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クリティカルチェーンは昔の話だが…当時話題となった学生症候群が今もプロジェクトを虫食み続けている

事業運営の柱にプロジェクトを据えている組織は日本にもたくさんあります。彼らにとって、プロジェクトはビジネスそのものです。私にプロジェクトマネジメント強化支援を依頼してくださるのはそんな組織なわけですが、仕組みやスキルに着目するだけでは片手落ちだということに、あるときふと気づきました。
 

私が着目したのはプロジェクトメンバーたちの「働き方」でした。

 
私はこう考えました。
 
プロジェクトマネージャが力を発揮するためには、それに相応しいメンバーたちの働き方があるはずだ。
彼らがマネジメントに無頓着な働き方を続けるうちは、たとえプロジェクトマネジメントを強化したところで結果はついてこないだろう。
 
プロジェクトでの働き方と聞いて思い出すのがクリティカルチェーンです。かなり昔の話になりますが、ゴールドラットの著書、赤い表紙の「クリティカルチェーン」や黄色い表紙の「ザ・ゴール」が話題になりました。
クリティカルチェーンの中で悪い例として挙がっていたのが「学生症候群」でした。プロジェクトが遅れる要因のひとつとして、メンバーたちの学生のような働き方を問題視していたのです。正確なところは忘れてしまいましたが、私が学生症候群として記憶しているのは次の3つです。
 
・   夏休みの宿題
・   食い散らかし
・   味の無くなったガム
 

[夏休みの宿題]
 子供のころ、夏休みも終盤になって、必死で宿題に取り組んでいたことを思い出します。「計画性がない」と父親に叱られたものです。
大学生になってからもその癖は変わりませんでした。遊びとバイトに明け暮れた夏休みが終わってから、ねじり鉢巻きで宿題をやりました。
 期限ギリギリにならないと着手しない。
やってみると予想より時間がかかったり、飛込みが入ったりで、結局期限に間に合わなくなる。
 今も職場で散見される光景です。
 
[食い散らかし]
 気の向くままにおもちゃを引っぱり出し、ちょっと遊んでは、また別のおもちゃを引っぱり出す。気付くとおもちゃが部屋中に散乱していた。子供のころはいつもこんな感じでした。「いい加減にしなさい」と母親によく叱られたものです。
学生になってからも、試験勉強は食い散らかしそのものでした。一夜漬けの日々の中で、山積みのテキストや友人から手に入れたノートのコピーに手当たり次第に手を出しました。結果はもちろん惨憺たるものでした。
 手当たり次第に目の前の仕事に手を付け、行き詰まると、また別の仕事に手をつける。段取り替えに無駄に時間を費やすだけで成果は上がらず、いつ終わるかの見当もつかない。
計画性皆無のこんな状況は、職場でも日常茶飯事です。
 
[味の無くなったガム]
 「味の無くなったガムをいつまでも噛み続けている」と言えばお分かりいただけるでしょう。子供のころ、味の無くなったガムを夕方までずっと噛んでいた思い出はないでしょうか。
学生時代、回答用紙のすべての回答欄を埋めた後も何度も問題用紙と回答欄を読み直し、終了の合図があるまで席を立つことはありませんでした。
これが受験生のあるべき姿として体に染み付き、働き出してからも抜けることはありません。
 自分に許された時間はすべて使いきらないと気が済まない。むしろ、すべて使いきるのが全力を尽くすことだと考えている。答えは出たにも関わらず、味の無くなったガムを噛み続けるがごとく時間をダラダラと無駄遣いして考え続けてしまう。
これは、技術系の職場では特に深刻です。技術者は無意識に “究極” を追い求めます。いったん完成した後も「さらに上があるのではないか」と愛で続けるのです。
 

クリティカルチェーンの議論の中で、これら3つの表現が実際に使われたかは定かではありません。何はともあれ、これらがプロジェクト納期を脅かす要因であることに違いありません。

● 目の前の業務に押され、ギリギリで業務に取り掛かったものの思うようには進まず、結果的に納期を踏み越えてしまった。
● 目の前の作業を食い散らかした結果、多くの作業が「着手したが終わっていない」状態になり、先の目途が立たない。
● 作業はいったん終わったにも関わらず、価値を生まないこだわりや未練に多くの時間やお金を無駄遣いしてしまう。
 

私の見立てでは、プロジェクトの現場はいまだに学生症候群であふれています。どれほど優秀なプロジェクトマネージャであっても、これをやられるとお手上げです。私たちはメンバーの働き方を改善しなければなりません。プロジェクトマネジメント云々の前に、足元を固めなければならないのです。
地味ですが、とても大切なことです。
 

ひとつ、おまけです。


 
学生症候群の3つの中でも「食い散らかし」は特にプロジェクトマネージャを苦しめます。なぜなら、これをやられると、プロジェクトの実態を把握できないからです。
 
進捗会議の場で、プロジェクトマネージャはメンバーに対して「このタスクは終わりましたか?」と尋ねます。
食い散らかしのメンバーはこう答えます。

「手は付けたのですが、まだ終わっていません」

ほぼすべてのタスクで彼は同じように答えます。これでは進捗状況を把握できません。
食い散らかさずにシリーズ的にタスクを処理(先行タスクが終わってから次のタスクに着手する)していれば、こんなことにはなりません。
 
プロジェクトゴールを達成して美酒に酔いたいなら、私たちは学生気分でいてはいけません。


 
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