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【感想】Nintendo Switch『Afterlove EP』
インディーゲーム史に燦然と輝く名作『コーヒートーク』
今年1月にはNHKスペシャル『ゲーム×人類』でも紹介
インドネシア発の「コーヒートーク」は、カフェのバリスタとして客の悩みを聞きながら飲み物を提供するシンプルなゲームながら、優しさに満ちた世界観が若者たちの心をつかんだ。
クリエイターのモハメド・ファーミはその後『What Comes After』を世に放つが、続編となる『コーヒートーク エピソード2:ハイビスカス&バタフライ』のリリースを控えた2022年に早すぎる死を迎えてしまった。
『コーヒートーク トーキョー』も見届けてほしかったな。
本作『Afterlove EP』はファーミの遺志を継ぐ形で完成されたもの。
ファーミにとっては遺作となる。
いずれの作品にも共通するのは
アクション操作や謎解き要素を削ぎ落としたゲーム性の薄さ
会話を中心としたストーリーテリングによる物語性の高さ
『Afterlove EP』にもこの作風は受け継がれている。
指さばきとリズム感を求められる音ゲー要素はあるが、自分が何周か遊んで観測した限りだと結果はストーリー分岐に影響しなかった。
(敢えて何も操作せず全ミスしてみたが、その後の台詞に変化は起きず)
歯応えのある難易度を求める人は物足りなく感じるかもしれない。
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受け継がれているという点では、コーヒートークならぬコーヒーチャットというカフェが重要な舞台として登場。
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中盤にはバリスタ見習いとしてバイトする展開もあるが、今回の主人公は適性ゼロw
あの場面は思わずニヤリ。
本作のゲームシステムはいたってシンプル
• ゲームは日中、夜、睡眠の3つのセクションで構成される。それぞれのセクションで設けられたシンプルでわかりやすい選択肢に対するプレイヤーの決断によって、エンディングの可能性がいくつも生まれてストーリーが進む。
睡眠中は何も出来ないので、基本的には日中と夜に1個ずつ何かの行動をするのを繰り返す形でゲームを進める。
そこで誰かと会話をすることでストーリーが分岐していくのが肝。
『コーヒートーク』と同じくマルチエンディング。
しかも、主人公だけでなく各キャラにドラマが用意されている充実っぷり。
この辺りも『コーヒートーク』の流れを汲んでいる。
自分は1周目はコンプリート要素のチンタ(元恋人)との思い出を集めまくってしまったのだが、2周目からは原則誰かと会うようにしたところ本作の醍醐味を味わえた。
コンプリート要素に気を取られすぎない方が本作をより味わえると思います。
『What Comes After』が死後の世界に迷い込んでしまう話だったのに対して、本作は恋人が亡くなって現世に一人残された主人公が生きる目的を再び見つける話という対比も興味深い。
アプローチは異なれど両作ともに生への強いメッセージを感じる。
キャラクターがマスク姿で明確にコロナ禍が舞台だった『What Comes After』を経て「人と直接会って話すこと」の価値を改めて見つめ直したとも言えるのかもしれない。
サブ要素的に3人のキャラクターとの間で恋愛シミュレーション(最近はデート・シムと呼ぶらしい)があるのも面白かった。
サブ要素ではあるものの、実はその中でもさらに細かい分岐があってなかなか作り込まれている(計4周ほど遊びました)
ちなみに自分は途中まで恋愛シミュレーションだと気付かず「某キャラからやけに連絡来て呼び出されるけど何かの伏線なのかな?」と思っていた体たらく…
そりゃモテない人生だったわけだ…w
そういった恋愛要素があり、さらにキャラクターデザインは日本人にも馴染みやすいタッチのイラストなので、ゲームというよりは漫画を読んでいる感覚に近いかなと。
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イラストで視覚的にも楽しませつつ、ファーミの作家性である会話劇・物語を堪能できるように作られている。
バンドの再始動というメインストーリーだけでなくサブストーリーもたっぷり。
ゲーム性の低さは賛否割れそうですが、物語が好きな人なら楽しめると思います。
最後に、めちゃくちゃ些細な事だけど"gap moe"って(少なくともジャカルタでは)英語表現として定着してるんですねw
"shio ramen"や"shoyu ramen"もw