニエンスの自動ドアを通り、その場を立ち去ってしまいました。

あまりに突然のことに何が起きたのか分らず、呆然と立ち尽くしていると、店員から「さっきの人がそのお金を出してくれたから、そのまま持って帰っていいから。」と追い払われるように言われるがまま店の外へ出て行きました。

すると、30代のお姉さんが駆け寄って優しい口調で語りかけるようにこう言ってくれました。「よく聞いてね。あのサングラスをかけた男の人は、目が見えないのよ。”しょうがい”をもっているの。知っている人なの?」と。

男の子は、手で涙を拭いながら首を横に振ると、お姉さんが「そうなんだ。良かったね。私は今、”しょうがい”をもっている人を応援するために勉強しているんだ。今日のことはずっと忘れることができないと思う。」と笑顔で話して、離れていきました。

自分が恐れていた男の人が自分に一番寄り添ってくれていた。
家族や友達でもなく、見ず知らずの人が自分の味方だった。

目が見えない状態で泣いている自分にお金を出してくれた優しさ
目が見える店員がお金がないことがわかると自分を邪険扱いした冷たさ
そして、自分のために丁寧に話して教えてくれた支援の大切さ
男の子が手にしたのは、
タバコでもなく、ビックリマンシールでもなく、
もっともっと大切なことでした。

その日から数十年が過ぎ
その男の子は支援者として日々、仕事をしています。
そして、支援者の支援も目指して生きています。

あのサングラスの男性や支援しているお姉さんのように
目で見えないものを大切にできる人になるために・・・。

原風景・・・
今も色褪せることなく
ずっとその体験は男の子を支援し続けてくれています。