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【論文メモ8】目標を立てることの意味合いは?~目標達成理論について~
新年になって、目標をしっかりと立てたいが、バタバタしてて、しっかりと立てないまま、1週間が経ってしまった。目標たてるとやる気になったり良い面はいろいろと理解しているが、どんなメカニズムなのかを知りたくて目標設定理論を唱えた研究者らの手による、比較的読みやすいこの論文を読んでみた。
取り上げる論文
タイトル:New Directions in Goal-Setting Theory
(目標設定理論における新たな方向性)
著者:Edwin A. Locke, Gary P. Latham
ジャーナル :Current Directions in Psychological Science, 2006
概要
目標設定理論は、具体的で困難な目標の有効性、目標と感情の関係、目標効果の媒介因子および調整因子、目標と自己効力感の関係、人々やタスク、国、時間、実験デザイン、目標源(自己設定、共同設定、割り当て)、従属変数にわたる目標効果の一般性について要約されている。学習目標や目標フレーミングなど、最近の研究が紹介され、今後の研究への示唆が与えられている。
関連する理論・概念
自己効力感(self-efficacy): Bandura (1997) による理論。目標に影響を与える重要な因子として、課題特異的な自信を強調。
目標フレーミング: ゲインとロス、挑戦と脅威の観点から目標を捉える心理学的概念。
学習目標とパフォーマンス目標: 新しい知識の獲得を目指す学習目標と、特定の成果を目指すパフォーマンス目標があり、それぞれ異なる影響を与える。
無意識の目標設定(subconscious priming): 意識的に認識されていない目標でも行動に影響を与えることが可能。
変数
(a) 説明変数 (Independent Variables)
目標の具体性と難易度
フレーミング(挑戦 vs 脅威)
自己設定目標 vs 割り当て目標
(b) 調整変数 (Moderators)
フィードバック
目標へのコミットメント
タスクの複雑性
状況的制約(例: リソース不足、役割の過負荷)
(c) 媒介変数 (Mediators)
努力と持続性
タスク知識とスキル
注意の方向性
(d) 成果変数 (Dependent Variables)
タスクパフォーマンス
自己満足度
感情的幸福感
個人および集団レベルの成果
これまでの研究成果のまとめ
目標設定理論の概要
具体的で難しい目標は、漠然とした目標や簡単な目標よりも高いタスク遂行能力を引き出す。
理論は25年間にわたり約400の研究を基に産業・組織心理学の分野で発展した。
目標とパフォーマンスの関係
目標の難易度とタスクパフォーマンスには正の直線関係がある。
目標設定は現在の状態と未来の目標との間の不一致を生むプロセスである。
目標が動機づけに与える影響
高い目標は達成感を得るために多くの努力を要し、これが動機づけを促進する。
目標設定理論の有効性
個人、グループ、組織レベルで効果が確認されている。
効果は時間スパンや実験デザインを問わず、多様な状況で実証されている。
目標設定理論を前進させた研究の8カテゴリー
著者らは、目標設定理論を前進させた研究のカテゴリーとして以下の8つを挙げている。
1.目標選択 (Goal Choice)
自己効力感、過去のパフォーマンス、社会的影響が目標設定に影響を与える。目標が過去のパフォーマンスより高いと、不一致を生み出し、目標修正が行われる。
2.学習目標 (Learning Goals)
学習目標は、特に複雑な課題において、必要なタスク知識を獲得することでパフォーマンスを向上させる。パフォーマンス目標よりも有益な場合がある。
3.目標フレーミング (Framing)
目標を挑戦とみなすか、脅威とみなすかがパフォーマンスに影響を与える。成功へのアプローチが失敗の回避よりも良い結果を生む。
4.感情 (Affect)
目標の進捗と重要性は幸福感の予測因子であり、職場での成功は個人的な失敗を補う場合がある
5.集団目標 (Group Goals)
集団での目標設定は情報共有を促進し、グループパフォーマンスを向上させる。個人目標と集団目標の整合性が重要
6.目標と特性 (Goals and Traits)
目標設定は個人の特性(学習志向、パフォーマンス志向)に影響される。学習目標志向はより良いパフォーマンスに結びつく
7.マクロレベルの目標 (Macro-Level Goals)
組織全体で共有された目標は協力的な行動を促進し、グループ間の否定的感情を軽減する
8.意識的目標と潜在的目標 (Conscious and Subconscious Goals)
無意識の目標(プライミング)も行動に影響を与えるが、意識的な目標ほど強い効果はない。両者は相互作用する場合がある。
今後の研究の方向性
そして最後に今後の研究の方向性を示して本論文を〆る。
1.学習目標とパフォーマンス目標の組み合わせ
学習目標とパフォーマンス目標をどのように組み合わせれば効果的か(例: 最初に学習目標、次にパフォーマンス目標)の検討。
2.目標フレーミングの種類
成功へのアプローチと失敗の回避といった異なる目標フレーミングの効果の詳細な研究。
3.目標と認知の関係
目標が認知プロセスに及ぼす影響についての研究(暗黙的な影響や認知心理学全般を含む)
4.目標階層 (Goal Hierarchies)
目標の階層構造に関する研究(短期目標と長期目標の関係など)。
5.マクロ目標研究 (Macro-Level Goal Studies)
組織の規模に応じた目標設定の効果を調べるマクロレベルでの研究。
6.意識的目標と潜在的目標の関係
意識的な目標と潜在的目標がどのように相互作用し、成果に影響を与えるかについてのさらなる探究。
感想
高い目標を立てることをどうとらえるか?
目標フレーミングについてが一番興味深い。また目標の進捗と重要性は、幸福感の予測因子というのも。
冬休み期間で本を10冊読むという目標を立てていたが、目標立てたおかげで多くの本を読むことができた。目標を立てることの効果、意味合いはしっかり考えていきたい。
まだ立てていない今年の目標については、今週末にじっくり考えてたてていきたい。