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「徐渭(じょい)という人」

生後すぐ父を失い 
十四で育ての親を失くす
時の武将、胡宗憲に認められるが
その失脚で生活は困窮
墓誌を自ら書き
錐で耳を突き自殺未遂
発狂し、四五歳で妻を殺す
出獄後、書画を生業として遊歴
のち郷里に帰る
その才能は書画だけでなく詩、詞、戯曲などに及ぶ
中国明の時代の文人

徐渭という人
普通じゃない
見えたのは時代錯誤するほどの
自由

全てを失っても
自由は犠牲にはしなかった
そんな思いが
筆づかいから

天才
確かにそうかもしれない
しかしどれくらい筆にふれていたのだろう?
想像をこえるのだろう

書も画も
やわらかくあそんでいて
中国語でいえば放鬆(ファンソン)
自然体のすがた

見えるもの
感じるもの
愛でながら
筆をゆらす

ほろ酔いで描いたという
花卉雑画(かきざつが)
左手には酒
右手には筆だったのか

それくらいが丁度よい
馬馬虎虎などと言いながら
優しい笑みを浮かべ
花や野菜を描いたのかもしれない


泉屋博古館東京で開催 古美術逍遥∼東洋のまなざし展を見て

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