柔らかな人
無機質な部屋に機械音がリズムを刻み、
握りしめるマシュマロのようにふわふわした手は
力なく、温もりだけ帯びている。
体を起こし、話しかけると
1呼吸ずつ、ゆっくりと答え
子供の頃から大好きで堪らない
柔らかい笑顔で私を見つめる。
よく似た目によく似た口元。
あぁ、私はいつでも鏡を見れば、
あなたに会えるんだ。
邪魔になるからと
猫の毛のようなふわふわの髪を梳かし
2つに編み込む。
「女学生みたいね」
笑いかけると可愛く「うふふ」と笑う。
こんなにも柔らかい人は他に居ない。
お母さん。
あなたはどうしてそんなにも柔らかいのだろう。
ふかふかの布団で眠る時のような
洗いたてのタオルで顔を拭くような
わたあめを頬張るような
猫のお腹に顔を埋めるような
とても心地の良い声と笑顔と匂いがする。
あなたが居るだけでいいんだよ。
話せなくても
動けなくても
やっぱり、いてくれるだけで
私は幸せなんだよ。