臘梅

本の虫、写真の虫です。レトロも好きです。周りの人にあんまり理解されない価値観を吐いていこうと思ってます。

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    テキトーな小説

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    ジェンダーのあれこれ。興味をもっていただけたら嬉しいです

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    日々思うこと、なかなか人に話せないこと。

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最近の記事

湖畔にて

湖畔にさびれた蕎麦屋があった。 その日は寒くて、店内は少し石油の匂いがした。床は、ヒールのついたブーツで歩くのが場違いに感じられるほど大きな音で軋んだ。 客は私ひとりだった。 昼食を食べそびれた3時頃、暖色の日光が当たる窓際の席できのこそばを食べた。 『七味をご利用の方は店員に申し上げ下さい』 貼り紙に笑みがこぼれたが、指示通り七味を使用したいと申し上げた。 使用済み食器を洗う水の音が聞こえた。 湖の白鳥ボートから歓声が上がった。

    • ねこ。

      私は猫を飼っている。 猫は私が元気なときは現れないが、具合が悪いときにはご機嫌で近寄ってくる。そして追い討ちをかけるように私を傷つけてくる。心や腕に、鋭い爪で傷をつける。 猫といっても、私を含め誰にも姿は見えない。私にだけ、声は聞こえる。 「死んじゃえば?」 「飛び降りちゃえば?」 「ロープ買いに行く?」 猫は私を挑発して死へ追いやろうとする。 時には私が抵抗できないほど強い力で追いやろうとする。 私は必死に無視する。必死に否定する。 だけど、どうしても、私から猫を

      • ドライフラワー (II)

        彼は優しかった。 『ひとりになりたいんだ』 でも私は信じなかった。わかっていたから。 彼はそのあと、 すごく躊躇いながら、自分を責めながら、 『...冷めちゃったんだ』 と言った。 やっぱり。 私が可愛くないから?背が小さいから? どうしたら引き止められるんだろう。今までは筋道立てた私の主張を彼は受け入れてくれたのに、「冷めた」という気持ちはなんて残酷なのだろう。その感情の壁を論理は越えられない。 「別れたくない」と泣く自分は今までで1番素直で滑稽だった。もっと前から素直にな

        • ドライフラワー (Ⅰ)

          『土曜日に会えるのを楽しみにしているよ』 この連絡を最後に大好きなあの人は遠くへ行ってしまった。突然の、永遠の、別れだった。 どうして私をおいていったの。 どうして1人にさせたの。 土曜日に会えるって約束したじゃない。 昔から私は、誰かの愛情に触れると、もう二度とその優しさに触れられなくなる気がして、怖くて怖くて、数えきれないくらいの夜を、息を殺して泣きながら過ごした。でもあの人が隣で寝ている夜は、いつも手を握ってくれて、眠れるように頭を撫でてくれて。あの人の愛情だけは、消え

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