[質問箱]最近いちばん知的啓発を受けたと思う本を教えてください。
うー、これは悩ましいです。
知的啓発にも色々あって「これは知らなかった」「こんなレトリックがあるんだ!」「この表現は秀逸!」「逆に思考が止まりそう」といった多彩さでそれらは僕に到来するのですが、天地がひっくり返るほどの啓発って、ちょっと思い出せないですね。
直近で良かったなと思うのは、石井正則さんの『13 ハンセン病療養所からの言葉』です。療養所の写真と当事者語りをつなぐ本なのですが、朴訥な感じで、決してアーティスティックでもないのだけれど(失礼ですね)、ハンセン病者の言葉や散文、詩を読んで、パッとページをめくった直後に目に飛び込んでくる写真(石井さん撮影)の「飾らない『なま』の衝撃」に心を揺さぶられました。
本も大事ですが、わたし的にはむしろ生活の中で知的触発を受けることの方がはるかに多いです。たとえばトイレを流した時に、昔と比べて今のトイレって「超超すくなーい水量」で綺麗に流せるじゃないですか。マジ凄ぇな、と私なんかは立ちすくんでしまいます。
ちょっと前のトイレは1回の洗浄でざっくり15リットルの水が流れていたのです。それが、2017年には約3リットルで流しきれちゃうトイレが製品化されています。ちょっと革新が凄すぎるな、と。
この驚きと同じ程度のものを本から感じることは、あまりないです。本より生活ですね。
けさ公開した拙稿もそうです。文献も大事。でも現地でしかわからないことがあります。生活や人、息づかいが聞こえるような視点が、驚きをもたらしてくれます。
[質問箱]
https://peing.net/ja/7d1eef526dd553?event=0
[けさ公開の拙稿]