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【感想】テレ東 水ドラ25『晩餐ブルース』第1話

座組みを聞いて今期最も期待していたドラマが始まった。

  • プロデューサー:本間かなみ

  • 脚本:山西竜矢

このタッグでまず思い浮かぶのは2023年12月から2024年1月にかけて放送された『SHUT UP』

鋭利なほどの時代性を放送期間中に獲得していった稀代の連ドラとして自分もnoteに感想を書きました。

もう1年が経つのか…

ただ、今作はどうやら食・飯を扱ったドラマらしい。
となれば想起されるのは2023年放送の傑作『今夜すきやきだよ』

こちらも本間Pと山西竜矢のタッグ
ちなみに改めて調べたら第4-6,9-10話は『ナビアの砂漠』の山中瑶子監督が演出していたと知って驚く。

あんな凄い映画を撮ることになる人が演出していたとは。

映画といえば山西竜矢監督はちょうど短編『母と牛と』がオムニバス集の『Moirai モイライ』の中の1本として新宿武蔵野館で公開されたばかり。

これまたテレ東で『風のふく島』の第3話を演出した二宮健監督も名を連ねている。

二宮健監督は手塚治虫原作の『アポロの歌』も情報解禁されたばかり。

『今夜すきやきだよ』に話を戻そう。
あの作品と共鳴するものとしては、放送時期も近かったNHK夜ドラの『作りたい女と食べたい女』もあった。

これらの作品では女性同士の連帯が描かれてきたが、今作で描かれるのはそれと裏表にあるような男性同士のケア。
本間プロデューサーの狙いもそこにあるようだ。

小林:以前、このドラマのプロデューサーである本間かなみさんに『SHUT UP』(2023年/テレ東系)で取材したとき、「(同性愛ではない)男性同士がケアするようなドラマを作ってみたい」って言ってましたね。

https://jj-jj.net/lifestyle/176531/

ちなみに今やテレ東を代表するドラマの一つである『きのう何食べた?』は男性同士のケアとはまた違うので、意外とありそうで無かったドラマだと思う。

さて、そんなわけで第1話を早速観た。
まずいきなりヤマザキのまるごとソーセージを朝買ったのに夜遅くに残業しながら食べてるというアバンタイトルで掴まれる。

https://www.yamazakipan.co.jp/product/02/sausage.html

『ハルとアオのお弁当箱』で毎日お弁当を作っていた穏やかなアオ、いや井之脇海はどこに行ってしまったんだ…

あと、自社の看板商品があんな登場の仕方で山崎製パンは怒らないのだろうかw

そこから旧友との飲み会のシーンへ。
葵(草川拓弥)が自身の離婚を明かしたことから始まる耕助(金子大地)との一連の会話が素晴らしかった。

耕助「大丈夫?」
葵「え?」
耕助「大丈夫なのかなって」
葵「え?何?俺もしかして今同情されてる感じ?」
耕助「そんなんじゃないよ」
葵「じゃあ何だよ?言いたいことあるならはっきり言えよ」

『晩餐ブルース』第1話

いやはや実に男性的だ(苦笑)
自分も中高男子校だし大学も職場もなんだかんだで知人・友人は男性の方が多いからあの空気感はよく分かるw
プライドが邪魔するというか弱みを見せられないんですよね。
もしくはホモソーシャルの楽しい雰囲気を壊さないようにしてるというか。
そこで女性に癒やしを求めてきたのが歴史的に繰り返されてきた構造なのかなと。

他には終盤での先輩の台詞

「簡単に謝んなよ。ディレクターが弱腰でどうすんだ」

『晩餐ブルース』第1話

ちょうど公開中の映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』のロイ・コーン(ジェレミー・ストロング)のようなマッチョイズムを感じた。

1. 攻撃、攻撃、攻撃
2. 非を絶対に認めるな
3. 勝利を主張し続けろ

https://www.youtube.com/watch?v=0dDWZ1agmg0

あのジェレミー・ストロングは同じロイという名前でも『サクセッション/メディア王』のロイ・ケンダルとは全く異なる自信に満ち溢れた人物を完璧に演じてて凄かった。

そして今年度のアカデミー賞助演男優賞部門ではキーラン・カルキンとのロイ家兄弟体験が実現。

閑話休題
主人公である優太(井之脇海)は仕事で忙殺され心は死んでいる。
それを察知した耕助が家に呼んでカレーをふるまうことに。
美味しそうなカレーとポテトサラダが調理工程と共に画面に映るわけだが、フードスタイリストは名手・飯島奈美。
本作以外にも2025年1月は

  • 阿修羅のごとく

  • 劇映画 孤独のグルメ

とんでもない勢いで作品が世に出ているw

『敵』とかモノクロ映像なのに料理めちゃくちゃ美味そうだったw
もちろん今作の料理も外さない。
台詞で語りすぎない食事シーンの素晴らしさ。
食を通しての男性同士のケアという本作のテーマをしっかり支えていた。
期待に違わぬ良作誕生の予感である。

公式Xでレシピも公開中

トマトジュース使うのか!

ところで、このやや唐突にも見える「いきなり家に呼んで料理をふるまう」という展開は第2話で明かされる耕助の謎・秘密が関わるミステリーにもなっているようだ。
決して一方的なケアではなく、優太から耕助にも矢印が向くし、いずれ葵をそこに絡んでくるということなのかな。

『マイスモールランド』の川和田恵真監督が演出を務める回もあるそうで。

さらに、在日クルド人を描き話題を呼んだ映画「マイスモールランド」(2022年)を手掛け、第72回ベルリン国際映画祭でアムネスティ国際映画賞特別表彰、第 27 回 新藤兼人賞で銀賞を受賞した川和田恵真。

https://www.tv-tokyo.co.jp/bansanblues/intro/

それも楽しみ。