やられたらやり返す人が起こす怒りのループ
堺雅人さん主演のテレビドラマ「半沢直樹」今年話題沸騰のうちに終了した。
前回は2013年7月期に放送され、最終回の平均視聴率は、なんと平成1位となる42.2%をマークしたそうだ。今年は実に7年ぶりの新シリーズとなった。
今回放送の最終話の視聴率は30%を超えたらしい。前回放送の最終話での香川照之さんの土下座のシーンはとても印象的だった。今回の放送では、市川猿之助さんの「詫びろ!詫びろ!詫びろ!」が話題になった。
とにかく頭を下げさせたい物語だ。劇中での決め台詞である「倍返し」は、2013年の新語・流行語大賞の年間大賞にも選ばれている。
なぜ、放送するたびにこのドラマがこんなにも話題になるのか?そこには半沢の言葉通り「やられたらやり返す」という人間の感情を巧みに刺激していることが影響しているように思う。
しかし、現実世界ではそう簡単にやり返すことはできない。
■やられたらやり返したい
自分の意に反することをされたら、誰でも反発したくなるものだと思う。人はやられたらやり返したくなる。
やられたらやり返したくなる理由は、
・やり返さなければやられ損だから
・自分のプライドが許さない
・自分ではなく相手が間違っているから
・自分が正しいと主張したいから
・相手の間違いを正したいから
損得勘定、プライド、正義、怒りという感情が衝動的に自分を動かそうとする。怒りの大きさによって反撃の大きさは「倍返し」「100倍返し」と膨れ上がる。
反撃すれば確かにその場は気持ちがスッキリするかもしれない。一時的にでも怒りの感情を解消できるだろう。
しかし、相手がある以上それだけで済むはずもない。周りの目もあるし、人間関係に複雑に絡んでくることもある。
■やり返すことで得をするのか?
やり返した後、相手は本当にそれによってこちらが言ったことを理解したのだろうか?
理解するどころか、相手の心に火をつけてしまい事態が泥沼化する場合もある。
そこには、強い怒りの炎、恨みという感情が生まれしてしまう場合だってあるだろう。
やり返すということは、大げさに言えば復讐だ。復讐には復讐で返すという負のループが生まれてしまう。中東の戦争が終わらないのは正にそういうことだと思う。「目には目を歯には歯を」だ。
その場は飲み込んだとしても、時間が経つと怒りが大きくなることが往々にしてある。怒りに怒りで返すとその怒りはどんどん増幅されてしまう。
また、強い怒りを表す人を、周りはどういう目で見るだろうか?自分の感情をコントロールできない未熟な人間だと見られるかもしれない。
やり返して自分の気持ちは収まったとしても、自分に対する周りの評価が落ちてしまっては結局損をしてしまうことになる。
人は誰でも自分のことを認めて欲しいものだ。頭から否定されると反発したくなるのは人間の当然の反応だろう。
では、いったいどうすることが一番望ましいのか?
■即やり返さなくても解決できるのでは?
怒りの感情に任せて直ぐに反論することはやめて、相手の言うことを一旦受け止める。別に我慢しろと言っているわけではない。
相手の主張が正しいということではなく、一旦受け止めたということを相手に理解してもらうこと。
「あなたの言いたいことはわかります。」と一旦は理解を示す。これは「あなたの考えに従います」という意味ではない。
その後すぐに、
「ただ、…ではないですかね?」とそこで自分の主義主張を述べる。そうすると、ただの「売り言葉に買い言葉」のようにはならないはずだ。
これは、わたしが営業で経験しているのでよく分かる。クレーム対応は特にそうで、お客様の言われることが終わらないうちに自分の立場だけで反論してしまうと間違いなく相手の不満は増大する。
たとえ相手の間違いに気づいていても、グッと抑えて一旦は受ける。そこで初めて相手とのフラットな会話が成立することになる。
冷静さを欠くと事態は良い方向には進まない。
「あなたの言いたいことはわかります。」
このワンクッションが有るのと無いのとでは大きな違いがある。この一言だけで相手のプライドが一旦は担保されるからだ。
そして「しかし…」「だけど…」という言葉から始めることだけはやめておいた方がいい。これらは相手を頭から否定する言葉だから。
「あなたの言いたいことはわかります。」
「ただ、…ではないですかね?」
これは、わたしが営業の仕事で実際に色々な場面でお客様との会話の中で心掛けていた言い回しだ。
相手を好きとか嫌いとか、正しいとか間違っている、とかいう問題ではなく、人間関係のベースはお互いを尊重することだと思う。
そうでなければ、社会では周りとの良好な人間関係を維持することが難しくなってしまう。
これは気の短い人には、なかなか難しいことかもしれないが、やってみる価値はあると思う。
周りを尊重できれば、自分に対する周りの評価も上がり、結果的に巡り巡って自分が尊重されることにもなる。
■まとめ
自分の感情に任せて、その場で直ぐにやり返すことによって生まれるメリット・デメリットは何か?と冷静に考えてみよう。
お互いに「自分を認めて欲しい」という欲求だけではなく、相手を尊重する立場から自分の主義主張を述べる。そうすることで最終的に自分がどう「得をするのか」を考えてみる。
自分を引いて見ることができると、自分というものが冷静に見えて来ることがある。
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