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怪獣ヤロウ!と笑いのカイブツ
毎週楽しみに聴いているラジオがある。お笑いラジオアプリGERAで好評放送中の「LAUGH &BIZ 笑える理不尽ビジネス論」だ。
DeNA出身で人材育成・組織開発コンサルティングの株式会社Momentor代表坂井風太氏と、我らがネットヒーロー・お笑いコンビ春とヒコーキのぐんぴぃがMCのお笑いビジネスラジオ。ビジネスシーンの理不尽をテーマに、面白おかしく組織論や哲学の話が飛び交うところが好きだ。
2月17日配信の#9で、ぐんぴぃ主演の映画『怪獣ヤロウ!』の話が出た。中でも大きく取り上げられたのは「怒り」についての考察だった。
『怪獣ヤロウ!』のあらすじや僕の感想については先日公開した記事を参考にして欲しい。
この映画のテーマはなんですかね?と坂井氏が問うと、ぐんぴぃは「怒りですかね」と答えた。けれど、映画の中には世の中に対する怒りを露わにするシーンはほぼない。「自分自身への怒りですよね」と坂井氏が続ける。
中学生時代に自主制作した怪獣映画をみんなに笑われ、大人になった今は冴えない公務員として命令されるままに働いているだけだ。
「あんた、いつからそうなったん?」と言われるように、牙を折られ、社会に屈服した自分自身に対する怒り。それが根底に流れるテーマなのではないかと坂井氏は考察していた。
「正しい怒りを持つんです。怒りが正しい方を向くと、使命感になる。映画の中のぐんぴぃさんは使命感を持って怪獣映画を作ったでしょ」
その言葉に、僕ははっとさせられた。
僕にも、映画の主人公、山田と同じ怒りがある。
社会で徹底的に牙と息巻く心を折られ、屈服したままサラリーマンを演じている。「俺の人生、これでええんやっけ…」と常に思っている。
そんな現状を打破するのは怒りなんだ、と気づいた。
話は少し飛んで、”伝説のハガキ職人”ツチヤタカユキの私小説『笑いのカイブツ』の話題に移った。愚直という言葉では表現できないほど愚かで血みどろな姿勢で笑いに立ち向かったカイブツの物語だ。
坂井氏とぐんぴぃの両方が”食らった”と言うのを聞いて、さっそく僕も読んだ。
ずっと怒りだ。
それが、読み終えた感想だった。
恵まれない環境への怒り。自分を認めない世間への怒り。表面だけ取り繕って薄っぺらな人間への怒り。
そんな怒りの言葉が215ページにわたって綴られていた。
ちょっとマジでしんどいな、と思うけど読み進める手を止めることができなかった。
彼を突き動かすのは怒りだった。
何度も地に落ち這いつくばりながらも毎日2000個のボケを考え、ラジオ投稿を続け、芸人付きの構成作家になり、そしてまた地に落ちる。
「狂ってる?それ、誉め言葉ね。」と言わんばかりの彼に、いつからか強烈な憧れを抱いた。
自分で言うのもなんだけど、人から優しいとか、包容力があるとか、ベイマックスだとか言われることが多い。
自分でも結構優しい方だと思う。人を傷つけるのは嫌いだし、困ってたら助けたりもするし。
けどそれは心底優しいのではなく、世間から排除されないための処世術なのだと解釈している。結局嫌われるのが怖くて、小さくまとまってるのだ。
人の道を外してでも、むしろ踏み外してこそ大きなことを為せるのだと思う。
自分も怪獣になりたい。だから怒っていこうぜ。
お前の怪獣で、全部ぶっ壊すんや。