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「雨の三渓園」

蓮の花が最後だから
夏の終わりに三渓園へ
朝から雨降り
然るべき時にさそわれている

雨は人をよせつけないから
静かでいい
見えてくるのは珊瑚樹
赤い実としずくをたくさんぶら下げてる

たくさんの蓮の葉と
わずかな蓮の花が
日の昇る方を仰ぎ見て
雨を浴びていた

もうひとつ大好きなところ
移築茶室のそばにつくられた待合
ここから見える風景は
時を忘れさせる

茶人を待たせるこの場所は
茶室と便所のあいだを
飛び石でつながれている
遊びのようなところ

待合の屋根から落ちる雨つぶは
飛び石のわきにできた水たまりに
ぽちゃりと小さくはねる
波紋をひろげながら

まわりにあるものは
自然と茶をたのしむに足りるものと心馳せるもの
手洗い石に石灯籠に奈良の石棺
イヌビワに二股にわれたイチョウの大木

許されるならずっといたい
だけど人が来るたび時が動きだす
残念だけど長居はできない
濡れながら後ろ髪ひかれる雨の三渓園

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