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【感想】HBOドラマ『THE PENGUIN-ザ・ペンギン-』
映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』の感想はこちら↓
2年半前の鑑賞当時の感想ではありますが。
ぶっちゃけストーリーにはそこまでハマらなかったけど黒を徹底した映像は嫌いじゃなかったと記憶しています。
ただし3時間は長かったw
そんな『THE BATMAN-ザ・バットマン-』に出てきたペンギンを主役にしたスピンオフドラマが作られる。
第一報を聞いた時点では「ふーん」というテンションだった。
だって映画の中のペンギンは何というか小者としか思えない感じだったからw
少なくともバットマンの宿敵ではなかったし。
小悪党ですよね。
そんな奴を主役にして面白いドラマになるの?という疑問は正直あった。
『ザ・バットマン』では、ファルコーネのアジト「アイスバーグ・ラウンジ」のオーナーを務め、薬物取引の現場にも足を運ぶほど懸命に働いていたにもかかわらずカーマインからは見下され、バットマンたちには推理ミスで無駄に問い詰められるなど、悪役ながらかわいそうな役回りだったペンギン。
推理ミスwww
また個人的にちょうどApple TV+に加入してる時期だったこともあり、U-NEXTには浮気せずにApple TV+オリジナルのドラマをじっくり楽しむことに。
ところが、いざ『THE PENGUIN-ザ・ペンギン-』の放送・配信が始まったら異様なほど評判が良い。
話が違うじゃないか!と思った私は『Pachinko パチンコ』シーズン2と『窓際のスパイ』シーズン4を見届けた後に急いでU-NEXTに再加入w
で、見始めたらこれがまぁ評判通り面白い!
物語は映画のラストから直結で始まる。
演出上もそこをシームレスに感じさせる工夫が施されているそう。
少なくとも第1話の冒頭では、グリーグ・フレイザーとマット・リーヴスが作り上げたパレット、彼らの映像表現のスタイルを確実に再現することが非常に重要だと感じました。実際に、彼らが使用した機材について話を聞きました。それで、映画と同じレンズ、同じ機材を使用したんです。
序盤はペンギンの小者っぷりを堪能できるマフィア・ギャングもの。
ペンギンは口から出まかせのその場しのぎの嘘を重ねて右往左往していく。
まさに小者w
しかし、第4話辺りからペンギンに加えてソフィア(クリスティン・ミリオティ)も覚醒してきて様子が変わってくる。
支配と被支配の力関係が揺らぎ、主要キャラと思っていた人物が次々に退場。
誰が殺されるのか先の展開が読めなくなる極上の緊張感。
ここが一つドラマの引きになっている。
そう、本作は虐げられてきた者たちの物語
広義の復讐譚
個人的にはデヴィッド・フィンチャーの『ファイト・クラブ』や『ソーシャル・ネットワーク』を想起しながら観ていた。
特に後者は「王の座に上り詰めるも一番欲しかったものは手に入れられなかった」という結末に本作との類似性を感じる。
同じDCコミックス原作でバットマンのヴィランを主役に据えたトッド・フィリップス版『ジョーカー』もその系譜に連なるだろう。
その続編の『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』が興行的にも批評的にも厳しい結果になる一方、その系譜にさらに連なる『THE PENGUIN-ザ・ペンギン-』が大絶賛されているのは何とも皮肉っちゃ皮肉だ。
まぁただ個人的には『THE PENGUIN-ザ・ペンギン-』と比較するなら「虐げられてきた者が悪の頂点に上り詰める」過程を描いた作品という点で1作目の方だとは思う。
続編の方は単に同時期に劇場公開されていた以上の共通点は乏しいかなと。
女性キャラクターの圧倒的な存在感(特にホアキン・フェニックスを完全に食ってしまったレディー・ガガ)という共通点もあるけれど。
ちなみに私は『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』は前作超えの傑作とは言わないが普通に楽しみましたという感じでした。
ジョーカー フォリ・ア・ドゥ:続編はまさかのミュージカル仕立て。なるほど賛否両論という前評判も頷ける。純粋に前作の続きが見たかった人は厳しいだろうなw志の低い焼き直しではないが全て上手くいってるわけでもない。自分はストーリーの強さはTVシリーズに任せて映画は演出第一なのでまぁ。
— 林昌弘,Masahiro Hayashi (@masahiro884) October 13, 2024
弟の結婚式に出席するため関西に滞在してた時にT・ジョイ京都で観たんだよな。
『THE PENGUIN-ザ・ペンギン-』は最後にペンギンが勝つロジックが「抑圧されてきた者たちが立ち上がる」という二番手以下たちのドラマになっているのが良かった。
もちろん相手のソフィアもまた抑圧されてきた存在という背景がドラマを厚くする。
コリン・ファレルは今年は『シュガー』の演技も素晴らしかったし、そんな脂の乗った名優と張り合ったクリスティン・ミリオティも凄かった。
賞レース席巻の予感
もう一つ、ペンギンはソフィアに関する偽りのストーリーをゴッサムの市議に吹き込み、市議もそれを分かった上で乗る。
この暴力ではなくナラティブで勝つというのも非常に現代的。
大切なのは真実よりも信じたくなる物語…
(ここでの「現代的」は「最先端で今っぽくてカッコいい!」という意味ではなく「今の時代の現実社会を的確に批評している」という意味です。念のため)
このナラティブの話はちょうど3日前にフィナーレを迎えた『ディスクレーマー 夏の沈黙』で語られていたテーマと非常に近かったことも記しておきたい。
2024年下半期を代表する2作品が似たメッセージを放っていたシンクロニシティ
同日には松本人志が週刊文春への訴えを取り下げ、そのさらに数日前には米大統領選もあったわけで。
観客や批評家から絶賛される中、視聴者数も右肩上がりで有終の美を飾ったそうで。
発表によると、第8話の視聴者数は第1話から約50%増加。なお、第1話は総視聴者数が1,700万人に到達する勢いだという。また、HBOおよびMaxにおけるテレビシリーズの第1シーズンとして、「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」、「THE LAST OF US」に次いで最も視聴されたシリーズとなる記録を達成した。
早くもシーズン2の噂が。
既に製作発表されている映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』の第2弾もなかなかの宿題を抱えたわけだが、一番プレッシャーなのはスーパーマンの新作を撮っているジェームズ・ガンだろうw
切磋琢磨して「DCユニバースもDCエルスワールズも凄い!」となってほしい。