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【感想】Nintendo Switch『ストレイチルドレン』

moonと私

テレ東深夜でカルト的な人気を誇った番組『勇者ああああ』
ゲーム×お笑いを掲げてはいるもののコアなお笑い好きにしか刺さらないようなマニアックな企画ばかりをやってるザ・深夜番組だったが、たまに(?)真正面からゲームを取り扱うこともあった。

そんな中、2017年6月に番組内で紹介されたソフトが私を含む視聴者の心を掴む。
その名は『moon』

◆(2)《ゲーマーの異常な愛情》には若手芸人最強のゲーム愛芸人ヤマグチクエスト再び登場!王道RPGに飽き飽きした人に勧めたい超トリッキー&超難解謎解きRPG「moon」の魅力をプレゼン!

https://www.tv-tokyo.co.jp/broad_tvtokyo/program/detail/201706/24411_201706292535.html

当時の経緯はプレゼンを担当したヤマグチクエストが自ら書いている。

決して僕が一人で興奮していたわけではなく、2021年の配信イベントでメインに据えられるほどの反響があったそう。

番組の歴史の中でゲーマー視聴者の皆様からもっとも反響があったのが「moon」の企画です。

https://natalie.mu/owarai/news/453312

発売当時のキャッチコピーは

もう、勇者しない。

近年の作品なら

誰も死ななくていいやさしいRPG

を掲げた大ヒット作『UNDERTALE』を思い浮かべて頂くと良いかもしれない。

ちなみに『ストレイチルドレン』は『moon』以上に『UNDERTALE』と近いかも。

そもそも『moon』というゲームの何が画期的だったのか?
それについては下記の記事やポッドキャストが詳しい。

『勇者ああああ』が巻き起こした大反響がきっかけとなり、放送から2年後にはNintendo Switchへの移植が実現

私も買った。
Switchは『moon』をやるために買った。

さらに4年が経ち、あの奇跡のSwitch版発売が最後の打ち上げ花火だろうと誰もが思っていたある日、Nintendo Direct 2023.9.14で衝撃の発表が。

しかし残念ながら発売延期に。

まぁポケモン金銀世代の私はこれぐらい慣れっこであるw

そして2024年12月27日、遂に発売
『勇者ああああ』でmoonが紹介された日から7年半が経っていた。

良い点

『moon』の語り直し

まず、いきなり驚かされる、いや度肝を抜かれるのは『moon』のエンディングから地続きのような始まり方。
誰がどう見ても『moon』の世界(のなれの果て)がそこに広がっている。
(設定上は劇中の未発表RPGゲーム『ミカヅキ』の中ということらしい)

冒頭以外にも『moon』のモチーフを流用している箇所が多数。
ゲームのシステムにも『moon』の語り直しの側面を感じる。

そして、「Undertale」は同時に問題提起も行っている。“誰も死ななくていいやさしいRPG”というキャッチコピーの本作だが、すべてのモンスターを殺すGルートが存在するのはなぜか? それはやはり、プレイヤーの残虐性を認識させるためであろう。

https://jp.ign.com/undertale/16823/feature/

上記の『UNDERTALE』のレビューは『ストレイチルドレン』にも当てはまる。

本作は主人公が子供で敵キャラは大人
MCU版スパイダーマンで知られる映画監督のジョン・ワッツ的な世界観

明らかに大人にしか伝わらないメタフィクションやパロディの小ネタが満載で、

  • たたかう

  • ことば

の選択肢を与えることで「大人になったあなたはRPGをどう進めますか?」と問われる。
『moon』はゲームシステム上半ば強制的に不殺で進んだが、今作ではプレイヤーに選択肢が与えられているのが肝。

繰り返し登場する線路・レールのモチーフやオトナの国の描写はなかなか鋭利に現代社会を生きる大人を刺してくるw
コドモの国からオトナの国に繋がる場面は『魔法少女まどか☆マギカ』を思い出したり。

そういえば劇場版まどマギの新作ってどうなったんだろ?

ほろ苦いお話ではあるものの、ゲーム全体の試みとストーリーは良かったと思います。

敵の攻撃バリエーションが多彩

上で小ネタ満載と書いたが、敵の攻撃のバリエーションが多彩で飽きないのは嬉しい。
『スペースインベーダー』や『パックマン』のパロディゲーム楽しかったなぁw

台詞もパロディ満載で笑わせてくれる。
読んでるだけで楽しい。
あの辺りはさすがのラブデリック節である。
ブラックユーモアもあって、某オトナが青い鳥のさえずりで攻撃してくる皮肉は最高w
まぁ後半は笑えなくなるわけですが。

不満点

本作の不満点は大きく2つ

  • 難易度がなかなか高い

  • セーブシステムの設計が少々不親切

指さばきは求められなかった『moon』に比べると『ストレイチルドレン』は謎解きもアクションもなかなかにハード…
さらに「ことば」で敵(オトナ)を成仏させるのも結構ハードルが高い。
正しい順番でコマンドを入力しないといけない上に、そのヒントの与え方もハードなのである。

なので、上で「プレイヤーに進め方の選択肢が与えられている」と書いたけど、初見で「たたかう」を使わずに進めるのはほぼ不可能なんじゃないかと。
で、「たたかう」を選ぶ限りはアンチRPGどころか普通のRPGになっちゃうんですよね。
ゲームシステム的な斬新性は正直乏しかったかなと。

さらにセーブポイントでしかセーブできない往年のシステムが採用されているので、ゲームオーバーになったら大幅にやり直しになることも。
自分のような「2019年に15年ぶりにゲームに帰ってきました」みたいな人間はまぁ懐かしいですねこういうの的な感じだが、令和の親切設計ゲームに慣れた人たちは普通にブチギレ案件かもしれないw
まぁ実際問題アクション難易度が高い上にゲームオーバーで遠く離れたセーブポイントからやり直しは心を削られる。

『moon』の開発スタッフの新作という期待を鑑みると、普通にハードなアクションRPGに落ち着いちゃったのは少し残念かなぁ…
どうやら成仏ルートで真のエンディングに辿り着けるようなのだけど、あの難易度のアクションに再び挑むのは心が折れるw

ちなみにSNS上で報告が相次いでいるバグは自分は特に踏まなかった(と思う)

後半は不満点をつらつらと書いてしまいましたが、2017年6月の『勇者ああああ』から7年半かけて奇跡のようなドラマを見せてもらえたのは本当に良かったです。
『勇者ああああ』よ、永遠に。

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