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登野城祭事日記:スーマカシ材料調達

「登野城祭事日記」は、石垣島・登野城村の祭事係に新米として参加させていただいている佐藤(月刊まーる二代目代目編集長)の、日記兼備忘録です。

今回のトピック

スーマカシ材料調達

場所

非公開

日時

2024年7月17日(水) 9:00~11:00ごろ

出席者

字副会長&婦人 / 祭事顧問 / 祭事係

持ち物(祭事係・佐藤)

飲み物・長靴・ビニール袋
(途中から、帽子とタオル)


今日はスーマカシの材料のうち、「インミズナ」と「イシャヌメー」を採りに行く。

「スーマカシ」とは
豊年祭前の世の首尾・朝願いにて捧げられる供物。
スー(和え物)マカシ(炊くこと)の意味。
具材は、インミズナ、イシャヌメー、ハンソー、長命草、モヤシ、パパイヤ、菜っ葉(小松菜など)、イースの8種類。味付けは主に、ニンニク、砂糖、味噌。

佐藤の聞き覚え

「世の首尾」とは
感謝祭である。午後九時頃から天川嶽では北方ウムトゥテラス、東方ティダンガナスにも祈願祭事を行う。十一時頃から三味線音楽を奉納、翌第二日目は朝願い、午後再び昨夜と同じ祈願を行う。

『登野城村の歴史と民俗』牧野清 より

インミズナ

インミズナ(和名:ミルスベリヒユ)は、汽水域の水際に群生していた。
先っぽの方をつまんで捻ると、ジューシーな感じの茎が心地よい感触で、ポキっと折れる

インミズナ

大先輩に「インミズナ」の由来を聞いてみたところ、「"イン"には"海"の意味もあるから、"海の水の葉っぱ"みたいな意味かもしれんなぁ」と仰っていた。
大先輩のマネをして葉っぱを齧ってみたところ、かなり濃い塩の味がして、"海の水の葉っぱ"にも納得だった。
味と食感がいいのでおつまみにも良いみたいだが、食べすぎると塩っけが多くて大変なことになるらしい。ので、少し茹でたりしてから食べることをオススメしていただいた。

大体1時間弱、みんなでひたすらインミズナを摘んでまわった。最終的にスーマカシで使うのは葉っぱのところだけらしく、先っぽを摘んでいくと収穫が要領よく進む。(僕ははじめ、下の方の茎もごっそり採っていたので、あまり要領のよくない仕事をしていた…!)

この日は天気が良すぎるくらい良く、字副会長さんが、帽子無しで作業している僕を見かねて帽子とタオルを貸してくださった。
祭事係の活動の度に、大先輩方に何かを貸してもらったり、恵んでもらったりしているような気がする。この備忘録を活かしつつ、少しずつご迷惑を少なくしていきたい。

いつも、ありがとうございます。

イシャヌメー

場所を移して、次はイシャヌメー(和名:イボクサ)の調達に向かう。
イシャヌメーが生えているのは、田んぼの脇。
「ツユクサとよく見間違うから」と、はじめに特徴を教えていただいた。
僕の目では正直、形の違いがよくわからないので、特徴的な色をしてくれていて本当によかった。ツユクサは全体的に緑色。イシャヌメーは強く赤みがかった茎の色をしている。

「イシャヌメー」の由来は「医者の前」。
つまり、医者にかかる前に食べる草、とのことで、面白い。
(作業が終わる頃に、一本そのまま齧ってみようと思っていたが、忘れて帰ってきてしまった。)

イシャヌメーは根本から長く伸びた葉と、先に小さめの葉をつけた茎とが同じ株から出ており、植物に詳しい先輩方はイシャヌメーを摘みながら「珍しいなあ」「なんでだろうなあ」と、話し合っておられた。
そんな風にいろんなものを不思議がったり面白がったりできる目を、先輩方に色々なことを教わりながら、自分も養っていきたいな、と強く思った。


イシャヌメー摘みが終わったころ、近くの山からカンムリワシが悠々と飛来した。今までは山の中か電線に止まっているところぐらいしか遭遇したことがなかったので、強い日差しをバックに青空をゆったりと羽ばたくカンムリワシのシルエットが、目と心に焼きついた。

カンムリワシは自分たちの頭上を飛び越えて、向こうの田んぼに着地した。
「トラクターが動いてる後ろに、エサでも見つけたかな。」と大先輩。
「この辺りを縄張りにしてるのが、2匹いるよ」と、また別の大先輩。

なんだか豊かだなあ、と、豪華な朝活を終えた気分で、帰途についた。


▼登野城祭事日記、記事集です!


この記事を書いた人

佐藤仁
登野城村(超新米)祭事係。
大阪からの移住者
『月刊まーる』2代目編集長。
本業は、グラフィックやサービスのデザインなど。
自分の事務所に併設の私設図書館「みちくさ文庫」運営中。



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