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【感想】Apple TV+ドラマ『ディスクレーマー 夏の沈黙』第1-4話
今シーズンも相変わらず大傑作だったApple TV+のドラマ『窓際のスパイ』
シーズン4が終わった2日後にまた新たなドラマが始まった。
その名は『ディスクレーマー 夏の沈黙』
監督兼脚本は『ROMA/ローマ』がベネチア国際映画祭2018で金獅子賞を獲得し、アカデミー賞はじめ同年度の賞レースを席巻したアルフォンソ・キュアロン
Netflixが配信映画として初の作品賞を獲ると思ってたなぁ(実際は受賞ならず)
主演は『TAR/ター』も記憶に新しいケイト・ブランシェット
超の付く豪華タッグ
さらに映画ではなく配信ドラマなのに東京国際映画祭での上映も決定
ベネチア国際映画祭2024でのワールドプレミア上映時(配信ドラマなのに世界初お披露目の場は世界三大映画祭!)にアルフォンソ・キュアロンはこう語っている。
第81回ヴェネチア国際映画祭のパネルに登壇した62歳のキュアロンが、「『ディスクレーマー』の演出は、映画とは異なるアプローチが必要でしたか?」との質問に回答した。「このような映像的なアプローチは、(一般的に)フィルムとして知られています。TV作品の演出の仕方は分かりません。おそらく人生のこの段階では、TVの演出の仕方を学ぶには遅すぎるでしょうね。私たちは全てをフィルムとしてアプローチして、何か違うことをしているという会話は一度もありませんでした」と振り返った。
テレビドラマではなく全7章で構成される映画として撮ったと。
その意気込みが現れているのがカメラマンの人選。
本作の撮影監督は2人いるのだが、まず1人目はアカデミー賞撮影賞3連覇の大偉業を達成したエマニュエル・ルベツキ。
ちなみに『ゼロ・グラビティ』でもアルフォンソ・キュアロンと組んでいます。
2人目はティム・バートンやコーエン兄弟との仕事で知られるブリュノ・デルボネル。
ウェス・アンダーソンの次回作への参加も決まっています。
あまり撮影監督の腕を発揮する場面が無さそうな気もするけどw
この2人がカメラを司るわけで映像が良くないわけがない。
圧巻も圧巻の撮影が炸裂している。
第1話はイタリアの美しい風景で幕開け。
やはりルベツキはあれも自然光で撮ったのだろうか?
そこから現在パートになるとアルフォンソ・キュアロン印(もしくはルベツキ印)というべき屋内を滑らかに移動するカメラワークを伴った長回し撮影で魅せる。
もう本当にずっとため息が出る美しさ。
画面が完璧にコントロールされている。
ところが第2話のとあるシーンで手持ちカメラのブレを最大限に活かしたショットが。
そこを皮切りに今度はドキュメンタリー風の撮影が急激に増えてくる。
あのズームを挟む撮り方はHBOドラマ『メディア王/サクセッション』を彷彿。
ちなみにズームといえばホン・サンスが第一人者だけど、あそこまで極めると作り物でドキュメンタリー感は薄まるかなと。
第3・4話でも現在パート、特にロバート(サシャ・バロン・コーエン)のシーンはこのドキュメンタリー風の撮影が多用されている。
第3話では映画祭で本当に上映するのか疑わしくなるほど官能的なベッドシーンが。
まぁR18指定なんですけどね。
あのシーンは家の自室で観てても何か気まずかったw
第4話は『ROMA/ローマ』の終盤にもあったような荒波の海のシーンが登場。
本当に危険な撮影に見えるんだけど、あれは一体どうやって撮ったんだろう?
てかそもそもアルフォンソ・キュアロンは荒波の海に何か執着でもあるのかw
撮影の話はそろそろ切り上げてストーリーテリングの話題へ。
第1話の序盤は語り口がなかなか独特。
ケイト・ブランシェット主演と聞いていたのに全然関係なさそうなエピソードが始まる。
知らない男女がイタリア(それこそローマ)を旅行している。
何やら3並列で話が進行しているらしい。
それが1本に収束した辺りから(第1話の途中で全貌は見えてくる)俄然面白くなる。
第3話ではR18指定も納得のAVさながら官能的シーンなんかも挟みながら(やっぱり映画館で見るには気まずいと思うよあれはw)第4話で過去に何があったのかが明らかに。
ただ、これはあくまで小説の著者の想像上の描写のはずなのがミソ。
つまり一種の入れ子構造。
ジョナサン(ルイス・パートリッジ)の訃報を聞いて初めて両親はイタリアに飛んだはずなので、あの夜や事故を実際に目撃したわけではない。
写真は本当に存在してるから、そこに着想を得たフィクションというべきか。
でも物語の力は強いから劇中の人物たち(視聴者・観客も?)がそれに振り回されているのが面白いし恐ろしい。
モノローグは小説の中の文章ではなく劇中の人物の本当の心の声のはず。
でもそれにしてはキャサリン(ケイト・ブランシェット)のモノローグは起きてる事態に対して異様に客観的かつ冷静なのが不可解ではあるんだよな。
この先どうなっていくのか。
極上の撮影を堪能するだけでも惚れ惚れするミステリーかつメロドラマ。
残り3話で終わってしまうのが惜しい。
2024年を締め括る作品の1つとして必見です。